外に出る気も失せるような中途半端な空模様。この世界では自然が偉大で人間は逆らうこと無く適応するように進化してきた。結局のところ、いくら技術を発達させようが世界記録を塗り替えようが、人間はみみっちいままである。
顔を洗って歯を磨いて。それなりの準備はするものの、気分は無論憂鬱である。しかしながら、ペットという存在は常に「ご飯」か「散歩」か「遊ぶ」の概念が消え失せないため、どんな日でも外に出なければならない。読者諸君には、散歩への欲求を下手に誤魔化さず大人しく散歩へ行きたまえ。という事だけは忠告しておこう。何故かって、そうでもしないと部屋のどこかに片足をあげて…ってそれはどうでもいいのだよ。
外へ出ると曇りのくせに背筋が凍るほど気温が低く、脳が活性化されたような気がした。痛いほど眩しい光がなければウザったらしい事は無いけれど、少しだけ寂しいような気はした。
目的地に着くと、ポケットにしまい込んだスマホを取り出して電話をかける。ワンコール。カーテンを開けた君は私を確認すると玄関へ出てくる。
「なんだよ、急に」
「アンタん家の彼女に会いたいってウチのが言うから会いに来た」
「ん、今連れてくるから」
「ううん……」
「袖引っ張んなよ」
「……家、入っていい?」
「お前なぁ、男ん家にのこのこ入ってく馬鹿があるか?」
「アンタだから言ってんでしょ」
「だからって…もう少し危機感持て」
「お邪魔しまーす」
「おいっ!……へぇへぇ、何されても自己責任なー」
「是非私の事、沢山可愛がって下さーい」
「ったく…もうちょくちょく来るなら一緒に住んだ方が俺的には楽なんだけど」
「アンタの自制心が効くようになったら嬉しいんだけどねー」
「……住む?一緒に」
「考えとく笑」
空が曇りなら家に居ればいい。曇り空でもなんだってできるから。天気なんて気にせずにもうずっと幸せに生きたい。
題材「cloudy」
9/22/2025, 11:26:59 PM