友だちの思い出
幼い頃から友だちの女の子とキスをした。
友だちとして最後の思い出だ。
驚いた彼女は僕を突き飛ばした。
それはそうだろう。
彼女は僕のことを『友だち』として。
僕は彼女のことを『女の子』として見ていたのだから。
と若かりし頃の苦い思い出が蘇った。
中途入社してくる新人を紹介されたのは、ついさっきだ。
何となく面影があるなとは思っていたが、
名前を聞くまで確信は持てなかった。
綺麗になったなと思った。
また恋をしてしまいそうだ。
僕の顔をしげしげと眺める彼女を見て、にこりと笑う。
慌てる彼女は、僕との思い出を記憶しているのだろうか。
忘れていたとしても、それは『友だち』としての最後の思い出。
これからは『恋人』としての最初の思い出に塗り替えていけばいい。
7/6/2024, 12:39:25 PM