色とりどりのピ◯ミンがプリントされたトートバッグの底にセピア色の染みが滲んでいた。何年も前に閉まったままになっていた仕事用のバッグ。パッチワーク柄の弁当袋に母が色々なおかずを詰めてくれていたのが懐かしい。でも今のボクは米を食べることが殆どないから苦しくて悲しいな。色とりどりのお弁当を見ると脳がウッってなって拒絶反応を起こしちゃう。カラフルな世界に戻りたいなと思うけど、戻れないなら今の自分を受け入れるしかない。セピア色の世界で新しい楽しみを探して生きてる。
題『色とりどり』
随分と高い位置にある入札口に千円を挿れる。丸い座椅子をクルクルと回して座高を調整する。凍える風を遮るのは足元まで届いていない目隠し用の薄いカーテンだけだ。これだから冬は嫌なんだ。暖かなコートを脱ぎ、真正面を見つめる。機械音声の指示に従い3.2.1.パシャ。出来上がった証明写真は運転免許証よりは補正をかけてくれているような出来栄えだった。スティック糊は放置しすぎて消しゴムと変わらない 。
"やるべき事が全部終わったら温泉に行きたいな"
そう思って車の後部座席には温泉セットが置いてある。まあ、結局いけなかったけど。
題『雪』
[お題と関係ないメモ]
雪が積雪になると「ここ、テストに出るからな」と言わんばかりに注意事項が増える。
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・サイドブレーキは坂道でないなら使用しない
(凍りついて壊れてしまう)
・ワイパーは上げておく
(窓に張りつくから)
・車に積み上げられた雪は落としておく
(ブレーキをかけた際に全面の窓ガラスを塞ぐように落ちてくるから)
・ブレーキは細かく踏む
(雪では急に止まれない)
・タイヤが雪に埋まったらアクセルを蒸さない
(余計出られなくなる)
・雪おろし用のスコップを常備しておく
・ライトは早めに点灯する
・歩く際は歩幅を狭くする
・雪かきは底まで綺麗にしない
(地面が凍るから)
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君と一緒に貨車に乗り、売れ残りのワゴンとして店頭に並ぶ。胸には昇進を讃えるような半額シールが勲章のように貼られている。
「ボクが思うに、キミはもっと価値があると思うよ。誰かの決めた半額シールに流されて自分を安売りするべきじゃないと思う。消費期限が切れたって味に深みが増してるかもしれないだろ?気が向いたらさ、常識なんて捨てちゃえよ。後になって困ったな、とか怒られるだろうな、なんて知ったことか。それよりも動いた自分自身を褒めようよ。誰かに怒られたって「信念を貫いた」だけだって心の中で考えればいいんだ。文句を言う奴は、結局のところ文句だけ言って褒めることはないんだから」
そう言って、半額シールが貼られた彼は誰かのカートに乗せられていった。
題『君と一緒に』
いつ連絡がくるか分からないというのは想像以上にストレスだ。ずっと赤信号での停車を余儀なくされている。既読スルーされているのかな?相手の都合も考えると催促はしたくない。冬晴れの中、緊張で喉ばかり渇き、何もしたくない。景色は遠くまで見えるけど、未来には雲がかかっている。
何の音沙汰もない。月曜日には連絡がくると思ってペンとメモ紙を傍に置き心臓をバクつかせながらソワソワしていた。何度もメッセージと通話履歴を往復する。こちらから動いてダブルブッキングになるのは避けたい。マルチタスクが出来るほど器用ではない為、ずっと携帯を意識していた。そして何もせずに今日が終わった。結局連絡はなかった。
冬晴れの景色は陽光を反射してキラキラと輝いていたけど、心のモヤモヤは晴れなかった。
仏壇にお供えされた霞草が少し黄ばんでいた。
題『冬晴れ』
幸せとは、"不純物のない吐息が自然と溢れ、心地よい満足感が胸を満たしている状態"
腹が満たされて穏やかに眠れること
暖かな大地が臀部を包み込んでくれること
私がいなくなった後、涙を流してくれる人がいること
誰にも依存しない
自分の欲求から始まって自分の納得で終わる
自分が何者かなんて関係ない
ただ目の前に蝶々がひらひらと飛んでいる
それを穏やかな心境で眺めることのできる"今"がある
題『幸せとは』