甘い雫も枯れる頃
踵を鳴らして飛び出した
地図もコンパスも持たないで
鈴のように私を奏でる
昨日はあの人、今日はあなた
行き交う、出会う、知らない誰かが私の導
人じゃあなくったって構わない
明日の色はまだ知らない
夢見る季節が終わっても、嵐のように私は鳴るわ
辛いモノも嫌いじゃないの
風のまにまに私が響く
花舞う都、さざめく街よ
あなたの名前を、教えて頂戴
(あなたは誰)
あなたが私を愛した時
私はあなたを憎んだ
あなたが私を守った時
私はただ崩れる背を見送った
あなたが私を求めた時
私はあなたを忘れ白い海を飲んだ
否、否、否
幾星霜、時が流れようとも
繰り返し言葉を、刃を、熱を交わすのだろう
拝啓、彼方で私を待つあなた
星に臨む蕚から
この声が届いているのなら
どうか答を
もう一度、燃ゆる季節を
(手紙の行方)
空を目指すのも良い
やがて月を駆り、熒惑を統べる日が来たなら
見下ろす廃墟に焦がれるのだろう
迸る血潮
大地の怒り
海を繋いだアビスの星
踏み締めた底に眠る、母のかいな
後退するチャリオットはなく
我らは槍を、剣を、掲げ吼えるのみ
いつか星となるまで
(輝き)
あなたの望みが叶う時
私はあなたの隣にいたい
囀るように笑い、支え合い、偶には喧嘩もして
かつて奪われた当たり前の片隅で、並び立つ
差し込む朝日に微睡むあなた
たかが布の塊を妬む私を、あなたは微笑んで迎えるのでしょう
昼下がりの珈琲
あなたの想いが込められたクロワッサンを、私は溶け切ってしまうまで味わうのです
月光が照らす窓辺、降り頻る雪が闇を覆っても
あなたは忘れないのでしょう
背負い続けるのでしょう
その涙を拭うことを、細い肩を抱くことを、どうか許してください
なんて、素晴らしい未来
どんな祝福にも勝る約束を、何度夢に見たでしょう
許されざる明日を打ち明けたなら、きっとあなたは抱き締めてくれるけれど
あなたの望みが叶うこと
あなたが当たり前の中へ帰ること
私は願ってやまないのです
亡霊も宿命も、悉くを撃ち落として見せましょう
愛しいあなた、私の太陽
あと少しだけ、どうか隣に居させてください
(時間よ止まれ)
迷い子の森
木霊する音は無く、裸足で一人
瘡蓋のような茶の管は霞を縫って
穿つ緑は針
一歩、進む
一歩、進む
立ち止まる
震える吐息に色は無く、裸足に滴る
亡霊のように佇む陽炎のあなた
私を誘う
払暁
黒いあなたが告げる
泥より出ずる朝が来た、と
(君の声がする)