さらさら!?さらさらっつったか!?
ハゲをバカにすんじゃねぇ!
太陽光に負けないくらい必死に生きてんだ!
冬の寒さに人一倍耐えてんだ!
お前にハゲの偉大さの何がわかる!
毛根はこの頭を守っていた大恩毛だ!
俺を照らしている頭皮をバカにすんじゃねぇ!
私が声を発したということは、世界に淀んだ空気がひとつ増えたことと同義である。
批判は拒絶でしかなく称賛は嫉妬の裏返しだ。
故にこの閉ざされた社会的空間において、私の名前を呼ぶという行為はただの嫌がらせでしかなく離れ難い日常であった。
「皐月さん」
「なに」
抗議半分嫌味100%の私の表情に臆することなく彼女の口は開き続ける。
「さっき言ってた班決めの時の話なんだけど」
やはりそう来たか。さっき言ってた班決めというのは、来週ある鎌倉遠足での班の事だ。その時ありたいていに言えば私は孤立していた。周りがいそいそと仲間を見つける中、私は机を動かずにいた。そこを掬いあげたのが彼女、美園 エリカである。
「なに?班決めが無しにでもなった?」
「いや、そういうことじゃないんだけどね」
180を超えた私の胸より少し下にある顔が視線を合わせようと美園は顔を上げる。
綺麗な小麦色の髪を携えて言い淀む彼女。そこから伺えるルビーのような瞳は何処か慎重に地雷原を除去している様な緊張感溢れるものだった。
「ただ他の子たちがさ、やっぱり別の班に行くみたいで」
「ふーんまぁそうだよね私みたいな余所者がいたら嫌だもんね」
「いや、そういう訳では無いと思うよ!」
「いいよそういうの慣れてるからね」
「ほんとに!私は皐月さんと回ろうとおもってるし」
「はぁ?」
懐疑的に細める私を横目に美園が決心したように話を始めた。窓から差し込むオレンジの光は廊下を神秘的に塗装される。
「実は私......」
なんなんだこの空気は。
人生で一番の圧迫感だ。死んだ目をコンビニ店長との面接だってここまで嫌な予感を感じたことは無い。
「あなたと友達になりたいの!」
「とも......だち」
ともだち......
「はぁ!?」
「だっダメかな?」
「ダメとかいう以前に意味がわからないんだけど」
今までこう言うタイプが居なかった訳じゃない。私を哀れんで、自己愛と周りへの印象づけの為に寄ってくるクソども。でも彼女の瞳が物語っていた。
言うなれば憧憬の眼差し、いや、もっと近い表現をすると好き好き光線というやつだろう。初めて見た。
「いやあの、だってほら変な噂は聞くけど皐月さんいつも難しそうな本読んでるし、孤高って感じでかっこいいし他にも、美人さんでモデルみたいな体型してるし、手入れされた青いロングヘアーが神聖さを醸し出してるし、」
「ストップ待ってくれ、つまりは物珍しさで近寄ってきたって事でいい?」
「えっと物珍しいっていうのも否定はしずらいけど、1番は前あった御本さんと朝倉さんの喧嘩を仲裁してくれた事かな」
「仲裁.....」
あぁ言われてみればそんなこともあった気もする。彼氏を奪っただとか、私は悪くないだの喚き散らしていたあれか。恥辱のもつれだかなんだか知らないが、その日不機嫌になった私はついつい横槍を入れてしまった記憶がある。そこからは本当に地獄絵図だった。火に油、彼らの敵意はすぐに同調し私へと矛を向け始める。
何があんたには関係ないだ仲良くシンクロしてんじゃねぇ。お前らロボットアニメじゃねぇんだからよ。
そんな彼女らの光景に億劫と呆れが通り過ぎ、登った血はすでに下山し終えてしまう。
だからこそ判断を下した。こんな教室のど真ん中に置かれた火種をどうするかをだ。
「それってさ浮気した彼氏が悪いよね」
感情で動く人間というのは案外操りやすいものだ。そこに撃つべき標的がいて大義もあればの話に限りだが。
彼女達の感情の元は明白で両者共々悪者を退治しようとしている。そこに自分の彼氏を守るだとかそういった感情は感じられなかった。私の所有物を奪ったという憎悪と怒り。そんな彼女らを焚き付けるのに5分もかからなかった。
結局この話は仲裁なんて話ではなく、不法投棄したバカに返しただけなのだが。
「別にそんなつもりは無い」
「でもね、あの時の皐月さんはかっこよかったよ。あのままじゃきっともっと酷いことになってたと思うから。私はぼーっとすることしか出来なかった。」
