あなたのつまらないことでも
私がやっていると、嫌な顔を一つもせず、付き合ってくれる
あなたが嫌いなことでも
私が嫌がると代わりにやってくれる
あなたが苦しいことでも
私も苦しいとその苦しみから守ってくれる
あなたにばかり、無理をさせてる
だから
だから、私も一緒に抱えたい
一人で抱えることはできない、ごめんなさい
でも、二人で抱えることは、あなたを支えることは、できる
それならいくらでもやる
私が死んでも、あなたは死なせない
それが私でしょう?
「ありがとう」?
何を今更、そんなのこっちのセリフよ
これから私も抱えるから
あなたも辛かったら、私に寄りかかっていいのよ
て言うより、寄りかかりなさい
命令よ
私はあなたの椅子になるし、ベッドになるし、サンドバッグになる
そのくらいの覚悟は持ってるのよ
そうじゃなきゃ、妻なんて、やってらんないわよ
愛してるわ
あなたが眠ってから、どのくらい経っただろう
このままあなたがいなくなってしまうんじゃないかって、何度考えたことか
怖かった、悲しかった、寂しかった
そのくらい、あなたが大切になってた
この病院に入院して、話し相手もいなくて、毎日が退屈だった私に、いろんなことを教えてくれたあなた
警戒心むき出しの私に、ゆっくり、私が怖がらないように距離を詰めてくれて、優しく話しかけてくれたあなた
どんな病気なのかは教えてくれなかったけど、それ以外のことは全て教えてくれた
外の世界のこと、社会情勢、天気とか、小説とか、あなたのこととか
歳の差は10歳もあったけど、私はあなたに恋をした
私は15歳、あなたは25歳、誕生日はあなたが一日遅い
小さい頃から入院してた私は、生まれて初めて友達ができて、その人に恋をした
そんな私の気持ちに答えてくれたあなたは、指輪も買ってくれて、婚約といった
とても嬉しくて、言葉にできない喜びを覚えた
その1ヶ月後、あなたは倒れて、その時から三年が経った
私は19歳、もう結婚もできるし、長い入院からも抜け出した
あなたは29歳、あなたがここに来てから五年が経った、婚約は今年の約束
「起きて…」
ほとんど聞こえないような、掠れた声であなたの額に口付けをする
ぎゅっと、手を優しく包み込むと、あなたの細くなった手を感じて、涙が流れる
みてられなくなって、俯くと、誰かが私の頬を撫でた
ぱっと顔を上げると
「ただいま、ごめんな、心配かけて」
あなたの優しい微笑み
病室で一人
この白い空間には、私以外、誰もいない
泣きそうになるような静寂に、一定の間隔で電子音が響く
温度も、湿度も、明るさも、全てが自分にとってちょうどよく、それがなんだか無性に寂しく感じる
窓の外に広がる、夏の青い空は、私のことを目にも止めず、そこに広がっている
深く、碧い木の葉は、蝉の合唱に合わせて、わさわさと踊っている
そんな綺麗な景色を、ずうっとみている
ーーーそんな、想像のお話
騒がしいのが嫌だ
同調しなきゃいけないのも嫌だ
自分が押し潰されるのも嫌だ
笑わなきゃいけないのが嫌いだ
責任を負わされるのも嫌だ
全部、複数人でいると発生することだ
だから僕は、一人でいたい
なのに、一人のことを「ぼっち」とか、「孤独」とか、世の中であまり良いイメージを持たれない言葉で表してくる
そのせいで、群れてる奴らに馬鹿にされる
クソが
なんか小説っぽくなって、かなり長い作品となっています。時間がある人のみどうぞ↓
神様が舞い降りてきて、こう言った
「君、ちょっと死んで」
「…は?」
本当に、唐突だった
いつものように、薄い敷布団に寝転がり、寝ようと思ったら、急に天井が光って、謎のお爺さんが現れて、そしたら「死ね」だなんて
誰がこんなこと予想できただろう
「いや誰」
「ん?あぁ、わしは神じゃ」
頭がおかしくなっちまったかもしれない
幻覚か?あぁ、幻覚か、俺は幻覚が見えてるんだ
「ぬしは至って正常じゃよ、わしが見えるのも、この現象が起こっていることも、全て現実じゃ」
全く頭が追いつかなかったが、残念ながらこの爺さんも、「死ね」と言われたことも事実らしい
「それで、本題なんじゃが、結論から言うと、ぬしに死んで欲しいのじゃ」
「あ、嫌です」
それはシンプルに嫌だ
俺にはまだやりたいことが山ほどあるし、夢も叶えられてない
ここで死ぬなんてごめんだ
「ってか、なんで俺が死ななきゃなの?」
それはシンプルに気になった
別に人を殺したこともしたことないし、盗みを犯したわけでもない
というより、犯罪自体を犯したことはない
なんなら、人を助けたり、人の手伝いをしたり、環境保全のために運動を起こしたり、社会的に見ていいことしかやってきていないはずなのだ
「いやな?ぬしが悪いことをしていないのはそうなのじゃ。それは素晴らしいことなんじゃよ。なんじゃが…」
「なんだよ、だったら死ななくてもいいじゃねぇかよ?」
神と名乗る爺さんは、「いや、その…」とゴニョゴニョ言った後に言った
「ぬしが、善良すぎるんじゃよ」
「…え?」
初めて聞いた。善良すぎるから死ね。どういうことなのか理解できない
「いやな?そのな?ぬしが善良で、世界もかなり良い方に傾いてきているのじゃ。このままいけば、世界で問題になっていることも解決できるじゃろう」
いいことやんけ、何が悪いのか
「それはいいことなんじゃ。しかし、問題は、ぬしが一人でそれをやっていることなんじゃよ」
俺が一人でやることが悪い?何を言っているのか。誰かが動いていることを待っていたら、何も変わらないというのに
「ぬしが一人でやってしまい、このまま行くと、ぬしは神のように崇められて、わしら本当の神が崇められなくなってしまうのじゃ。そうなると、わしらの力が弱まってしまい、非常に都合が悪い。だから、ぬしには死んで欲しいのじゃよ」
まじでこいつはなんなんだ。自分の都合で人を殺すとか、物事の良し悪しの区別がつかねぇのか?神なのに?
