こんな夢を見たんだ。
「チャイムが鳴ったらピシッと動かないと駄目だぞ」チャイムが鳴る瞬間まで横になっていた社長から注意を受ける(言った当人は軽口のつもりかもしれないし何気ない日常会話だと思っているかもしれない。いずれにせよ、言った内容を既に覚えてはいないだろう)だが言われた方は胸にグサリと釘を打ち込まれたと受け止めた。
"そっちだってチャイムが鳴ってから動いているじゃないか"
(今までの信頼度は急速に下落して、少し空気にピリつきを感じる人物へとランクダウンする。そうなると巻き返しは相当難しい。あらゆる些細な事にも敏感に反応するからだ)
その後の仕事は同じセリフがぐるぐると頭を巡り、休憩している所を見られたら怠けているのではないかと思い、気の抜けない緊迫感を迫られた。テキパキと身体を動かし過ぎて早めに終わりすぎてしまった。そのせいで余計な仕事を増やされ、ようやく帰ろうとする時になって追加の仕事を教えられた。
ハッキリ言わせてもらう。帰り支度の手荷物を持っている入社したばかりの人が、呼び止められて新しい仕事を教えられる事がどれだけ嫌な事なのか、何故想像出来ない?
"それが仕事というものだ"という事もできるが相手の現在の精神状況を理解しようとしないのは頭が悪いといえる。
それでも必死にしがみついている。
序盤さえ越えれば面白くなるスルメゲーかもしれないし、そもそもログアウトする事はできない。
チュートリアルで嫌な気分になるゲームは即日返品される。そう…これはあくまでゲームの話だ。
そんなゲームをしている夢を見たんだ。
題『こんな夢を見た』
遥か先の未来、厳しい検査はあるが時空旅行が可能となった。人気なのは乗客員が幽霊のような存在として江戸時代や戦国時代の歴史的瞬間を直接見ることができるツアーだ。勿論、過去に干渉する事は出来ないが修学旅行先としても絶大な人気がある。
タイムマシーンは夢の機械ではなく、壮大なアトラクションとなっていた。
題『タイムマシーン』
湯船が熱湯のように熱く感じるほど昨日は冷え込んだ。体内の免疫細胞達は孤軍奮闘してくれた。湯冷めしないで済んだ身体は記録的な大寒波を持ち堪え、兵糧が底をつく前に戦線離脱することが出来た。何だかあっという間に終わったなといった感慨を抱く夜だった。記憶のカレンダーに載るような事は何もない特別な夜だった。まだ何も終わっていないが昨日は終わったんだ。それなら今日も無事に終われる筈だと願っている。特別を日常に変えていく。
題『特別な夜』
海の底に辿り着いたと思えるなら、ボクはまだ全てをすり抜ける幽霊ではないのだろう。それならいつか揺れる海藻にしがみつき、海底探索する潜水艦が目の前を通り、海底火山の噴出口がエレベーターのようにボクという存在を運ぶこともあるはずだ。浦島太郎のように長い年月を過ごした気もするし一瞬の出来事だった気もする。世界はどうなっているだろうか?海の底でコールドスリープされていた意識で考える。バラバラな思考の羅列を磁石のように結びつける。そうだ、今日は旅立ちの日なんだ。楽な気持ちで過ごせるだろうか?真面目な性格が全力で頑張る姿を見せたがっている。あまり無理をするな。自身に言い聞かせる。今日はまだ始まってすらいない。
題『海の底』
今はまだ誰にも会いたくない。もっと立派になった姿を天国のお婆ちゃんに見せてあげたいな。一緒にいた頃は、あまり優しくしてあげることが出来なかった。最後の日まで怒ってしまった事を、ずっと後悔している。もっと会話を交わして、手を繋いで寄り添ってあげたかった。今更そんな風に考えるなんて都合が良すぎると思う。過去の思い出を美化し過ぎているのかも。それでも、もう一度会って「お婆ちゃん、あの時はずっと怒っててごめんね」って伝えたい。
題『君に会いたくて』