時雨 天

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手を取り合って



暗闇の中に灯りが一つ。ゆらゆらと揺れ動いている。
そこには泣きながら歩いている少女がいた。
彼女が持っているランタンの光だけが、暗い道を照らしていた。
どんどんと険しくなる道のり。周りには人一人いない。
どんなに歩いてもゴールはない。
とうとう、少女は立ち止まってその場にしゃがんでしまった。
ポロポロと大きな涙の粒が、地面を濡らしていく。
じゃりっと砂を踏む音に顔を上げる少女。
そこには、不思議そうな表情で少女を見る女性がいた。

「どうしてこんなところに子供が?」

しゃがんで、少女と同じ目線になる女性。
ランタンの灯りで、女性の容姿が明らかになった。
綺麗な銀色のウェーブした長髪、海のように深い蒼い瞳。
うっすらとした桜色の唇と色白の肌。そして、カラスのように真っ黒な服装。頭にはエナン帽子。

「……魔女」

少女はぽつりと呟いた。

「……そうよ、魔女よ、魔女。んで、迷子になったの?」

魔女が彼女にそう聞くと、首を左右に振る。

「迷子じゃないなら……」

唇に左手の人差しを当てて、深いため息をついた魔女。

「……まぁいいわ、丁度、かわいい助手がほしいと思っていたの、一緒に来る?」

立ち上がって、少女に手を差し伸べる。少女は、きゅっと口を結び、魔女を見つめた。

「ここにいても、寂しいだけよ?どうせ帰る場所、ないんでしょ?」

魔女の言葉に小さく頷く少女。そして、震えながら魔女の手を取り、立ち上がる。

「んじゃぁ、行きましょ。これからは、私と手を取り合って生きていくのよ、いいでしょ?」

魔女は、ふふっと笑うと小さな手を引いて、歩き始める。ゆらゆらとまた揺れ動くランタンの灯りは、これから彼女らが生きていく道を照らし始めた。

7/14/2023, 12:25:58 PM