元気かな、卒業して行った、優しい先輩
元気かな、転校して行った、部活の親友
元気かな、もうこの世にはいない、おばあちゃん
元気かなと気にする時、いろんな人が思い浮かぶ
それはみんな、今までに別れをしてきた仲間であり、家族
また会えるといいな、とは、思わない
「またね」じゃなくて、「さよなら」を伝えたから
人生は、いろんな分岐点がある
その先で、仲間達と再会することは、ごく稀だ
その別れを告げる時に、後悔ができるだけ少ないようにしたいから
一人一人と全力で向き合おうと思うんだ
下を向いて歩く
灰色の、硬く冷たい地を感じる
前を見て立ち止まる
赤い光を眺める僕の前を、黒や白の鉄塊が通り過ぎる
俯きがちで歩き出す
周りの足音に追い立てられて、少し早歩き
しばらく歩く
灰色の視界
ふと上を見る
蒼く、深く、清々しく広がる空
俯くんじゃなくて、少し前を向いて歩いてみようかな
君を探して、何年経ったのだろうか
君があの書き置きをのこして、どこかへ消えてしまってから、僕は君をずっと探している
会社も辞め、家も売り払い、全財産を持ち、世界を旅するようになった
しかしどこへ行っても、君を見たと言う人や、君を知っている人は、1人も見つからない
もうお金もなくなり、どこかも知らない場所を歩いている
腹も減り、喉も渇いた
目の前が朦朧としてくる
気づくと、地面が目の前にあった
重たい頭を持ち上げて、前を見てみると、さっきまでの荒れた地面とは変わって、青々しく草が茂り、紅い花がところどころで咲いている、綺麗な場所だった
奥には白いワンピースを着た、髪の長い女性がいる
その人が振り向いた時、君のいなかった、今までの、何もない、重苦しい日々から解放された気がした
女性に微笑み、ゆっくりと立ち上がって、ゆっくりと歩いて近づき、優しく、抱きしめた
あぁ、こんなところにいたのか、探していたんだよ
君が、笑っていた気がした
僕が言った言葉は、空気に溶けていく
僕が思った感情は、誰にも知られず朽ちてゆく
僕が感じた思いは、気づかれることもなく消えていく
僕が何を言っても、何を感じても、何を思っても、誰にも影響を与えず、何事もなかったかのように元に戻る。いや、形が変わることすらないのかもしれない
そんな僕は、誰が見ても、何も見えない
透明なんだろうな
暗闇に浮かぶ、一等星のような
暗い夜空を彩る、小さな星たちのような
人々の道標となった、北極星のような
それが、僕にとってのあなただった
僕をその輝きで照らしてくれて、僕の道標となり、神秘的な光を放つ存在だった
でも、喧嘩して、すれ違って、仲直りもろくにせず、なんとなくの距離感でいた君を、星とは思えなかった
僕にとっての今の君は、道端に転がっているようななんでもない小石で、鬱陶しいと感じるような雑草で、変わり映えのしない理解できない絵画のようだ
君を追いかけることはもうやめてしまった
君を追いかけていると、自分が自分でいられなくなってしまうから
君とは、もう分かり合えない