朝日の温もり
現実と夢との狭間を揺蕩う時間が好きだ。
それも一人寝の時ではなく、隣に感じる温もりがある日は特に。
カーテンの隙間から挿す朝日が眩い。
君の瞳が金色に染まる。
こんな日はもう少しだけ、
柔らかな光と共に君の温もりを感じていたい。
岐路
人生は様々な選択肢を選んでいく。
そのことの繰り返しだ。
色々な分かれ道があって、あの時こうしていれば、
ああしていれば、なんていうことは散々だ。
もちろん選んできた道を後悔はしていないが
それでも『もし…』ということを考えてしまう。
やり直しはない人生。
漫画やアニメのようにループするような展開があれば、
あの日あの時あの場所へと戻りたい。
そう願ってしまいそうになる。
この夜空を彼女も見上げているだろうか。
世界の終わりに君と
勇者が魔王を討伐してハッピーエンドというのが、冒険譚の王道だ。
でも、この世界ではそうはならなかったらしい。
勇者は死んだ。
今日で世界が終わる。
そう魔王が宣告してきた。
もうすぐ終わるというのに、何だか僕は落ち着いていた。
多分、死ぬのが自分だけではないというところが、落ち着かせていたのかもしれない。
「ただいま」
視線の先にはベッドに横たわっている僕の恋人だ。
「おかえりなさい」
といつもよりは少し元気な声が返ってくる。
病気の彼女は遠出はできない。
だから昼間は庭でピクニックをした。
彼女の笑顔が久しぶりに見れた感じがする。
「夕日が綺麗だよ」
そう言って窓を開けてから彼女のベッドに腰をかける。
明日はもう来ない。
この素晴らしい夕日も今日で見納めだ。
そう考えると、日々をもう少しどう生きようかと、真剣に考えるべきだったかもしれないが、今更遅い。
それに、僕のやるべきことは、明日世界が滅びようが、そうで無かろうが関係ない。
彼女のそばにいること、それだけだ。
今夜は彼女を抱きしめよう。
世界の終わりに君と僕の心は一つになる。
最悪
出会いは最悪だった。
今から思えばお互い子供だったんだなと。
高校生になって、ようやくそいつに女性というものを意識した。
他に近寄ってくる女は、オレの見た目目当てだったと思う。
まぁ、あいつも最初はオレのことを見た目で見ていたこともあるかもしれない。
ただ、あいつと口喧嘩したり、どうでもいいことで笑ったりしている時が1番楽しかった。
告白したのはオレからだった。
鳩が豆鉄砲くらったような、あいつの顔は今でも笑えてくる。
オレが告白するなんて思いもよらなかったのだろう。
まぁ、オレ自身もそう思ってたよ。
でも、自然と口から出たんだ。
本当に自然とな。
出会いは最悪だったけど、今は最高の恋人だ。
狭い部屋
名家の令嬢として生まれた私は、今まで何不自由ない生活を送っていた。
部屋も十二分の広さがあり、それが当たり前だと思っていた。
中学生の頃、初めて片想いをした。
自分とは真逆の世界にいる子だった。
だからこそ、好きになったのかもしれない。
お嬢様と呼ばれて、ちやほやされていた私を、
唯一普通の女子としてみた男の子。
ひょんなことから、その子のお家に招かれた。
彼の部屋はとても狭かった。
普通の家ではそれが当たり前だったと知ったのは、随分後のことだった。
けれど部屋の狭さよりも、彼の端正な顔が、
匂いが、その瞳が、いつもより近いことにドキドキした。
ちょっとでも手を伸ばせば、届いてしまうその腕。
捲られたシャツから覗く強張った筋肉が、
男の子だということを再認識させられた。
お茶でも持ってくると言って下に降りていった。
私だけがいる狭い部屋だけれども、
彼が隣にいるような気がして、
何だか落ち着かなかった。