「はぁ、それだけなら答えはnoだね」
結局美園も私を珍獣として見るだけだろう。動物園のように観察し理解出来ず離れていく。腐るほど見た王道展開だ。
そう思い立ち去ろうとするが
「でも...」
「いい加減にしてくれない?あのさ、さっきから私の顔みてないの、迷惑って顔してない?」
「......」
「あなたがその事についてどう思ったかなんて関係ないし、その程度の事で近ずかずられても迷惑。ハッキリ言ってあなたの行動てさ自己を満足させるためだけの行為だよね」
俯く彼女に動く気配は無い。漸くかとため息を吐きなが足を動かす。
「諦めないから!」
「はぁ?私の話聞いてた?」
「確かにこれは自己満足だし、迷惑をかけるかもしれない、それでも私は友達になりたい」
「あのさあ...」
「だってあの時怒ってくれたのは私の所為でしょ!」
私は何も言えなかった。
真っ直ぐな瞳がこちらを射抜く。
「あの時、口論がヒートアップしてもの投げたものが私にぶつかったのを見たんだよね?」
「そんなものは知らない」
「でもあの時私と目が合ったよね」
何も言えるはずがなかった。
話を始めた時点で負けていた。
「恩人と仲良くなりたいってイケないこと?」
そう訪ねてくる彼女は母のような優しい微笑みを浮かべている。
「大袈裟だ」
ため息の混じった声がでる。何となくこの展開を私は予測していたのだろう。その上で彼女の話を聞いていたことを自覚して体を掻き毟りたくなる。
「そんな事ないよ」
「わかったよ。私の負け。いいよ友達になっても」
こんな上から目線の言葉に目を輝かせ思わずと言った感じでガッツポーズを決めていた。
まったく、こんな性格の悪い巨女と友達になりたいだなんて変な趣味を持つやつもいたもんだ。
「これからよろしくね!」
「ああ、よろしくエリカさん」
「エリカでいいよ!」
「いや、それはやめとく」
「えぇー」
「じゃあここに置いとくからね」
ドアの向こう側からは母親からの簡素な言葉が漏れていた。僕はその音を聞きたくなくて布団をより深く被る。それでも耳が拾ってしまうのは僕の幼さ故か、そんな考えが浮かぶが確かめる方法は無い。
乾いた喉は、震える瞳は僕の心の弱さの象徴している。
ジメジメとした部屋。暗がりには昨日からつけっぱなしのpcがひとり寂しく照らすだけ。居心地は最高潮に悪いがここ以外の居場所は悪天候の河川敷の下くらいしかないだろう。
別にいじめだとか過去のトラウマだとかそんな大それたことではない。
僕だけの問題で、悪者は自分自身。
それに気づいたのは小学校の頃か。当時の僕は色んなものに興味を惹かれていた。本当、色んなものにね。
空に広がる青い雲たち、季節の彩りやピアノが放つどこか儚げながらも鬼神に迫る迫力。その全てが僕には不思議と魅力的に感じていた。それはある意味では子供らしく、子供らし過ぎた。
わかりやすく言うなら、少しズレた子だったのだ。
他の子がかけっこをしている時、僕は雲の動きを探っていた。
他の子が山で虫を取りに行っていた時、僕は炎がなぜ燃えるのか考えていた。
そして他の子が好きな物を見つけ始めた時、僕は全精力をかけて音の響き方について研究していた。
それらはとても捨てがたい思い出たちであると同時に、忌まわしき呪いでもある。
そんなある時、学校のありとあゆる小道具を叩いてその録音を何度も聞いていた時に1人の女の子が近ずいてきた。
「なんで僕くんはそんな変な事するの?」
そうクラスメイトに聞かれた事を今でも鮮明に覚えている。抑揚なく、ちょっとした好奇心による言葉なのは当時の僕にも気づいていた。
それでもなお僕は切れてしまった。譲れないものだった。僕の豹変した姿に驚いた女の子は涙を流し、それを見た僕は更に激昂した。
そんな僕達を何とか収拾をつけようと呼ばれた先生がとった行動は両方を謝らせるというものだった。
その判決は子供の僕にとってはあまりに無情なものだった。思考を放棄し、自己満足に浸るような行為にしか感じなかった。
講義をしようと一旦頭を冷静にした時気づいたのだ。周りからの視線を。周りからの嫌悪の視線。奇異な目線。
色々な重圧が一点に集中していた光景を。
その後、謝った。それをもう完璧な土下座を持ってして。最大級の謝罪を行った。
