REINA

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7/10/2024, 12:42:41 PM

目が覚めると



目が覚めると、彼の腕の中にいた。

(そうか……、昨日…)

と朧気な記憶を辿る。
身体が思うように動かない。

貫かれた鈍い痛みが走る。
でも決して不快ではないその痛み。

(好きな人と結ばれたんだ…)

彼の匂いや温もりに安心感を覚える。
耳を澄ませると彼の鼓動が聴こえた。

やはり夢ではない。
もう少しだけ、まどろんでいたい。
こんな幸せがあったんだと実感したい。

彼の背中に回した腕に少しだけ力を入れる。
彼が目を覚ましたら「おはよう」と言おう。
特別な挨拶だ。
そうして私は再び、眠りについた。

7/9/2024, 12:03:20 PM

私の当たり前


私の当たり前。
それは好きな人を支えること。
好きな人の夢を一緒に叶えること。

お医者さんを目指していた彼。
必然的に私の夢は看護師になった。
そして、彼と一緒の病院で働くの。

そしてそれは叶った。

次は彼のお嫁さんになること。
彼は私のお婿さんになること。

二人の夢は一緒。
私の当たり前。
そして、あなたの当たり前。

7/8/2024, 12:32:50 PM

街の明かり



実家は田舎だから夜になると人通りが少なく、また民家と民家の間にも距離があるため、明かりはまばらだ。
そんな光景も悪くは無かったが、都会に出てきて何年かは実家には帰っていない。
電話は時折りするだけだ。

都会の街中は夜でも煌々としている。
むしろ、昼間の時より一際輝いているが、酔っ払いのサラリーマンの愚痴や、ホストクラブの勧誘の声など騒々しい。

眠らない街、東京とはよく言ったものだ。
初めて上京してきた時には、そのまばゆい光に圧倒された。

だが、孤独だ。
人は大勢いるというのに、どこまで行っても孤独を感じる。

終電を逃した。
走れば間に合うくらいだったが、走るのを拒否した。
何だか、ゆっくりしたい気分だった。

明日は土曜だ。
レイトショーもあれば、ネカフェもある。
一人居酒屋だって構わない。

信号や車のライト、店のネオンなどが段々と滲んで、水彩画のように写し出した。

(泣いているのか?)

自分でも不思議だった。
頬に伝わる涙は、暑さで少し生温かい。

祝日の月曜も入れれば三連休だ。
久しぶりに実家に帰ってみようと思った。

田舎の素朴な街の明かりを久しぶりに見たい。

7/6/2024, 12:39:25 PM

友だちの思い出



幼い頃から友だちの女の子とキスをした。
友だちとして最後の思い出だ。

驚いた彼女は僕を突き飛ばした。
それはそうだろう。
彼女は僕のことを『友だち』として。
僕は彼女のことを『女の子』として見ていたのだから。


と若かりし頃の苦い思い出が蘇った。
中途入社してくる新人を紹介されたのは、ついさっきだ。
何となく面影があるなとは思っていたが、
名前を聞くまで確信は持てなかった。

綺麗になったなと思った。
また恋をしてしまいそうだ。

僕の顔をしげしげと眺める彼女を見て、にこりと笑う。
慌てる彼女は、僕との思い出を記憶しているのだろうか。

忘れていたとしても、それは『友だち』としての最後の思い出。
これからは『恋人』としての最初の思い出に塗り替えていけばいい。

7/5/2024, 11:58:45 AM

星空



東京から実家へと戻ってきた。
以前から帰省するたびに実家の居心地の良さは分かっていたが、東京じゃないと叶えられない夢があって、必死に頑張った。

頑張って、頑張って、頑張って、
会社からの叱責や、時間に追われ余裕のなさがあっても、それでも夢に向かって頑張れた。

でもある時、ぷつんと糸が切れてしまったかのように、どうでも良くなってしまった。
そして実家に帰ろうと決めたのだ。

私の実家は田舎だ。
だから夜になると、東京より少し涼しくて、そして漆黒の夜が訪れる。

でもその分、星の瞬きがより一層に際立っていた。
私もあんな風にキラキラと輝きたかったのに……と感傷にも浸る感じだけど、でも重積から解き放たれた気分なので、例え輝けなくても問題は無かった。

本当に気分がいい。
星空がこれからも見守ってくれる、そんな気がした。

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