時雨 天

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7/16/2023, 12:31:36 PM

空を見上げて心に浮かんだこと



綺麗な青い空が目の前に広がった。雲一つない青い空。
太陽の光が眩しくて、目を細める。
こんなにも美しい空があるのに、現実は残酷なことが多い。
辛いことは誰にだってある。だからこそ、思い出してほしい。
この青い空を見上げることを。君のそばにずっと美しい世界があることを。

7/15/2023, 12:36:03 PM

終わりにしよう


いつまでも一緒にいられると思っていたのに。
神様は残酷だった。

「好きな人に告白したら、OKもらえた」

耳がキーンと痛くなった。高いところから急に突き落とされた気分。
呼吸をする度に、息が苦しい。額から汗がこぼれ落ちた。

「よかったね、おめでとう、お似合いだと思う」

声が震えていたのが、自分でもよく分かる。表情が上手く作れない。

「いつも色々話聞いてくれて、ありがとう。やっぱり幼馴染は、頼りになるね」

嬉しそうに笑って、俺の手を握る。
――聞きたくなかった。信じたくなかった。嘘だと言って欲しかった。
作った顔で、笑い返した。愛しい横顔、その瞳に俺はもう映らない。
その後の会話が耳に入ってこなかった。たぶん、好きな人の話だろう。
ぼーっと遠くを見つめながら、一緒に歩いて帰る。左肩に下げていた、ボストンバックが重く感じた。


幼い時に約束した「大人になったら結婚しようね」と。
ずっとそれを信じていた。――嬉しくて。
幼稚園も小学校も中学校も、ずっと一緒で、ずっと隣にいた。 


俺のほうがずっと前から大好きだったのに。なんで、俺じゃない? 


悲しくて、悔しくて、それが痛みとなり体を抉っていく。
認めたくなかった、分かりたくなかった、時間が戻って欲しかった。
そんなこと言っても、思っても、どうにもならないのわかっている。


家に帰って、足早に部屋に向かい扉を閉める。
電気もつけずに、扉にもたれかかりながら、ずるずるとその場に座り込んだ。
涙が溢れ出た。喉の奥と鼻の奥がツーンと痛い。
しばらくしてから、立ち上がり、机の引き出しに向かった。
引き出しの中から取り出した、1枚の手紙。幼い時に「結婚しようね」と書かれた手紙を、ずっと持っていた。
もう、この想いを終わりにしよう。――さよなら。


      ビリビリと紙を破く音が部屋に響いた。

7/14/2023, 12:25:58 PM

手を取り合って



暗闇の中に灯りが一つ。ゆらゆらと揺れ動いている。
そこには泣きながら歩いている少女がいた。
彼女が持っているランタンの光だけが、暗い道を照らしていた。
どんどんと険しくなる道のり。周りには人一人いない。
どんなに歩いてもゴールはない。
とうとう、少女は立ち止まってその場にしゃがんでしまった。
ポロポロと大きな涙の粒が、地面を濡らしていく。
じゃりっと砂を踏む音に顔を上げる少女。
そこには、不思議そうな表情で少女を見る女性がいた。

「どうしてこんなところに子供が?」

しゃがんで、少女と同じ目線になる女性。
ランタンの灯りで、女性の容姿が明らかになった。
綺麗な銀色のウェーブした長髪、海のように深い蒼い瞳。
うっすらとした桜色の唇と色白の肌。そして、カラスのように真っ黒な服装。頭にはエナン帽子。

「……魔女」

少女はぽつりと呟いた。

「……そうよ、魔女よ、魔女。んで、迷子になったの?」

魔女が彼女にそう聞くと、首を左右に振る。

「迷子じゃないなら……」

唇に左手の人差しを当てて、深いため息をついた魔女。

「……まぁいいわ、丁度、かわいい助手がほしいと思っていたの、一緒に来る?」

立ち上がって、少女に手を差し伸べる。少女は、きゅっと口を結び、魔女を見つめた。

「ここにいても、寂しいだけよ?どうせ帰る場所、ないんでしょ?」

魔女の言葉に小さく頷く少女。そして、震えながら魔女の手を取り、立ち上がる。

「んじゃぁ、行きましょ。これからは、私と手を取り合って生きていくのよ、いいでしょ?」

魔女は、ふふっと笑うと小さな手を引いて、歩き始める。ゆらゆらとまた揺れ動くランタンの灯りは、これから彼女らが生きていく道を照らし始めた。

7/13/2023, 11:58:57 AM

優越感、劣等感



俺の弟はなんでもできた。容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能、愛想が良いから人間関係は良好。どれにとっても天才だった。見ただけで、魔法のようにその通りにできてしまう。
それに比べて俺は、劣っていた。兄弟なのに、容姿も普通、成績も普通、スポーツも普通、人間関係最悪。どんなに努力しても、弟には敵わなかった。何一ついいことがない。
こんな俺なのに、弟はいつも「兄さん、大好き」と言ってくる。
何を考えているのか、わからない。その微笑みの裏には何があるんだ?
俺のことを見下しているのだろうか……


僕の兄さんはなんにもできない。容姿は普通だし、成績だって、赤点こそ免れているものの、ギリギリのレベル。スポーツは何しても下手、特にサッカーなんかボールを蹴れていないし。
いつも俯いて、人を睨むし笑わないから愛想が悪いって言われている。
兄弟なのになぜこんなにも違うのだろうと思うけど、僕はそんな劣等生の兄さんが「大好き」だ。
何もできなくて、ビクビクしてて、僕を睨むその目が大好きだ。
とてつもなくたまらない、努力しているのは知っていた、そこも愛おしいけど、僕の上に行くなんてありえない、行かせはしない。
いつまでもいつまでも、「なにもできない兄さん」でいてほしい。
だから、僕は兄さんにずっと微笑む。ずっとずっと浸っていたいこの優越感。


         「兄さんは僕のモノだ」

7/12/2023, 11:00:04 AM

これまでずっと


これまでずっと2人で暮らしていた。
雨の日も、風の日も、暑い日も、寒い日も、楽しい日も、辛い日も。
どんな時でも2人でずっと暮らしていた。
そして、これからは――
大きな産声がきこえる。私は涙を流しながら、新しい小さな命を抱く。

「これからは3人だね」

小さな手に自分の右手の人差し指を握らせた。
廊下から慌ただしい足音が聞こえてくる。
この足音はきっと、あの人のモノだ。

「今から、パパが来ますよ〜」

ふふっと笑うと彼女もふにゃりと笑った。

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