なかじ~

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6/3/2024, 11:38:33 AM

『好きになってごめんなさい。できるだけ早く忘れるようにするので、今だけは赦してください』
好きの文句は、どこまでも自己否定から。
今振り返って、これが私だ、と思う。自己否定と自己嫌悪にまみれていた私らしい、告白だ。
全てを諦めた告白の陰で、きっと何かを期待した。もしかしたら、あわよくば、そんな愚かな恋心を自覚して自嘲した。
迷い込んだ。走った。迷った。転んだ。迷った。泣いた。抜け出した。
__恋に、堕ちた。
自由落下に気づく前に真綿のように優しく振られて、地面に墜ちてはしとどに泣いた。
恋慕へと姿を変えた友愛は、転生してまた一つ、洗練されてどこか穢れた友愛に育った。
失恋して尚、私は恋心を失えていない。
いつか、美しく葬ることができたなら。
それだけで、今の私は救われるでしょう。

6/1/2024, 3:14:15 PM

朝、寝ぼけ眼は雨音で開いた。
世界がまだモノクロ世界に沈んで見える。いつもより幾分色づきの悪い朝は、しっとりと湿って街を揺蕩っていた。
この後の自転車登校を思ってげんなりしつつ、息を吸い込むと身体中に満ち溢れる雨の香りに心を少し踊らせる。
梅雨前線が日本に影を落とし、寝転んだ日だった。
初夏はいつも、梅雨をお土産にやって来る。
杪夏を目指して雫の梅は枝を伸ばす。
梅の花が散るように涙を溢す梅は、私たちが思う以上に泣き虫だから。
せめて、笑って迎えてあげればいいと思う。

5/31/2024, 10:22:02 AM

「なかじん!」
『なかじん』こと私。本当は『なかじ~』というあだ名で通しているのだが、この新小二の少女はどういうことか、私をなかじんと呼ぶ。そしてとても無垢で楽しげいっぱいの笑顔を浮かべるのだ。

その子とは春のキャンプで出会った。
高校生の私に懐いてきてくれた少女だった。
お友達の手を握り、元気に跳び跳ねてはすっ転げて、いっぱいの笑みを振り撒く。
媚びない愛想をばら蒔いてきゃいきゃいと声を上げる。
かと思えばお母さんに会いたいと言って泣いた。

高校一年となった私にとって、小二になったばかりのその娘は可愛らしくも眩しかった。
どこまでも澄んだ瞳に世界が映る。
上がった口角は誰にも媚びへつらうことの無く、その満面の笑みは純白のパールが如く輝いて見えた。

あの娘には世界の素敵な面をたくさん見ていてほしい。
その無垢な瞳が濁らぬように。

5/29/2024, 10:56:16 AM

彼女の横顔を盗み見る。
彼女は友人にふんわりとした笑顔を向ける。私にも微笑む。『友人として』の微笑みを。
私は一度、それを壊してしまった。
自らの手で。

『好きです』
そう伝えたのは、メッセージ上で。
言葉にすると照れくさくも嘘くさくなってしまうから。
でも、それは決して『付き合って』といった類いのものではない。寧ろ『好きになってごめん』といった、ただただ罪悪感と内心の吐露に過ぎなかった。
彼女がどんな顔をして返信してくれたのか、最早想像したくもない。

彼女は、とても優しく私を振った。
優しく、優しく、これからの友人関係を壊さないような断り方を。
私は彼女の優しさに甘えた。
彼女の友人として、隣にいることを許してもらえた。彼女は、彼女自身が思う以上にあまりにも優しかった。

甘えてしまったこと、困らせたこと、友人関係を壊そうとしたこと、無理させてしまったこと。
ただ、彼女に「ごめんね」と一言だけ伝えたい。
彼女の隣で笑いながら、吐き出されることのない謝罪を今日も心に積み上げる。

5/28/2024, 2:57:38 PM

揺れる裾を塚みたくて、でもそれはあまりにも気恥ずかしくて。
甘い、酸っぱい、ぴりりと痛い、小さな小さな恋心。彼女の裾が揺れていた。
出会ったときは長袖だった。夏になれば半袖にはなったけど、冷房がききすぎてすぐ彼女はカーディガンを羽織った。
だから私には、彼女の半袖姿という記憶があまりない。
長袖の裾を摘まむので精一杯だった私には、半袖の彼女に飛び付く勇気もない。
私は彼女に恋をしていた。
リボンを外したシンプルな制服姿が、他の誰よりも似合っていた。
長袖の記憶が焼き付いている。
いつか彼女が半袖で、私の前で笑ってくれればいいのに。それくらい、長く多く彼女の隣で、友人としていれればいいのに。
それ以上の関係は、もう二度と望まないから。
そんな願いをこっそり将来に託し、私は今日も長袖の制服に腕を通す。

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