僕の心は、ここにあるよ
君を待ってるんだよ
だから、戻ってきてよ
聞こえてる?
僕が過ごすのは、刻々と変化する、新しい日々
空模様も、道の色も、通り過ぎる人も、全てが新しい
そんな変化の中には、僕の過ごす町も含まれている
いつの間にか新しい家が建ってたり、逆に無くなってたり、止まってる車の数も変わるし、部屋の数が増えてたりもする
僕が暮らしているのは、日々新しくなる、見知らぬ町
ここで暮らしている人々は、日々変化する、僕ら人間だ
その点に関して言えば、人々は皆、同じだ
「何で泣くの?」
君は、そう言った。
私が貸した、小説が原作の恋愛漫画。その中の、ヒロインの彼氏に、負けヒロインが告白して振られて泣いてしまう、というシーンを見ながら言った。
「え、そりゃそうじゃない?」
「なんで?わけわからんのだけど」
君は少し早口に言う。
「だって、もうこいつには彼女っていう何よりも大切な人がいるわけだろ?他の女に言い寄られたからって、断るのは至極当然のことであって、振られるって分かりきってるんだから、泣かなくていいだろ。泣き落としかなんかか?泣いて相手の親切心を利用しようとしてんのか?」
それを聞いて、全くこいつはおかしな奴だなと思う。
「では、君のその主張を、ある例をもってしてへし折ってあげよう」
「急に何だお前」
「いいですか?では、私に彼氏がいたとしましょう」
「なわけねぇだろ。お前の彼氏は俺だろうが」
「ただの例だから!ちょっと黙って聞いて」
人の話を聞かない野郎だ全く。
「はい、私に別の彼氏がいたとしますよ?で、あんたは私を大好きです」
黙って聞いているのを確認しながら、話を続ける。
「私のことが大好きなあんたは、私に彼氏がいても、大好きな気持ちは変わりません。なのでいっそのこと告白しちゃおうと思いました」
「いや俺はそんなこと…「黙って」」
何か言おうとしたがそれを止める。
「でも、私には大事な誰かさんがいるので、もちろんあんたを振りました。はい、その時の気持ちは?」
「泣く」
「そゆことよ」
「なるほどね理解」
君はまた漫画に目を落とす。
そんな君に、一言。
「あんた以外に、いらないからね」
ばっとあげた君の顔が、漫画のヒロインみたいに真っ赤に染まっていた。
君といると、体が熱くなって
君と触れ合うと、体温が上がって
汗が出てきたりもするし
夏なんじゃないかなって思う
君がいると、いつでもどこでも、暑い暑い夏のようだ
これから先の人生、この夏は終わらないのだろうね
蝉たちが騒々しく叫ぶ
水分を含んだ空気が肌を撫でる
灼熱のアスファルトは足元から身体を焦がしていき
強い日差しが頭を焼く
汗で濡れた身体でお互いに寄り添って、暑い身体を近づけて、汗の香りと、ふんわり香る君の匂いを感じる
僕も君も暑いはずなのに、離れたくなくて、ずっと隣にいたくて、そしてなにより、その時間が一番幸せだった
汗で気持ち悪くても、暑さで倒れそうでも、君に寄り添いたかった
それが、あの真夏の、君との日常の記憶
他にいろんなこともしたけど、結局それが、一番幸せだったんだと思う