君を見つけたこと
君に見つけられたこと
君と出会えたこと
君と仲良くなれたこと
君と喧嘩できたこと
君を好きになれたこと
君に好かれたこと
君と抱き合えたこと
君と手を繋げたこと
君をもっと深く知れたこと
全部、夢じゃないって、言ってほしい
もう目の前に君がいない今は、夢だったって言ってほしい
今すぐ目の前に現れて、無邪気な笑顔で笑いながら頭を撫でてほしい
今も私は、夢のなかから覚めてないよ
人はよく、「夏がやってきた」とか、「冬の足音が聞こえる」とか、言ってる。
でも、季節は、やって来るものなのかな。
僕たちが、向かっていくものだったりして。
時が過ぎるんじゃなくて、僕たちが時に出逢いに行ってたりして。
そんなことを考えてたら、もう夏だ。
とても暑い日々に、僕らが足を踏み込み始めた。
ただいま、夏。
寡黙な人だった。
自分から話すことはなく、僕から話しかけても、相槌を打つだけ。
何も言わないから、冷たい人だと思われてたけど、誰よりも努力家で、誰よりも熱意を持っている人だった。
そんな君は、きっと嫌になったんだね。
君ができる人になれたのは、血を吐くほどの努力を積み重ねたから。
でも、誰もそれを認めない。
天才だ、元々のスペックが高い、当たり前。
その期待に、応えることが辛かったんだね。
僕の言葉が届かないくらいに、苦しかったんだね。
目の前の四角い石を眺める。
ここへ来る時に買った炭酸を飲む。
ぬるくなった炭酸には、もう炭酸なんてなくて、蓋を開ける時に何も言わなかった。
虹の始まりには、死者たちが集うらしい。
虹の橋が、天へと続く橋として向こう岸へ渡る前に、自分の後悔を悔やんだり、最後にこの世界を見たり、満足そうに座って待っていたり。
魂それぞれが、それぞれの最後の時間を過ごす。
大切なあの人は、ベッドの上で、あれがしたかった、これがしたかった、まだ死にたくないな、と、後悔を口にしながら、それでも幸せそうな顔で行ってしまった。
あの人は、後悔があるのだろうか。
それとも、この生に、満足したのだろうか。
僕との生活は、どうだったのだろうか。
今すぐ会って、話したい。
虹を探して空を見上げても、そこにあるのは、ギラギラと照りつける太陽だけで、虹なんてあるはずもなかった。
「…であるからして、この式が…」
先生の低い声がかすかに耳に届く
のそりと顔を持ち上げると、数学の授業中だった
気づいたら寝ていたようだ
ふぁ、と、控えめにあくびをして、残っている眠気を感じながら、それらを体から追い出すべく、ぐっとひとつ伸びをする
少しスッキリした体で、晴れた外を眺めながら、ぼんやりと授業を聞く
今日の外も暑そうだが、エアコンがきいた部屋は、ひんやりと冷たい、少し寒いくらいだ
なんだか、いつもより体が軽いし、世界も綺麗に見える
ちょっとだけ、がんばろ、とか思っていたら、頭に衝撃を感じた
びっくりして体を起こす
「こらー、寝てるんじゃないぞー」
周りのクラスメイトがくすくす笑っている
どうやら先ほどまでのは、夢だったようで、社会の先生が僕の頭を小突いた衝撃だったらしい
たしかに、今日は曇りだったし、僕の席は外の景色が見える窓際の席じゃない
なんだよ、と思いながら、伸びをひとつ
夢の中のように、スッキリしていない体でペンを持つ
所詮、夢は夢か
現実とは違うんだな、なんて考えながら、先生が話す開国の話をぼんやりと聞いた