綺麗にされた銀色の檻
それは僕を閉じ込める
出して出して、ここから出して。
必死に叫ぶけれど、外にいる大きな生き物はよくわからない言葉を言いながら不気味な顔をする
しばらくして、足で小さなものを持って近づいてきて、銀の檻の一箇所を開ける
逃げられる、と思ったが、その謎のものを檻の中に置いてすぐに閉じてしまった。
なんだあれは、茶色いあれは。
怖い。知らないものばかり。
お父さん、お母さん、どこなの?怖いよ。
………それから一年後
ここでの暮らしは快適だ。
ご飯は出るし、体のケアはしてくれるし、死にそうなほど寒い日はないし、暑い日もない。とても快適な暮らしだ。
しかし、「窓」という透明な壁の向こうに広がる外の世界に、今でも行きたいと感じる。
友情…
これは本当に、友情なのだろうか
最近よく、そう思う
友情とは違った何か
多分、もう答えはわかっている
ただ、それに気づいたら、変わってしまうと理解してるから
気づかないようにしているだけ
もしもタイムマシンがあったら、僕はいつに戻ろうか
多分、未来に行くことはない
やり直したい過去に戻るだろう
後悔なんてたくさんある
あの時ああしていれば、あの時こうしていれば
今でも思う
でも、その中で1番の後悔は…
なんてことを考えても、時間は巻き戻らない
だから、後悔なんてもう、したくない
あの日、何をしていただろう
もう思い出せない
仕方がない、もう10年も前のことだ、10年も経てば年寄りでも若者でも忘れてしまう
しかし、忘れたことには、必ず理由がある
多分、あの日の記憶は、僕にとってはもう「過去」であって、決して、「思い出」でも「想い出」でもない
「過去」になってしまったら、当時どれだけ強い思いを持っていても、脳のゴミ箱に捨てられてしまう
きっと、その時の記憶は、泣いている
もう忘れられてしまったのか、もう思い出されることもないのか、と
しかし、気づかない
僕たちがゴミ箱の中を気にすることがないように、記憶のゴミ箱を気にすることもない
遠い日の記憶、いまではもう、屑籠の中
僕たちが気にすることもない、美しい、ゴミ
空を見上げて心に浮かんだこと
今日の空は曇り空
ただ、曇天というほどでもなく、明るい曇り
ほんとに、白い雲が薄くそこにあるだけ
生クリームみたいに、薄く塗られていて、外からの光が僕らに届くほどには薄い
そんな空を見て、思ったこと
何も思わなかったな
何を考えるわけでもなく、ただ、心を吸われたと言えばいいのか
自分が考えてたことをそのまますっぽりと抜かれた感じがした
だから、本当は何か思ったのかもしれない
でも、それはすでに、意識する前に空に吸われた
それが雨となって降ってくるかもしれない
そしたら思い出すかもしれない
でも、とりあえず今は忘れちゃった
そんな朝7時18分
駅のホームには、アナウンスとともに電車がやってきた