如月灯

Open App
9/3/2024, 7:40:13 PM

「里峰、アンタ今日寝不足でしょう」
来て早々、友人が言った。
「よく分かったね。本を読んでいたら夢中になってしまってね」
そう返したがそれは嘘だった。本当は眠るのが怖かったのだ。眠ってしまえばもう二度と目が覚めないような気がして。
「…本当は?」「やっぱり智章は鋭いね。でも本当の事は言えないな。秘密さ」
君はどんなに些細な僕の変化も見逃さないね。不安なんだろう?僕もそうさ。
だから何としても隠し通す。君に余計な心配はさせたくないからね。


【些細なことでも】📷

5/18/2024, 4:35:25 AM

夜中に目が覚めた。
まだ慣れない天井から目を離し、ゴロンと寝返りをうつ。そこには静かに寝息をたて、穏やかな顔で眠る友人の姿があった。
「いつでも来て良いからね。ベッドもボクと結弦の分、二つ用意したんだ」
新しく広い家に引っ越した叶芽はそういって私に家の合鍵を渡した。
ケチをつける訳ではないが叶芽が以前住んでいた家は少々狭く二人で寝るだけのスペースはなかった。私の家なら布団を出せば一緒に寝られるが部屋に物が多すぎて断念した。
そのため同じ空間で共に寝るようになったのは、友人がこの家に引っ越してからである。
「結弦?」眠りの浅い彼はどうやら私の寝返りをうつ音で目が覚めてしまったらしい。
「どうか、したの?」
「ううん、なんにもないよ」
そう言って首を横に振る。
そして再び目を閉じた友人に聞こえないように小声で呟いた。
「ただ、幸せだと思っただけ」


【真夜中】🎼

3/7/2024, 10:51:00 AM

空を見上げると数多の星と三日月が浮かんでいた。「星月夜の砂漠」という名の通り、此処はあたしが知る限り月と星が最も良く見える。
此処はアイツと出会った場所だ。
散歩をしていたところで、この場所に来て間もなく迷子になっていたアイツを見つけた場所。
小さなティーセットを広げ、月を眺めながらお茶を飲んだ場所。
あの日と同じように月を見上げ、お茶を口に運ぶ。あの時と違い今は一人だ。けど独りじゃない。


【月夜】📚

2/23/2024, 7:10:25 PM

最初はキミを利用するつもりだった。眩いキミの光を喰らえば、この苦しみから解放されると思ってキミに近づいた。
孤独だったキミは単純でボクをすぐに信用した。
けれど、共に居るうちに情が湧いてきてしまい、いつしかキミのことを大切な存在だと思うようになっていた。
__ボクはキミのことを好きになってしまった。
嗚呼、なんて愚かで滑稽なことだろう!!
それでもボクの身体はキミの光を求め続けるのだ!
これはキミを利用しようとしたボクへの罰だ。それでもこの罪は償いきれないだろう。
ならいっそ、この身が闇に染まってもキミを愛し続け、身体を焦がし続けよう。


【Love you】🏵️

1/7/2024, 3:39:13 PM

外を覗くと一面の銀世界が広がっていた。
雪自体は旅先で何度も見ていたが、この辺りの地域で雪が降っているのを見るのは初めてではないだろうか。
硬くなった体を多少勢いに任せながら起こす。上着を羽織り、帽子を被って外に出る。
まだ雪が降ってから誰も来ていないのだろう。足跡一つない地面を踏みながら歩き出す。
サク、サク、
と軽い音が足元から鳴り、少しずつ足を早める。
サク、サク サク サクサクサクサク、、ボフッ
調子に乗り過ぎてしまい転んで、雪の上に大の字になるように寝転がってしまう。
「フフッ、アハハハッ」
我ながら行動が子供じみていると思い、笑いが溢れる。
僕の笑い声は雪に吸い込まれて、ゆっくりと消えていった。


【雪】📷

Next