時雨 天

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優越感、劣等感



俺の弟はなんでもできた。容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能、愛想が良いから人間関係は良好。どれにとっても天才だった。見ただけで、魔法のようにその通りにできてしまう。
それに比べて俺は、劣っていた。兄弟なのに、容姿も普通、成績も普通、スポーツも普通、人間関係最悪。どんなに努力しても、弟には敵わなかった。何一ついいことがない。
こんな俺なのに、弟はいつも「兄さん、大好き」と言ってくる。
何を考えているのか、わからない。その微笑みの裏には何があるんだ?
俺のことを見下しているのだろうか……


僕の兄さんはなんにもできない。容姿は普通だし、成績だって、赤点こそ免れているものの、ギリギリのレベル。スポーツは何しても下手、特にサッカーなんかボールを蹴れていないし。
いつも俯いて、人を睨むし笑わないから愛想が悪いって言われている。
兄弟なのになぜこんなにも違うのだろうと思うけど、僕はそんな劣等生の兄さんが「大好き」だ。
何もできなくて、ビクビクしてて、僕を睨むその目が大好きだ。
とてつもなくたまらない、努力しているのは知っていた、そこも愛おしいけど、僕の上に行くなんてありえない、行かせはしない。
いつまでもいつまでも、「なにもできない兄さん」でいてほしい。
だから、僕は兄さんにずっと微笑む。ずっとずっと浸っていたいこの優越感。


         「兄さんは僕のモノだ」

7/13/2023, 11:58:57 AM