小音葉

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3/13/2025, 11:27:26 AM

形を失くして解けていく
線になって千々に砕けて
畝る私は波繁吹き

悔いはない
反響する泡の声
抱えた炎は連れていく
沈み、鎮まり、いつか回生を願う時まで
私が預かり閉じ込めておこう

光芒は私に懐いて
途切れた頁を連れてくる
瓶を開ければ汚れてしまう
清澄の脈に逆らって
弾け、弾け

悔いはない
鏡面を裂いて、手を伸ばした

(透明)

3/12/2025, 12:35:52 PM

咲き乱れる花、唄う川
少し俯いて、差し込む朝日に頭を撫でてもらう
お早う、挨拶は欠かしてはダメ
誰かにそう教わったわ

咲き乱れる花々も、鳥達も
隣家の皆様もご機嫌よう
向かいの家には綺麗なお姉さんが一人、住んでいて
煌めく指輪を付けているのよ
いつか読んだ夢物語、素敵な素敵な約束の証
白い王子様
私のところにも来てくれないかしら
素敵な街なの、素敵な家なのよ

籠を手に持ったら出掛けるわ
私だって、もう子どもじゃない
顔をくしゃくしゃにして追いかけて来たあの子とは違う
そういえば、今日はいないのね
どんな顔をしていたかしら
何の話を、していたかしら

ともあれ今日はあなた、とびきりのお客様
久しぶりのお友達に、優しいこの街を案内したいの
付いてきて、どうか手を離さないでね
逸れてしまえば、小さな私じゃ見つけられない

見上げる、肩越しのサルビア
強い日差しに遮られて、きっと微笑んでいたのでしょう
そう、抱き締めてくれたはずなのよ
私は間で足ぶらり
繋いでいたの、祈ったのよ

あなたでしょう?
あなたなのよね?

(終わり、また初まる、)

3/11/2025, 10:35:04 AM

それはいつか、燻る私を焼いた光

まだか弱い残滓を覆う
信じて差し出される掌の熱
吹けば消える幻を描いて
殻を与えて閉じ込めた
あなたは船のようだった

隠す腕を振り解く
何度も顔を露わにさせる
恨めば良い、激情が背を押すならば
今は立ち上がり垂れ流せ
血も涙も越えて、あなたは輝く標となる

長い航海もやがて終わるだろう
色彩を取り戻した空の下
あなたは砂漠の片隅で、紛れる一つの粒となる

私の記憶を載せた船は
遠く遠く、彼方へ旅立つ
刻まれた光を忘れない
あなたのことを、ずっと、ずっと

(星)

3/10/2025, 10:32:11 AM

愛でもいい、恋じゃなくてもいい
蒲公英の丘から飛び降りてみたい

失ってしまえ
突き落とせ
酔って飲み干す涙の味を
爪に食い込む悔いを肴に
舌に焼き付けて、思い知れ

お前は誰だ
飽きて破り捨てる、手垢塗れのフレーズを
空を掻いても毟っても
瑣末なことだ
落ちてみても気持ち悪いだけ
世界は何も変わらない

夢の先が途絶えて久しく
こんな想いを抱えては、ダンデライオンはもう飛べない

(願いが1つ叶うならば)

3/9/2025, 11:43:17 AM

衝撃、
手の甲を叩く軽い反発
屈する硝子は悲鳴を上げて砕けて
喘ぎ苦しむ細い腕
その声は聞こえない

透明が腐る前に掬い上げる
ごめんね、わざとじゃないの、と呟いて
伏せる目は虚空を見つめる
遠くへ
何処か遠くへ
知らず、握り締める

砕ける
割れて落ちる
あんなに大切にしていたのに
転がれば床を汚す血溜まりとなる
もう帰らない
分かっているけれど、強がって吐く息が震えた

(嗚呼)

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