『理想郷』
目を開けると自分の好きなものばかりだ。甘いお菓子に可愛いお人形、側には綺麗なドレスが吊り下げられている。たくさん悩んで作ったこの部屋は私の好きなものだけで作った。大変だったけど、どこを見ても私の理想。好きに囲まれた幸せな部屋だ。
瞼が重い。
「先輩、依頼された住所ってここですよね。めっちゃ異臭するですけど」
「残念ながらここで間違いない。先に室内の確認だ」
「うわ、中もめっちゃ汚れてますよ」
「食べ物は腐ってるし、部屋はゴミと虫だらけ。服とかもボロボロ、あ奥に誰かいません?」
「この部屋の家主だろう。写真で見た時よりだいぶ痩せたな。ほとんど骨と皮だ」
「えこれで生きてるんですか?人ってこんななれるんですね」
「新薬のせいだろうな。副作用で幻覚などの症状が出るらしい。ここまでとは聞いてなかったが」
「相変わらずヤバいですねウチ。俺もう1秒もこんなとこ居たくないですよ」
「同感だ、早くやることやって帰るぞ」
何か匂う。焦げ臭い。
11/1/2024, 2:46:34 AM