ひすい

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11/15/2024, 3:24:15 PM

宛もなく、ただ路地を漂っていた。目的地なんてない、足音だけが響く暗闇を、波に浚われるみたいに歩き続けていた。

街灯の灯りが目を差す。そこから視界に入ってきたのは、小さなダンボールだった。寒空の下、何も知らない無垢な子猫は、漆黒の双眸をこちらに向けていた。

『ひろってください』

思わず、手を差し伸べる。未熟ながらも温かい塊は、私の手をただ受け入れていた。少し目を細めて、されるがままになっている。

「君も、一緒か」

二度と再現できない、優しい手でそれを抱いた。

一人と一匹は、闇夜を往く。

8/17/2023, 10:03:59 AM

わかっているんだ。
私だって。
こんなこと続けてちゃいけないんだって。
逃げて、逃げて、逃げて、自分が嫌になって、それからも逃げ出して。
もう嫌なんだ。限界なんだ。
全部全部捨て去って、また一からやり直したい。
だけど、いつまでも捨てられないこの感情は。
今もずっとくすぶり続けている。

6/27/2023, 10:07:57 AM

私はずっと窮屈だった。

なまじ優秀なばかりに、数多の仕事や責任が押し付けられる。そのくせ失敗したら、期待外れみたいな目を向けられながら乾いた激励を送られる。

私はこんな日々を過ごしたくて此処にいるんじゃない。
でも……抜け出すには、臆病すぎた。

もうおしまいにしようか。

でもそんなある日、ふらっと現れた君は言ったんだ。

『僕と一緒に来ない?』

でも。私には勇気がない。自信だってない。それなのに――

『いいんだよ。さあ行こう?』

私の運命は、動き出す。

『ここではないどこかへ』

6/26/2023, 10:08:21 AM

またあの日のことを思い出す。

空いっぱいに咲く光の粒を見ていた君の瞳には、また違った粒があった。
僕だって似たようなもんだったろう。思いっきり笑って、泣いて、叫んで。

ずっとそばにいて欲しくて。

永遠を分かちあいたくて。

君もまた、この宝石の空を見上げているんだろうか。

またいつか、出逢えますように。

6/13/2023, 1:14:55 PM

いつもの通学路。淡々と消化されていく日々。
最近は楽しいことなんかないな、もうやめてしまいたい。そんな悲観は十代の特権だろうか。

この時期特有の連日降りしきる雨に鬱屈として、自然と目線が下がる。水溜りが私の退屈気な顔を写していた。酷い顔だ。

そんなことになんとなくいらついて、写っている自分を踏み抜く。飛沫が重力に抗う。

思いのほか長く舞ったそれらを追い、あるべき高さへと戻った目線の先。そこには、久しく見なかった紫色の花があった。

何故か惹きつけられて、自然と足を止める。そこだけ、代わり映えしない中でくっきりと色付いて見えた。

雨は止む気配はなく、一定の音を刻み続ける。

私の日々も、この先も一定なのだろうか。

目の前の花が、とても輝いて見えた。

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