それからという物僕は変わる......ということは無く、膨れ上がる矜持は留まることを知らなかった。
むしろプライドを傷つけられたと感じた僕はより孤立して行く。それは中学、高校に行っても変わることは無かった。
そして悟ってしまう。惰性と稚拙に塗り固まった考えだと今では感じるが、それでも唯一の打開策だと考えた。
それがこの僕の姿だ。転校した通信高校生という身分を大いに活かし、ぬくぬくと家で巣くっている。
親に考えを話した時、驚いた顔をされたが反対することは無かった。薄々気づいていたんだろう僕の気質を。
そしてそれからは趣味に没頭する日々だった。全てを出しつくしていくうちにポツポツと募っていく思いがあった。その思いに触れてしまった。
ようやく僕は気づくことが出来た。結局は逃げていただけなのだと。あの時、反抗するのではなく謝ったのがその証拠だ。僕は責任から逃げた。それからという物会話という会話をしなくなった。責務から逃げたのだ。
そして逃げ着いた先は静かなる森の中。
声は響くことはなく、迷いんだら逃げられない。恐ろしい森へと。
でも。
それでも。
だからそ。
もう逃げられない。逃げられない場所まで来てしまった。それでも僕ができる事が一つだけ、開拓の道だけだ。
まだ決心はできていない。もしかしたら元いた道に戻るだけかもしれない。
恐怖はある。不安はある。
でも僕が僕のままでいる為に矜恃を捨て、好奇心だけのあの頃に戻るために、冷たい扉のレバーを押し開けた。
今どき紙なんて古臭い。
調べたいならネットを開けばいい。そうすれば嘘か誠かも朧気なふざけた情報はわんさかと溢れかえっている。
連絡を取りたいならスマホを開けばいい。今や日本におけるスマホの使用率は97%を超えている。3%を引きにいく愚か者は知らんが、そんな中でわざわざと手紙を書き、住所を書き、ポストに入れ、空き時間に思いを馳せる奴なんてストーカーか変人の二択だ。
つまり何を言いたいのかと言うと。
決して全くもって、この下駄箱から飛来した手紙に胸がときめいてる訳では無いのだ。
小麦畑が黄金色に染まる時いつも思い出す。
湿った空気はいつでも肌に付いて離れない。けれどもその感触は達成感が沸き立つ、言わば勲章のようにも感じていた。
畑作業に一区切り着いた頃、休憩がてらとある缶の蓋を開けた。
木陰に照らされた椅子に腰掛け小麦たちを見守るこの時間は少し寂しさを感じてしまう。だからこそ、こんな真昼間からでも飲むビールはどんな喧騒で包まれた居酒屋で飲むよりも美味く感じてしまうものだ。
「なあ、そう思わないか?」
問いかけに答える声は無い。
ただ一点を見つめる視線は彼女の姿を捉えていた。
木々の傍に背中を凭れさせ本を読む黄金色に輝かやかせる髪を下ろす彼女。
「返事のひとつもないとは寂しいねぇ」
出会いと言った出会いは無い。近所の子だったのか、成人しているのか、なぜここに居座るのか、その節々にある行動の意味を知ることはついぞ出来ないままでいる。
しかしただ一つだけこんな鈍い男でもわかることはあるもので。
「幽霊にでさえ無視されるとは」
ハッキリとそれを認識したのはつい最近だ。
小言を吐き毎度の事ながら無視されていた私は、いつまで経っても経過しないこの時間に少し飽きを感じていたのかもしれない。その日の私は今日こそはと立ち上がり彼女へと手を向ける、その拍子だった。
同じく休憩中であっただろう蝶が羽ばたいた。
その軌道が彼女の鼻へと向かう。
「!?」
だが衝突することは無い。蝶は顔を通り抜け空へと飛び立った。
あまりに奇っ怪な光景に目眩を起こしたのを今でも覚えてる。
それからというもの、不用意に近ずくことは無かっが、なお話しかける事を辞めないのは人間故の好奇心だろうか。
「それにしたってもう1年も経つんだ、少しくらいアクションを起こしても損は無いとは思うね。もうこんなにも毎日顔を合わせているんだ友達どころか私達はもはや親友なんじゃないか?」
その瞬間木々がざわつく。風はまるで意思を感じず思うがままに振る舞うだけだ。それは当たり前の事。風に思想なんてあっては困るしただそこに存在してくれるだけでいい事。当たり前は連鎖していく。小麦は踊り、肌はヒンヤリとした冷たさを感じさせ、そして風に仰がれた本はページを進める。
幽霊の持つ本がか?
