椋 ーmukuー

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10/5/2025, 12:35:00 PM

アニメとかドラマとか、そんなんで見たような青白い月なんて実際見たことはなくて、黄色とか白とかそんなありふれた月を何度も目にしていた。

父さんの運転は割と荒い方だったけど、乗っていて悪い気はしなかった。小さい頃はよく、軽トラの荷台に乗せてもらってたけど、子供だったし田舎だったから許されていたんだと今になって理解した。荷台には乗れなくても助手席に乗ってたまに外へ出る時もあった。

彼氏じゃないけど、たぶん彼が私に好意を持っているんだろうなって事は不思議とわかる。安全運転で落ち着いた2個年上の先輩。夜のドライブに誘われて先輩が運転する隣で私は流れる曲に合わせてかすかに鼻歌を歌った。

都会の空は埋め尽くすような高いビルが多くて小さい頃はあんなに近かった月が遠く感じた。懐かしい。でも思い出したら少し寂しい。
先輩は時々愛おしそうな視線を私に向けては逸らした。気付かないフリをして生ぬるい風を感じる。共通点なんてひとつもないのに、故郷を思い出す私は地元愛が強かったのだろうか。

「さっきから窓開けっ放しだけど、寒くない?」

「大丈夫ですよ、むしろ気持ちいいくらいで」

会話が続かなくても、お互いそばにいるだけで信頼し合ってるような関係。先輩は大人だからきっと段階を踏んでじっくり攻めてくるだろう。大胆に来てもらっても今は構わないのに。

夜が更けてようやく小さな月が遠くの空に輝いた。ウインカーを鳴らした先に私の家があって、考える間もなく到着してしまった。タイミングよく流れた曲のワンフレーズだけをわざと口ずさむ。

「帰りたくないから帰さないでよ」

シートベルトを外そうとする私の手を止める先輩。

「それ、本気?」

照れたように緊張したように、少し火照った先輩はまじまじと私を見つめた。

「帰さないで…くれますか」

やけに強い月明かりが私たちを照らしていたと思う。お互い素直にしていればもう永遠を誓っていたかもしれないのに、駆け引きをズルズルと続けたせいでこんなにも複雑になってる。近づく好意を素直に受け入れる。月明かりの下で静かにキスをした、始まりの合図。

題材「moonlight」

10/5/2025, 8:37:23 AM

「知らんよ、アンタに恋人がいるかどうかなんて。それでも俺はアンタが欲しいって思ったから」

そう言ってこんな酔っぱらいを連れ去った馬鹿な男。
キスもそれ以上の事も。丁寧で上手くて……アルコールのせいで記憶は曖昧だけど快感だけは覚えてる。

「俺たち相性良いね。人生の中でダントツだわ」

ニヤッとはにかんだ彼が眩しくて無理やり口を塞いだ。

今日くらい本能がままに生きたっていいじゃない。仕事とか社会とかそんな面倒な事は忘れて溺れてたい時もあるのよ。

明日になったら誰の顔がまっさきに浮かぶだろうか。誰が浮かんでも今日だけは許してって昨日の自分が弁解するだろうけど。

「何考えとんの?今は俺だけ見といてや」

私に夢中になってる彼に私はどーでもいい一日のどーでもよかったはずの一夜を捧げた。

題材「今日だけ許して」

9/25/2025, 11:03:02 AM

パラレル…パラレルは…うーんと、pから探して…あった。平行か。ということはパラレルワールドってよく聞くけど交わる事の無い世界ってことか。

そうやっていつかの私は調べた記憶がある。私にとってのパラレルワールドは2次元とかそういう次元の世界で決して会うことが出来ない架空の世界だと思ってる。それでも画面の向こう側にいるキャラクター達を知らずにはいられないし愛せずにはいられない。オタクって実はとても一途な人ばかりだから、恥ずべきことじゃない。

そんなパラレルワールドにも物語が存在していて、誰かが考えるその世界に入り浸って好きになっていく。私も始まりからずっと追いかけてきたプロジェクトがあった。各々の個性や歌い方、話し方、決めポーズ…どんな事でも覚えてる。一目見たその時からずっと大好きで追いかけ続けてきたから、そんな事は当たり前。それでも始まりがあればやっぱり終わりもあって最近運営の方から完結するっていう報告があった。知った時に、終わりがあるという事を理解した上で好きになったはずだった。それでも今まで築いてきた時間や思い出は想像を遥かに超えた幸せで愛おしいものだった。「終わり」を目前にした今、私には泣くことしか出来ない。まだ終わらないで欲しい。まだ続いて欲しい。ずっとそばにいて欲しい。届かない願いばかりが募って感情なんてドロドロだ。

