作業台の上にあった紙を捲り
「まずは報告の嘘な、アンタな付き合ってる人は居りませーん俺だけよ~って言っとったけど、調べるとガッツリ二股やし、と思っとると、それどころか三股やん、馬鹿にしとるん?」
少しシワの入った紙を、芋虫みたいに転がった奴に投げつける。
「次は連絡の嘘、その日バイトだわって言った日にアンタさん、他の奴と遊んどったやろ?そんでもって、相談の嘘は、ストーカー被害にあってる気がするから助けてだぁ…アホなんか?頭に虫でも飼っとるんか?実際は飽きた男の処理に困っとっただけちゃうん?」
呆然として此方を見る奴は、わなわなと唇を歪ませた後に一言、知らない…です。と言った。
「…は?」
頭にカッと血が上ったなと思った時には、緑の床に美しい紅い花が咲いてしまっていた。
美しい(1/17)
「ホンマにわからんのん?」
彼の顔がおちゃらけた泣き真似から真顔になる。作業台からストンと降りて此方に近づいてきて
「痛っ」
「お前、俺に嘘ついたやろ?」
髪を掴まれて瞳を覗き込まれる。彼の瞳は怒りを含んでいて、それと同じく悲しみに染まっていた。いったいどれがバレたのだろうか。
パッと髪を放されて痛みがなくなる。
「しゃあない教えたぁるわ、この業界の極小のこの世界は、ちゃーんとホウレンソウせなあかんからな、優しいなぁ」
「ほうれんそう…?」
「報連相(ホウレンソウ)、報告、連絡、相談、生きてく上での基本中の基本やろ?けど、お前みたいに嘘の報連相してくるやからもよーさん居るから…まぁ、さておき」
彼は仕切り直しと両手を叩くと、また作業台の方に歩いていく
この世界は(1/16)
恐怖で意識を手放してから目が覚めると、目隠しはなくなっていたが芋虫の様に縛られていた。いま目に写るのは、最近まで使われていたのか艶のある緑の床と、やたら長いベルトコンベアの作業台だ。
カシャンと背後から何かを落とす音がして、這って振り向くと、まさかの見知った顔が作業台に座っていた。
「…おはようさん、目覚めたか?よぉ、その状態でぐーすかと休憩できましたなぁ」
ニッコニコの笑顔で嫌みたっぷりの物言いに苛立ちはあれど、どうして彼が?という疑問が勝る。
「ん?なんでーって顔やけど、それはアンタが一番知っとるんちゃう?」
足を組み直しながら彼は、悲しいわぁ~と泣き真似をする。
どうして(1/15)
誰かに引っ張られて、私のスニーカーが階段から転げ落ちていくの見た。
突然、目隠しをされて車に入れられて、叫ぶ暇もなく何処かに運ばれている。恐怖で強ばる腕を擦りながら、恐る恐るあなた誰ですかと質問をする。数秒間の沈黙後、ため息をつかれ、数回カチカチとボールペンを鳴らすような音がして、それが割れる音がした。怖い、今聞いてはいけない質問だったらしい。そこからは無言、目隠しの布を濡らしながら、これから自分はどうなるのだろうかと恐怖する。
夢であって欲しい。でも、どうせなら幸せな夢を見てたいのに…
夢を見てたい(1/14)
机の上の紙をぐしゃりと潰しながら頭を押さえる。
困ったなぁ、ずっとこのまま知らんかったらアンタと一緒に居れるんかな、調べれば調べるほど、どんどんアンタにモヤがかかって白から黒になってく、ほんまに嫌やなぁ…変な笑い出てくるわ
息を深く吸って吐くと、喉に魚の小骨が刺さったみたいにじくじくして震えて、目からボタリと水が落ちた。
ずっとこのまま(1/13)