幽霊の1部だとそう思いこんでいた。実際、彼女の純白なワンピースは草を踏みしめることなく透けさせている。
なぜ本だけが風に吹かれたのか。
その疑問が生まれれば伝播するように私の脳を埋め尽くす。思えばあの本には題名も何も付いていないが、重厚感や金で飾り付けされているところを見るとかなりの高価そうなものだ。本なぞ生まれてこの方対峙することを避けてきた私でもわかる。暫く顔を伏せ思考の渦に顔をつけた。
「少しくらいアクションを起こしても損は無いか.......」
食べたことが無い珍味がそこにある。だがそれを食べる力も毒なのか安全かも定かではない。
しかしそれでもかぶりついてしまうのが人間というものだろう?
私は歩き出す。彼女のすぐ目の前で屈んだ。
本の端を摘み少しずつ、ゆっくりと持ち上げて行った。
「取れてしまった...」
滲んだ手汗を感じつつゆっくりと中身を見る。
何も無い。
ただただ白紙のページが続いていく。厚紙のように荒い面をしていただけであった。
「はぁ、進展は無しか」
辞典のような分厚さで更には幽霊の持ち物だ、さぞかしおぞましい話や奇々怪々な話でも書いてあるのだろうかと勘繰っていたが肩透かしを食らったような気分になる。
そして最後のページをめくる。
そこには今までとは違い一面をインクで滲ませている。
アラビア語のような、癖の強い筆記体のような、どことなく見た事あるようなないような字だ。
しかし読める。単語の意味も、文法すら知らいないしかし私は知っている。
「「世界は調合し合う。水滴と水滴が混ざり合うように、磁石どうしがくっつくように惹かれあってしまう。だが、それには代償が伴われる。世界の色は強い。様々な色々が飛び合い互いが互いを輝かせるために存在している。そんな者同士の調合はどんなものになるのか。
潰し合いだ。より汚く濁っていく。行き着く先は黒1色。これを読んでる君どうか英雄になってくれないだろうか。それも世界を救うような。気負う必要は無い、手段は確立している。これを持っている子に出会うだけでいいのだ。たったそれだけで君は名誉を手に入れられるはずなのだ。だからどうか世界をあの子を宜しく頼む」」
「オカルト系と言えばオカルト系ではあるけども...」
眉間に皺を寄せ目頭を強く押す。ここまでの目眩は初めてだ。
「ファンタジー寄りとは驚きだ」
ふと彼女の方へ視線をあげる。
小麦色を背景に彼女は立っていた。いつもの様な体育座りではなくただ周りを探すように見渡している。
「動けるのか!」
興奮のあまり発する声はまたしても無視。彼女はキョロキョロと視線を動かせるだけだ。時には屈み、自販機のそこを除くように地に這いずる。
その探す動作に珍しく私の勘が働いた。
「ひょい」
本を優しく目の前に落としてみる。
彼女の様子はそれまでとは一変して、本を持ち上げ、そして頬を濡らしていた。
顔を歪ませ、その顔には少しの怒りを感じらせていた。
その様子に驚きつつも思考の海に入った
整理しよう。
まず彼女は幽霊なんてものにとどまらず、世界を救う勇者のような異星人らしい事。今まで無視をされてきたとばかり思っていたがここに来て、場所が違う可能性がでてきた。あの本を探す所作、まるで部屋の中を散策するようだった事を鑑みるに。
「時空が違うのか?」
次に、この本。どうやらあちらとこちらの唯一架け橋のらしい。こちらが触れることも出来るし、恐らく予想の範疇でしかないが書くことも出来るはずだ。その間彼女の時空では消えるようだが私が持つことさえ無ければあちらえと帰る。
最後に、この世界が終わりそうということ。黒になるが具体的にどうなるかは知らないが、確実にろくでもない終わり方だろう。しっかし救済に何故俺が解決させるのか全く心当たりがない。
気づけば日が傾きかけていた。
「まさかこんなことになるとはね...」
高揚というのだろうか。頬はほんのり赤く染まり、遠足を待つ幼児のようだと自分でも笑ってしまう。
「いいじゃないか飽きてきた頃だし、世界の終わりくらい救ってなんぼってもんだろ」
まだ泣いている彼女を見て立ち止まる。
「明日にするかぁ」
翌朝早速俺はポールペンを握りしめあの場所に向かった。
「よかった」
彼女はいつもの様に腰を落とし、木の下で本を眺めていた。
「悪いが少し貸してもらうよ」
どこで拾ったのかもよく分からない知識を使いスラスラと綴っていく。
