小音葉

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3/15/2025, 1:46:38 PM

耳障りな甲高い囀り
歩みを妨げる亡霊の群れ
焦土から叫べば響くだろうに、彼等は口を噤むのだ
そうして今日も、よく似た塵が降り積もる

アスファルトを打つ水滴が
雨でも、雪でも、芥でも
もはや誰も気付きやしない
彼等は見上げることを諦めてしまった
だから、真似た仕草で感染する
皆で渡れば怖くない
指先一つは刃となり、死んだ瞳は三日月となる

霧の中、灰色の森を進む
足裏で乾いた枯葉の割れる音がする
逸る鼓動と白い息
聳える大樹を掻き分けて
百年河清を待たずとも

(心のざわめき)

3/14/2025, 11:56:56 AM

太陽に嫌われて久しい
凍えた骨をご案内

夜明け前が一番暗い、なんて云うけれど
訪れない明日を一体どうして信じられるの

擦り切れた円盤は劈く異音を点々と
歪な足跡は愉快なパレエド
縒れた軌跡の辿り着く先は真っ逆様
終局は見えない、目が腐り落ちているから
後ろ髪を引かれることもない、髑髏はいつも寒いだけ
カラン、コロン
聞き飽きた足音引き連れて
黄泉比良坂、越えましょう

カラン、コロン
カラン、コロン

流れる涙もないけれど
川の向こうで逢えますか

(君を探して)

3/13/2025, 11:27:26 AM

形を失くして解けていく
線になって千々に砕けて
畝る私は波繁吹き

悔いはない
反響する泡の声
抱えた炎は連れていく
沈み、鎮まり、いつか回生を願う時まで
私が預かり閉じ込めておこう

光芒は私に懐いて
途切れた頁を連れてくる
瓶を開ければ汚れてしまう
清澄の脈に逆らって
弾け、弾け

悔いはない
鏡面を裂いて、手を伸ばした

(透明)

3/12/2025, 12:35:52 PM

咲き乱れる花、唄う川
少し俯いて、差し込む朝日に頭を撫でてもらう
お早う、挨拶は欠かしてはダメ
誰かにそう教わったわ

咲き乱れる花々も、鳥達も
隣家の皆様もご機嫌よう
向かいの家には綺麗なお姉さんが一人、住んでいて
煌めく指輪を付けているのよ
いつか読んだ夢物語、素敵な素敵な約束の証
白い王子様
私のところにも来てくれないかしら
素敵な街なの、素敵な家なのよ

籠を手に持ったら出掛けるわ
私だって、もう子どもじゃない
顔をくしゃくしゃにして追いかけて来たあの子とは違う
そういえば、今日はいないのね
どんな顔をしていたかしら
何の話を、していたかしら

ともあれ今日はあなた、とびきりのお客様
久しぶりのお友達に、優しいこの街を案内したいの
付いてきて、どうか手を離さないでね
逸れてしまえば、小さな私じゃ見つけられない

見上げる、肩越しのサルビア
強い日差しに遮られて、きっと微笑んでいたのでしょう
そう、抱き締めてくれたはずなのよ
私は間で足ぶらり
繋いでいたの、祈ったのよ

あなたでしょう?
あなたなのよね?

(終わり、また初まる、)

3/11/2025, 10:35:04 AM

それはいつか、燻る私を焼いた光

まだか弱い残滓を覆う
信じて差し出される掌の熱
吹けば消える幻を描いて
殻を与えて閉じ込めた
あなたは船のようだった

隠す腕を振り解く
何度も顔を露わにさせる
恨めば良い、激情が背を押すならば
今は立ち上がり垂れ流せ
血も涙も越えて、あなたは輝く標となる

長い航海もやがて終わるだろう
色彩を取り戻した空の下
あなたは砂漠の片隅で、紛れる一つの粒となる

私の記憶を載せた船は
遠く遠く、彼方へ旅立つ
刻まれた光を忘れない
あなたのことを、ずっと、ずっと

(星)

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