入道雲
空の向こうに入道雲が出ている。
綿飴のようにもくもくしていて、昔行った縁日のことを思い出した。
その縁日でクラスメイトの佐々木くんに会った。
『お!奇遇だね!』
ニカっと笑った顔が佐々木くんらしい陽気な笑顔だ。
一緒にどう?と言われて、誘われたことにドキドキしながらも、返事は思考が回るよりも早く、頭は頷いていた。
佐々木くんは私の歩調に合わせて歩いてくれてるみたいで、そういうさり気ない気遣いができる優しいところも大好きだと実感した。
2人で焼きそばやたこ焼き、チョコバナナ、金魚すくいなど思いっきり楽しめた。
最後に佐々木くんは綿飴を買ってくれた。
流行りの子供用のアニメで、高校生の私からすれば少し持っているのが恥ずかしいけれど、嬉しかった。
綿飴はとてもとても甘かった。
入道雲は夏の季節しか現れないらしい。
佐々木くんとの縁日の思い出は、夏になると必ず思い出す。
私の初恋の大切な思い出だ。
夏
海が大好きな私は、特に夏の季節が好きだ。
海の青と空の青がどこまでも続いているその先を見ていると、私の夢も無限に続いているかのようで、太陽が燦々と輝やけば、私を祝福してくれるかのように感じるからだ。
明日は仲のいい友達数人と海で遊ぶ。
その中には私の好きな人もいる。
告白しようと決めた。
もうこの気持ちを心の奥に閉まっておくことが苦しくなってしまった。
だから明日、伝える。
水着だって新調した。
ダイエットもした。
もし万が一、振られたとしたら…?と考えることもあるけれど、それはそれで悲しいけれど、勇気を出した自分を褒めてあげたいと思う。
夏は開放感を感じる。
私の気持ちも曝け出して、素直に伝える。
この夏を最高の思い出にしてみせる。
ここではないどこか
ここではないどこか遠くへ行きたい。
貴方と共に。
君と最後に会った日
『好き』
そう告白されて当時の俺は恋愛にはさして興味がなく、それでも照れ隠しでぶっきらぼうに断った。
『…ま、まぁ、そう…だよね…』
と何とか笑顔を作っていたが、目には涙を溜めていた。
その時、こいつの泣き顔はこんなにも綺麗なのかと思った。
それがお前と最後に会った日の思い出だ。
繊細な花
彼女を初めて会った時の第一印象。
それは勝ち気な、でも華があるお嬢様だ。
綺麗なブロンドの髪の毛は腰まであり、よく手入れされている。
黙っていれば品のあるご令嬢様という感じだが、僕らのような庶民の人たちの輪の中で、段々と素が出てきたのか、表情がコロコロ変わるのが面白かった。
それでも親元から離れ、知らない土地に引っ越してきたお嬢様からすれば、心細いところもあったのだろう。
誰もいなくなった教室で泣いているところを見た。
ポロポロと涙が溢れ出る彼女を見て、初めて人が泣くのをこんなに綺麗だと思ってしまった。
慰めるべきなんだろうか?
でも泣き顔を見られるのはあまりいいものじゃないだろうと思って、静かに教室から離れた。
彼女は華やかで気の強い人かと思っていたが、
本当は繊細な人なのかもしれない。
僕だけの秘密にしておこう。
その繊細な花を遠くから、これからも見守ろうと誓いながら。