数分して本を落とすと彼女はすぐに本を掴んだ。
そして目を見開いている。
「全く、初めてが筆談とは」
彼女は目線を滑らかに下げ読み終えると、すぐそこにあったであろう何かを握りこんだ。
数分が経ち、彼女が書き込むことを辞めると立ち上がり腰を曲げ頭を下げる。まるでラブレターを送るように本を両手で頭の前へと突き出した。
それを受け取り中身を読む。
こちらこそどうもはじめまして。まさか人と話せるとは夢にも思いませんでした。それも救世主様とお会いすることが出来るとはラッキーな日もあるものですね。しかし残念な事です。既にその案件は終えていますよ。救世主になれなくて残念でしたね。
そう短く丁寧な筆跡で書かれている。
驚き顔を上げ彼女を見る。少し不安そうでありながらも期待を抑えきれないそんな顔が少し可愛く思えた。
私も負けじと文章を書き連ねた。そして返事が返ってくる。
少しお騒がせしてしまいましたね。この本に書いてある事は全て真実ですよ。世界が終焉を向かうそうなことも、救世主を呼び寄せるために握り締めたことも。
まぁ長い間持つかいもなく、この件は終わってしまうのですがね。全く困ったものですよ。
そうそうこの黒く塗りつぶされという意味ですがそのままですよ。世界は秩序を保てなくなる。やがて色どうしがぶつかり合い最終的に黒、つまりは機械のオーバーフローみたいな状態になるのです。そのせいで機会はブルースクリーンに落とされる。そんな感じですよ。激しくぶつかりあった空間から黒に飲まれていき最終的に黒一色になる。まぁ私もこの本も有効活用されなくこの件は終わりますがね。
驚愕というかなんというか
なんというか昨日の決意を返して欲しい感じだ。
骨折り損のくたびれもうけ、何度も味わってきたものである。考えてみれば当たり前の事。そりゃそうかもしれないな。一介の農家に助けをこう案件なんか世界が力を合わせればどうってことも無いか。
少しほっとしたような惜しい事をしたような気分だ。
それからはたわいのない話が続いた。あっちの世界では魔法が発展してこの世界異常に文明が発展していて、人口が数年前に200億を突破しているだとか、貴族の育ちで聖女としての職に就いているだとか、そうそう彼女が14歳というのも驚きだ。
弟が大道芸人の道をいきお父様がカンカンに怒っていた事。結局はお母様に解き付されて応援していた事。お母様は強い人でよく剣を教わっていたこと。そのせいで小さい頃から傷が多かったがそれでも楽しかったこと。お母様が作ってくれたシチューはこの世で1番の絶品だということ。
友人のナターシャは魔法の天才だけど、変人でよく変な魔法を作っていたこと。ナターシャが実験の事故で町中に服が溶ける薬が散布された時は大変だったこと
弟が大道芸人の道でできた嫁を作ったことを報告しに来た時お父さんは嬉しさのあまり泣いてたこと。
そうして会話していくうちに日が傾いてきた。
そろそろ帰るよ。
もうですか?
ああ、こっちはもう夜でね。それじゃまた明日。
少し時間を空けて彼女は書き始める。何度も消したり書いたりをして、結局は口を開き
さようなら、また明日。
彼女は最高の笑顔でそういった気がする
朝日が昇る直前の頃だ。少し早すぎるかもしれないが、たまにはそんな日もいいだろう。あぜ道を歩きながら道を歩く。次は彼女と何を話そうか。今度はこちらの話でもするか。そう考えていると時間は早く動くもので彼女の居る木が見えてきた。遠目ではあるが小麦色のその髪がいい目印となっていた。
そして本を残しなんの面影もなく◼️◼️は消えていた。
本にはたった一言
ごめんなさい
私はその日は何もしなかった。
思い出すことがある。
結局◼️◼️はどうなったのだろうか。
本当は世界と共に◼️に塗りつぶされたのではないか。
◼️◼️とは誰なのか。
この本の事もよくわかない。文字も読めないし、どうしてこんなにも愛おしいのだろうか。
甘い思い出な気がする。休憩の途中誰かに話しかけていた。それは容易いことではなかったけど、私の人生の中で1位2位を争う衝撃的なことで、たのしいこのはずだ。
だったらなぜこんなにも、後味がビターだと感じてしまうのだろうか。
私は思い出せずにいた。
「思い出って厄介なもんだねぇ」
風が靡く
「あら?救世主様はそんなに私の事が恋しかったかしら?」
[完]