小音葉

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3/6/2025, 10:37:04 AM

心は知らない、聞こえない
振動を届ける筒がない
けれど花火のように、泡のように浮かび上がって
船より早く、飛行機より遠くまで
小さな私を届けてくれる

知っているかしら
楽園は歪な形をしている
小さな私は傷付いて
泣いて哭いて腫らして弾け
膿んだ希望を引き連れて
轟々と唸る赤い川を辿り、芯に至る

やがて凍り付く、その前に
きっと夢見たことでしょう
天の川、あるいは一面の向日葵畑
それら全てが私であなた
お休みなさい、良い夢を
私が咲き、咲かせましょう

あなたは私
私はあなた
希望の種子を抱いて飛んで
世界全て、染め上げて仕舞うまで

(風が運ぶもの)

3/5/2025, 1:50:26 PM

問い掛ける
時はなく、救いもない
静謐だけが横たわる、忘れられた片隅で

やがて辿り着くセピアの回廊
枯れた木々は罅のように
脳溝をなぞり、蝕み、腐らせていく

いつから此処に
何故、私は
いつまで惚けるのか
分からない、分からない、分からない
閉じ籠る
望まれない選択を否定しないで

放っておいてくれないか
窓越しの鳥のように、私は相容れないモノ
蓋をして、鍵を掛けて、塗り潰して
お願いだから、ねえ、私を見ないで

問い掛けて
塞いだ手に重ねる熱を、微笑みを
許してはならない
迎えてはいけない
待ってなどいない
本当だから、どうか、どうか、揺り起こさないで

(question)

3/4/2025, 1:58:30 PM

星屑を眺め、穏やかに笑った
影も迷いも受け入れた、力強い横顔を覚えている
流星の一矢、鋭い眼光
その優しさが一度、取り零したモノを知っている

凪いだ声、透き通る瞳
白い指先がなぞる円
滑る爪先、やがてその熱が至るこの黒
並ぶ肩の温もりを、珍しく紡がれた御伽噺を
珠玉の誓いを

お前が忘れてしまっても

そう、この胸に空洞も赤も無いけれど
またお前と逢う為に、宝を全て落としたのだから
いつか旅立ってしまうまで
花弁の隙間から見つめていよう

貫く青を星空に探す
伸ばした手を取る、白があるとは

(約束)

3/3/2025, 1:47:02 PM

窓際の花は語らない
紅茶を淹れたら一頁、捲る
巡る空想と午下り

吊られたエアプランツは噂話
訪う雀と気紛れに
鴉が鳴いたらお別れね

遊ぶ光は石が好き
藍が来るまで、散る儘に
離さない、逃さない
夜が明けたらまた会える

雨上がりのトンネル
地上の空
あんなにも青かったけれど
固められた笑顔は滲むだけ

(ひらり)

3/2/2025, 12:12:33 PM



銀の頂、白亜の塔
忘れ去られた過去の檻
ある日は、止まった針を見つめて
またある日は、小さな物語を棚に収めて
価値なき証を綴る亡霊

鼓動は鳴らず
吐き出す色は透き通る
確かめる足もなく
空洞を抱えて目を擦る
呼び声は久しく聞こえない

これが罰ならば
贖うべき罪の形ならば
しかし、天秤を揺らす手はどこから訪う
眠れない
これでは、込み上げる
まだ、まだ、永遠になりたくない
色付く、広がる、かつてあなたがくれたもの

ああ、あなたは、そう、あなただけを
待っていた

(誰かしら?)

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