REINA

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7/4/2024, 1:43:16 PM

神様だけが知っている



誰にも明かしたことがないあの人への気持ち。

友達には『好きな人なんていないよ』と答えているけれど、本当は恋の話をしてみたい。

でもダメなんだ。
だって、私は『先生』を好きになっちゃったから。
婚約指輪がはめられているのを見た時、授業以外の顔を見せている先生の表情があるんだなと思った。
そう思ったら何だか胸が苦しくなった。

でも彼女さんからすれば、授業をしている先生の顔は知らないだよなぁと思えば、それはそれで少し救われた。

放課後には質問をしに行く。
何かにつけて会いたい口実を。

どうせ私のことなんて子供としか見てないと思うから、だから無邪気に触れてみる。


ある日、そんなふうにいつものように絡んでいたら、思わず倒れそうになってしまった。
床に頭をぶつけると覚悟していたけれど、激しい痛みは無かった。
先生がどうやら身を挺して庇ってくれたみたい。

それはいささか、私のことを抱きしめているようにも見えたかもしれない。
私は怖がる振りをしてぎゅと、先生の胸に抱き付いた。
強張った男の人の胸だと感じた。

若そうに見えるけれど、やっぱり先生は男性だ。

「いい加減重いぞ」

なんて冗談混じりに先生は言ったけれど、少しだけ耳を赤くしたのを見逃さない。

私は先生の胸に顔を埋めたかと思えば、急にパッと顔を上げ、勢いよくキスをした。

一方的やキスだ。
それも何ともぎこちない、稚拙な、雑なキスだったかもしれない。
でも、一生懸命にしたキスだ。

目を丸くしている。
状況を理解したのか、私の身体を引き剥がした。

唇を手で抑えながら、顔が赤くなったり、青くなったりする様は、少しばかりおかしかった。

『大丈夫です。先生と私との秘密ですね』

窓から見える教会が17時の鐘の音を鳴らしていた。
先生と私と神様だけが知っている。
今日の秘め事は。

7/3/2024, 11:56:26 AM

この道の先に


この道の先に叶えたい夢がある。
そこに向かって歩き出す。
ゆっくりだけど歩き出す。

色んな人たちが、私を追い越して行くかもしれない。
焦って取り乱すこともあるかもしれない。
もしかしたら立ち止まることだってあるかもしれない。

それでも、それでも歩みは止めない。
この道がどんな道に枝分かれしようとも、
私は私の信じた道を歩いて行く。

後ろを振り向くこともあるかもしれないけれど、
自分で限界は決めない。

この道の先に叶える夢がある。

7/2/2024, 12:09:50 PM

日差し



ほんのりとした暖かさ。
瞳は閉じているけれど、明るさを感じた。

うっすらと目を開けると、カーテンの隙間から陽が差し込んでいた。
思わず目を瞑る。
しかし柔らかな日差しは、頭の覚醒を促した。

隣に手を伸ばせば、彼女の気配は無い。
そう言えば朝から会議だと言っていた。

無理をさせるつもりでは無かったが、理性を抑えるつもりはなく。
昨夜のよがる声が脳内で再生される。

ふとサイドテーブルを見ると、走り書きのメモが見えた。

『簡単だけど…』

と書かれたメモを見て、朝食を用意してくれたことを察した。
数分前までいたであろう、彼女の姿がキッチンに映る。

「オレの方が寝入ってたのかよ…」

と少し髪の毛をかきあげながら、ベッドから立ち上がり、カーテンを開く。

この日差しは毒だなと欠伸をしながら、再び彼女の匂いのするベッドへ、身を深く沈めた。

7/1/2024, 1:11:44 PM

窓越しに見えるのは



授業と授業の合間のほんのわずかな休憩時間。
私は自分のいるEクラスから少し離れた、Bクラスへと向かう。

目当てのクラスが近づくたびにドキドキする。
今日はなんて声をかけよう。
ノートを貸して欲しいとかかな?
分からないところがあって…って質問するのもいいよね。

そんなことを考えているうちに、Bクラスに辿り着く。
廊下側の近い席に、彼はいた。

扉のすぐ近くにいた女子たちに声をかけて呼び出してもらう。
窓越しに見えるのは、彼が振り向いてニコッと笑いかけてくれるその姿。

嬉しくてひらひらと軽く手を振る。
ああ、私はひどく彼が好きだ。

彼が扉に向かって歩き出す。
私の目の前までもうすぐ……

6/30/2024, 1:19:33 PM

赤い糸



私には昔から不思議な力がある。
その人の『運命の赤い糸』が視えるのだ。

『運命の赤い糸』は将来、その人が誰と結ばれるのか分かる糸だ。
ぐっと瞳に力を入れると視えるようになるけれど、普段は見ないようにしている。

誰と誰が結ばれるのかが最初分かった時は、恋のキューピッド役なんていうのをやっていて、それはとても良いことだと思っていた。

自分の赤い糸は見えない。
どんなに凝らしても視えない。

だから、自分の好きな人が別な人と繋がっていると、とても胸が痛んだ。

何回も『そうか…私じゃないんだ…』って思った。
それから、他人の恋に対しても応援することができなくなってしまった。

神様はなんでこんな力をくれたんだろうか?
他の人には無い力。
何か役立てることがあるはずなんじゃないだろうか?

そんなふうに葛藤もした。
それから年齢=彼氏いない歴になってしまい、もう30代も目前だ。
正直、処女であることに焦りを感じる。
とは言いつつも、恋愛をどこか遠いどこかの出来事のようにしか思えなかった。


そんなある時、中途入社してきた男性がいた。
その人は少し強面の体格がガッシリしている人で、
少し凄みという目力がある人だった。

何となく苦手だと思ったけれど、その人の『運命の赤い糸』がいきなり視えた。
いつもなら、瞳を凝らせないと視えないはずなのに、今はそんなことをしなくても楽に視えていた。

誰と繋がっているんだろ?と少し好奇心が勝った。
たどっていくと、段々と私の近くにいる人に近づいているようだった。

というより、自分の視界の端に赤い色が視えた。
よく見れば自分の小指に繋がっていたのだ。

「えっ?」

あまりの出来事に素っ頓狂な声が出て、周囲の注目を浴びてしまった。
だがそんなことよりも、ちょっと苦手なあの人と私が…!?という驚きもそうなのだが、自分の赤い糸が初めて視えたことに感動した。

(私にもあるんだ…。運命の人…。)

これから、あの人とどう結ばれるのか、少し気恥ずかしい気持ちながらも、これから起こる様々なことに胸の高鳴りを覚えた。




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