エドミヤ

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11/11/2024, 4:57:07 PM

『飛べない翼』

プツ、プツ、プツ。羽をもぎり取る。
カタン、カタン、カタン。布を織る。

翼から生えていた羽を抜き、布の材料として使う。
布が織られていくごとに、翼から羽は無くなっていった。布が仕上がった頃には、翼はもう使い物にならなくなった。とっくに飛ぶことなんて出来なくなった。

仕上がった布は自賛できるほどの物になった。これで、飛べなくなった私はずっと貴方のお側にいることができる。

愛しい貴方へ、どうぞこの布をお使いください。
貴方が私だけの人になってくれずとも、私はずっと貴方のお側に居たいのです。

11/8/2024, 9:21:39 AM

『あなたとわたし』

妹が泣いていた。家に帰って部屋へ向かうと、扉越しに啜り泣く声が聞こえた。中では、妹が隅の方で膝を抱えるようにして座っていた。

妹は優しくて人のことをよく見ている。我慢強くて責任感もある。けれど、何でも自分1人で抱えこもうとする悪い癖がある。

私に気づいて妹の顔が上がった。そしてすぐに涙を拭き取って、何でもないような顔をしようとする。

私たちは生まれた時からずっと一緒に過ごしてきた。誰よりも近くであなたを見てきたし、誰よりもあなたの幸せを望んでいる自信がある。

私はお姉ちゃんだ。きっとあなたの力になってみせる。だから、もっとお姉ちゃんに頼って。

11/1/2024, 2:46:34 AM

『理想郷』

目を開けると自分の好きなものばかりだ。甘いお菓子に可愛いお人形、側には綺麗なドレスが吊り下げられている。たくさん悩んで作ったこの部屋は私の好きなものだけで作った。大変だったけど、どこを見ても私の理想。好きに囲まれた幸せな部屋だ。

瞼が重い。

「先輩、依頼された住所ってここですよね。めっちゃ異臭するですけど」
「残念ながらここで間違いない。先に室内の確認だ」
「うわ、中もめっちゃ汚れてますよ」
「食べ物は腐ってるし、部屋はゴミと虫だらけ。服とかもボロボロ、あ奥に誰かいません?」
「この部屋の家主だろう。写真で見た時よりだいぶ痩せたな。ほとんど骨と皮だ」
「えこれで生きてるんですか?人ってこんななれるんですね」
「新薬のせいだろうな。副作用で幻覚などの症状が出るらしい。ここまでとは聞いてなかったが」
「相変わらずヤバいですねウチ。俺もう1秒もこんなとこ居たくないですよ」
「同感だ、早くやることやって帰るぞ」

何か匂う。焦げ臭い。


10/25/2024, 8:05:14 AM

『行かないで』

視線の先で楽しそうに笑顔を浮かべるあいつがいる。
憎たらしい笑い声が脳に響く。思わず「うるさい」と怒鳴って、その笑顔を涙が滴る泣き顔にしてやりたい。
賑やかに動くその手足に力が入らなくなった姿を見てみたいと思う。
笑い声が大きくなる。頭が痛くなりそうだ。
はやく目の前から消えてくれ。
それが無理なら2度と会わないよう首を掻っ切ってくれ。

何がそんなに楽しいんだ。
なんでそんなに笑うんだ。
お前が手を離さないって言ったのに。

10/11/2024, 4:59:48 PM

『カーテン』

小学生の放課後は暇だ。宿題は簡単なものだし、厳しい部活動もない。やることは特になく、友人と遊ぶことが主な活動だ。今日は「家に行きたい」と友人が言うから、自宅に招待した。そして友人がやりたいと言う隠れんぼをすることになった。

ここまでが先ほどの出来事だ。ここで夢だと気づいた。本当の自分は既に社会人として働いていたことを思い出したのだ。かつての幼い自分の姿に違和感を感じ、違和感の正体に気がついた。
 
珍しい機会だと思い、せっかいのこの夢を楽しむことにした。友人が隠れてからしばらく数を数え、家のどこかにいる友人を探し始めた。

ある一室の扉を開けた時だ。カーテンが膨らんでいる様子に気がついた。まるでカーテンの裏に誰かが隠れているような光景だった。

案外早く見つかったなと思い、カーテンを開こうとした。すると、後ろからドタドタドタと慌ただしい足音が消こえた。振り返ると、足音の正体は亡き母だった。かつての若い姿をした母が、恐ろしい目つきで自分を睨みつけた。
「あんた!!こんなとこで何してるの⁉︎」
大声で叫んだ。思わず肩がすくんだ。
「ここはあんたが居て良いとこじゃないのよ!!速く帰りなさい!!」
鬼気迫る顔をした母に詰め寄られる。手を振り上げられ、ばちんと強く頬を叩かれた。予想していなかった衝撃を受けて思わず目を固くつぶった。

その瞬間、カーテンの方からノイズがかった気持ち悪い声が聞こえた。
「残念、あともう少しだったのに」

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