すず

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3/29/2025, 6:36:41 PM

乱れた瞳孔。そこから溢れる大粒の雫は一体どんな味がするのだろう。やはり塩っけが聞いているのだろうか。もしかしたらほろ苦い味が広がるかもしれない。
想像するだけで鼓動はたかなり、思わず唾を飲み込む。
その瞳に映し出された僕らは数多の色彩が混じり合い、慰め合い、そして真っ黒に染った。
頬に垂れる雫はただただ乱反射し、モアサナイトの如く絢爛に輝き夜の街に熔けていく。
それがまた、美しいのなんのと脳を焼きつける。
だからまた、その時が来るまで僕らは待ち続ける。
今日もまた、涙を流すのだ。

3/1/2025, 6:02:41 PM

灰色の人生っていいよな。真っ黒じゃないだけで区別もできるし。感じることだってできる。本当に素晴らしいよ。



「落ち着いて聞いて」
タバコ焼けしたガザガサの母の声が聞こえた。いつも通りの平坦な声。
「あんな、その目......もう見えんくなるらしい」
そう宣告されたのは病院のベットの上での出来事だった。
「治る可能性も万二一つもないそうだ」
その言葉に反応することは無かった。いやできなかったが正しい。どこで気絶したのか記憶は霞んでいてよく覚えていない。授業中であったか塾の帰りであったか、とてもあやふやだ。だがそこは重要では無い。今最も留意すべき事柄。
僕の様子に気付いたのか母はさらに告げていく。
「受験はもう終わった。あんたが寝ている間にね」
血の気が引いていく。人生を掛けていた。現役の頃を合わせてもう3年近くだ。
体の力が抜けるのを感じていく。
「その様態じゃ大学に行くのもままならない。もう諦めな」
神罰のように下されたその事実は、その事実はその事実....
「すこし、席を外しておくよ」

違う、違うのだ。
母はきっと勘違いをしている。僕の努力が報われるどころか、おぞましい仕打ちを受けていると。僕が憐憫に浸りたいと思っている。
全くもって逆だった。
人生をかけた勝負は勝負にすらなっていなかった。
でももういい。疲弊していた。盲目的だった。楔で磔にされていた。
僕は僕に戻ってようやく気づいた。世界はこんなにも静かだと。
窓越しのてらつく陽の光は確かに僕を包み込んでいた。
僕はきっと諦めたかったんだ。その理由を見つけたかった。
勉強が嫌いになった訳では無い。好きな分野があってそれを学びたくて浪人生になった。それが1年経てば目的から手段へと成り下がった。もう1年経つとこの地獄からの解放を願って大学をめざした。

目が見えなくなり、念願の大学に行ける可能性は消え去った。
それでもこんなにも
「空気が美味しい。」

12/9/2024, 3:49:12 PM

物心着く前、よく母と手を繋いでいた気がする。
少しひんやりとしていて優しく包み込んでくれる事に何よりも安心感を得ていた。
だからだろう。いつしかそれが癖となっていたのは。
どんな人よりも手を繋いできた。
友達との挨拶代わりは握手だったし、初めての恋人との繋ぎは昨日のように思い出せる。
だから寂しくなんかないさ。
私の目を下に向ける。そこにはあるはずの手がなかった。
交通事故。運が良かったのか悪かったのか命は無事だった。その代わとばかりに私の両腕は切除しなければならなかった
私のはもう人一倍ある思い出もあるし作り続ける。手を繋げることが出来なくても心では繋がっているから。

12/4/2024, 4:47:22 PM

夢と現実に違いは無い。
現実を現実として定義できるものは何一つなく、そこにあるものを空想だと思わないのが私たちだ。

遥か未来に住んでいる私たちを想像してみよう。
その中では体という鉛から解き放たれ人々は情報の1部でしかない世界だ。そんな世界で何が現実か何が仮想なのかなんて論争に意味はあるのだろうか。
あなたはこう思うかもしれない。それは未来の話で所詮は妄想でしかないと。しかし私はこうも思う。
この話に未来かどうかなんて関係あるのだろうか。

例え5秒前に作られた世界だとして、あるいは私たちが仮想上の実験動物だとしてもやる事に変わりは無いはずだ。

夢か現実かなんて区別に意味は無いということ。
ただ突き進むしかないのだ。我武者羅に。馬鹿の一つ覚えみたいに。

12/3/2024, 3:42:21 PM

「なぁ」
「んだよ」
「小学校の時さぁ」
「うん」
「さよならの事さ、さよオナラって妙に言いたくならん?」
「おん?」
「いやさぁこう......あんねんな、渦巻く衝動が」
「まぁあるっちゃあるか?」
「んでよォそれを当時好きな子に試しに言ってみたのよ」
「おっと?」
「その時何したと思う?」
「まぁキモイとかやめてとかそこら辺じゃね」
「ツームストーン・パイルドライバー」
「ツームストーン・パイルドライバー?」
「そう」
「......将来有望だね」

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