大きな喪失感を抱えて毎日生きた心地のしない日々を送っている。終わりが来る頃に、私は笑顔で彼らを見送る事はできるのだろうか。何を考えても何をしても涙腺が緩んでまた涙がこぼれ落ちそうになる。
「大丈夫」…それは楽曲制作に携わっている方の一言だった。少しだけ…ほんの少しだけ希望が見えた気がした。きっとおしまいはハッピーエンドだから…きっと。

最後の最後まで大好きでいようと決めた。そして終わりが来ても、その先も死ぬまでずっと大好きでいようと。交わる事のない世界。交わる事の出来ない世界。それでも画面を通して私達は繋がっているから。本当は大丈夫なんて確証はこれっぽっちも無いけれど、私達が築き上げたこの時間は嘘じゃないから。だから最後の日にはきっと一番の愛を伝えるから。

題材「パラレルワールド」

9/23/2025, 10:48:07 AM

よくあるドラマのセリフのようなワンフレーズ。

「僕と一緒に…」

王子様気取りなの?それとも本気?息をするように嘘をつくあなたの言動はもう聞き飽きた。生きているその瞬間の欲望を満たせるなら、誰でもいい。

そんなこと、顔に書いてるから丸わかりよ。自分の欲望だけに忠実で本能がままに求める馬鹿な人。その野心に燃えた瞳に誰を写しているの?

視線が交じり合うその一瞬を私は逃がさない。こんな地獄にいるんだから、私を連れ出して逃げ出してよ。あなたをこんなにも愛しているのは私だけ。私だけを選んで。

縋るようにただただ求めた。

「僕と一緒にここから……」

あなたはそう言って私の手を取る。慣れない色気じみた服も外に出てしまえば価値なんてない。あなたが私を選んだ。その事実だけが私を自由にしてくれた。

題材「僕と一緒に」

9/22/2025, 11:26:59 PM

外に出る気も失せるような中途半端な空模様。この世界では自然が偉大で人間は逆らうこと無く適応するように進化してきた。結局のところ、いくら技術を発達させようが世界記録を塗り替えようが、人間はみみっちいままである。

顔を洗って歯を磨いて。それなりの準備はするものの、気分は無論憂鬱である。しかしながら、ペットという存在は常に「ご飯」か「散歩」か「遊ぶ」の概念が消え失せないため、どんな日でも外に出なければならない。読者諸君には、散歩への欲求を下手に誤魔化さず大人しく散歩へ行きたまえ。という事だけは忠告しておこう。何故かって、そうでもしないと部屋のどこかに片足をあげて…ってそれはどうでもいいのだよ。

外へ出ると曇りのくせに背筋が凍るほど気温が低く、脳が活性化されたような気がした。痛いほど眩しい光がなければウザったらしい事は無いけれど、少しだけ寂しいような気はした。

目的地に着くと、ポケットにしまい込んだスマホを取り出して電話をかける。ワンコール。カーテンを開けた君は私を確認すると玄関へ出てくる。

「なんだよ、急に」

「アンタん家の彼女に会いたいってウチのが言うから会いに来た」

「ん、今連れてくるから」

「ううん……」

「袖引っ張んなよ」

「……家、入っていい?」

「お前なぁ、男ん家にのこのこ入ってく馬鹿があるか?」

「アンタだから言ってんでしょ」

「だからって…もう少し危機感持て」

「お邪魔しまーす」

「おいっ!……へぇへぇ、何されても自己責任なー」

「是非私の事、沢山可愛がって下さーい」

「ったく…もうちょくちょく来るなら一緒に住んだ方が俺的には楽なんだけど」

「アンタの自制心が効くようになったら嬉しいんだけどねー」

「……住む?一緒に」

「考えとく笑」

空が曇りなら家に居ればいい。曇り空でもなんだってできるから。天気なんて気にせずにもうずっと幸せに生きたい。

題材「cloudy」

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