「ということで、死んでくれ」
「いやいやいや!まてまてまてまて!」
早いなこいつ!なんの躊躇もなく殺気をぶつけてきたぞ!?ほんとに神かよ!
「なんであんたらの都合で俺が死ななきゃいけないんだよ!おかしいだろ!理不尽すぎる!」
「むぅ、そんな事言ってもな、わしらにはわしらの都合があるのじゃ。仕方なかろう」
「仕方ない訳ないだろ!だったらこっちにもこっちの都合があるってんだ!困るわ!」
「じゃあ何がしたいんじゃ、最後になんでも叶えてやるぞい」
「そういう問題じゃねぇ!?」
こいつまじで頭おかしいんじゃねぇの!?そういう問題じゃねぇだろ!自分の力で何年もかけてやっていくのが夢なのにおかしいだろ!
「じゃあ仕方ない、死んでくれ」
指先からなんか白い光が飛んできて、俺に迫る
ギリギリで交わしたが、肩に当たってしまった
かなり高温のレーザーだったらしく、痛みよりも最初に、火傷した時に近い感覚が頭に突き刺さった
「グッ…ガァァァ!」
痛い、熱い、痛い、痛い、
なんだよこれ、俺は、こんなところで死ぬのか?夢も叶えられず、ただただ善良な人間なだけで、死んでくのか?
「おっと、外してしまった…わしも身体がなまってしまったものよのう…」
そう言いながら、もう一度レーザーを打つ
俺は痛みで意識が飛びそうだったが、体を無理やり捻らせてなんとか避けた
「…面倒臭いやつじゃ、さっさと死なぬか」
あぁ、神には、慈悲なんてない
神にとって人間は、吹けば消えてしまうような、弱い蝋燭の火と一緒で、それを消すことになんの抵抗もない。なんなら、火事を防ぐために後処理をすることが当たり前なのだと、なぜか理解した
「さっさと死んでしまえ、人間よ」
俺は神に何もできないことが悔しくて、悲しくて、ただただ自分が殺されることに抗えないことが恥ずかしくて、悲しくて
神が、とても憎く感じた
そう思った瞬間、考えなくとも、体は飛び出していた
神の横を通り過ぎて、リビングのすぐそこにあるキッチンへ向かう
今日料理に使った包丁を取り、すぐにUターン
神は予想外の行動に出た俺に驚いたが、すぐにレーザーを発射しようと構える
それを確認した俺は、すぐそこに置いてあった食器カゴをぶん投げる
散乱した食器や食器カゴは、神の視界を遮り、レーザーの発射を遅らせる
その一瞬で、俺は神の懐に潜り込み、手に持った包丁で神の首を横に切り裂き、そしてそのまま、鳩尾に突き刺す
自分でも驚きだった。こんな動きができたなんて、自分でも怖い。しかし、やらなければならなかった
「…見事な動きだ、人間」
「しかし、人間ごときで、わしを殺すなど、できることもないのじゃ」
そんなことは、分かっていた
神と人間は次元が違う。人間が神に挑むことは、ミジンコが太陽に挑むことと同義であるのだ。勝てるはずもない
でも、何かしてやりたかった
そのまま神を押し倒して、馬乗りになり、ぶん殴った
ぶん殴って、ぶん殴って、自分の全てを込めて殴り続けた
殴る感触はあるのに、傷がついていかない。理不尽だよ、ほんとに
「…もう満足か?」
そう言って、右手からレーザーを出し、俺の頭を貫いた
その日をもって、近い未来「聖人」「神」と崇められるはずであった善良であるとされる人間が、善良であるとされる神によって、殺された
果たしてどちらが正しいのか。それは誰にもわからない。なぜなら、人間も、神も、どちらも自らが正しいと思ってしまっているからである。