お題「どうして」
幼い頃から一緒にいるのが当たり前だった。
遊ぶ時はもちろん、ご飯を食べる時も、出かける時も。
この時間が、ずっと続けばいいのに。なんて思っていた。
君が、僕のそばから離れることはないと思っていた。
それなのに──
「どうして……」
僕を置いて先に逝ってしまうんだ…。
お題「日の出」
白く染まった吐息が、風に乗っては消えていく。
冷え切った掌を擦り合わせ、ほっと息をつく。
「ねぇ、見て!」
彼女の呼びかけに顔を上げると、水平線が優しい橙色に包まれていた。
「綺麗……」
思わずこぼした彼女の一言に、僕はただ「そうだね」と返すだけだった。
まるで僕らを飲み込もうとするかのように、大きく広がっていく眩しい光。
飲まれてしまってもいいや──そう思ってしまうほどに、素敵な日の出だった。
お題「声が枯れるまで」
私は、歌が好きだ。
作曲や作詞をしているわけではないけれど、誰かが書いた歌を、私が私の大切な人へ向けて歌う。
この想いが、あなたにどれだけ伝わるかはわからない。
もしかしたら、微塵も届いていないのかもしれない。
それなら、歌い続けるだけだ。
声が枯れるまで。
お題「0からの」
それは、唐突の別れ話だった。
おしゃれなカフェで、彼女から突然切り出された別れ話。
「まだ好きなんだけど、結婚したり、あなたとの子を授かったり……将来一緒にいる未来が見えないの」
僕はそんなこと、一度も思わなかったのに。
まだ好きでいてくれているのに別れようだなんて、相当な覚悟があってのことだろう。
僕だって気持ちはずっと変わらない。
だから僕は、もう一度チャンスをくれないかと願った。
「君と、0からやり直したいんだ」
彼女は、必死に頭を下げて放った僕の言葉に、大層驚いたようだった。
「0から……ね。いいよ」
「ほ、ほんと!?」
僕は、彼女の答えが嬉しくて、思わず大きな声を出してしまった。
すると彼女は、マグカップを置いて席を立ち上がった。
「1からなら、このままやり直せたかもしれないのにね」
何を、言っているんだ──彼女は。
そして彼女は、僕を見下ろして微笑んだ。
「0から……だもんね」
さようなら。また、どこかで。
お題「同情」
小学生のうちは、共感をしているつもりだった。けれど、それは共感ではなく同情。泣いている友達に「うんうん、わかるよ」と励ましていたのは、共感ではなく同情。
けれど、みんなそれで友情というものを築いてきた。
中学生にもなると、共感と同情が違うものであると気づく。知らないうちに学んでいるのだ。そして、思春期となるこの時期から、心に闇を抱え始めるようになる。
高校生になると「同情」というものに敏感になる。
SNSで、自分と同じ心の状態である仲間を、自ら探して絆を作ろうとする。そうしているうちは、その仲間の心理状態を、共感として捉えられる。
しかし、いずれ絆が芽生え、知らず知らずのうちにまた、同情してしまうのだろう。
幼い頃は、同情されることで「自分のことを理解してくれている」のだと心が満たされる。
心が発達していくと、「同情」というものは、やがて「上辺だけの感情」に過ぎないと感じるようになる。
この辛さは、自分にしかわからないのに、何故「わかるよ」なんて言われなければならないのだと、静かに怒りを覚えてしまう。
※あくまで、私の経験や意見を綴ったまでです。