それはいつか、燻る私を焼いた光
まだか弱い残滓を覆う
信じて差し出される掌の熱
吹けば消える幻を描いて
殻を与えて閉じ込めた
あなたは船のようだった
隠す腕を振り解く
何度も顔を露わにさせる
恨めば良い、激情が背を押すならば
今は立ち上がり垂れ流せ
血も涙も越えて、あなたは輝く標となる
長い航海もやがて終わるだろう
色彩を取り戻した空の下
あなたは砂漠の片隅で、紛れる一つの粒となる
私の記憶を載せた船は
遠く遠く、彼方へ旅立つ
刻まれた光を忘れない
あなたのことを、ずっと、ずっと
(星)
愛でもいい、恋じゃなくてもいい
蒲公英の丘から飛び降りてみたい
失ってしまえ
突き落とせ
酔って飲み干す涙の味を
爪に食い込む悔いを肴に
舌に焼き付けて、思い知れ
お前は誰だ
飽きて破り捨てる、手垢塗れのフレーズを
空を掻いても毟っても
瑣末なことだ
落ちてみても気持ち悪いだけ
世界は何も変わらない
夢の先が途絶えて久しく
こんな想いを抱えては、ダンデライオンはもう飛べない
(願いが1つ叶うならば)
衝撃、
手の甲を叩く軽い反発
屈する硝子は悲鳴を上げて砕けて
喘ぎ苦しむ細い腕
その声は聞こえない
透明が腐る前に掬い上げる
ごめんね、わざとじゃないの、と呟いて
伏せる目は虚空を見つめる
遠くへ
何処か遠くへ
知らず、握り締める
砕ける
割れて落ちる
あんなに大切にしていたのに
転がれば床を汚す血溜まりとなる
もう帰らない
分かっているけれど、強がって吐く息が震えた
(嗚呼)
廃れた教会、モザイクを這うアイビー
神も悪魔も去った銀雪にて
隠れた二人は指切りを
痩せた鼠だけが知る誓い
走り書きの涙、橙の水
夜が来るよ、蛇の目に怯える夜が来る
小さな牧師は目を閉じる
手を取る二人に祝福を
離さないで、星を紡いで、いつまでも
きっとまた昇る陽よ、彼らを守り賜え
羽ばたく音を聞き届け
夜はまだ寒いけれど、痛みが胸を刺すけれど
今度は同じ言葉を交わせますように
会いに行くから、聞かせてほしい
案外、苦しみは続かない
眠る鼠は微笑んだ
(秘密の場所)
我楽多、数多、記憶の花道
人工の星が照らすブリキの街
空はとっくに落ちたけれど
いつでも明るい我らが故郷さ
錆びたあの子は今日も歌う
遠い昔の歌姫のように
掠れた声で、情熱を誦じる
胸のポンプは冷たいけれど
雄叫び、喝采、雨のように
鉄の皮も羽衣となる
彼らは間違えた
繰り返し、何度も、何度も
彼らに愛された
初めて見た二つの光を忘れない
街外れの暗闇、汚濁の水鏡
調子外れの音階は
無機質の宙、彼方へと走り去る
ワタシは天国にも地獄にも行けないけれど
祈るように、パイプを鳴らすの
(ラララ)