大事にしたい
大事にしたいことはなんですか
友達、恋人、仕事、お金 etc…
大事にしたいことはなんですか
自分に正直に生きることです
時間よ止まれ
あぁ、もうそろそろお別れの時間かなぁ。
初めての二人でのお出かけ。デートと呼ぶにはあまりに拙い。
「何考えてる?」
「時間よ止まれって思ってる」
「それは困るなー」
「これからたくさん一緒の時間過ごすんだから。止まってる暇なんてないよ」
顔をのぞきこまれドキリとする。
「ふふっ、真っ赤。また明日も話そうね」
言葉が出なくて必死に頷く。
共に過ごす時間も確かに大事。でも少しだけでも止まってくれないと私の心臓がもたないっ。
夜景
「やっぱベタに夜景?」
免許を取ったというタカシの連絡を受け久々に集まったのは学生時代いつもつるんでいたメンバー。4人揃えば騒がしく時間はあっという間に過ぎる。そろそろ解散かという時間、せっかくならと高台に車を走らせる。
免許初心者には緊張ものの山道を慎重にゆっくりゆっくり登って行く。ハンドルを握るタカシの緊張具合に車内も静まる。
そうして無事頂上にたどり着き。緊張から解き放たれ一斉に車外飛び出す。そして目的の夜景を眺めて出た言葉は。
「…ショボくね」
「灯り少なっ」
「自分の住んでる田舎だぞ、こんなもんだろ。何期待したんだよ」
もっとこうさぁ、夜景って言ったら何万ドルとかさー
俺将来は夜景見える都会のタワマン住むわー
俺は大富豪になる!
口々に勝手なことを言いながら。それでも思うことは。
せめてこれ以上この夜景の光が減らないように、俺たちがこの地域を担っていかなければ、ということだった。
花畑
「俺、顔はいいじゃん?スカウトされてまずはモデル。鮮烈にデビューして期待の大型新人で騒がれる。ゆくゆくは俳優業にも進出して、バラエティーにも引っ張りだこになって…」
「脳内花畑か」
同級生の進路という名の妄想を聞き一蹴する。委員長だからと押し付けられた、卒業も危うい同級生の面倒。とりあえず先日のテスト結果を見せてもらうと散々な点数が並んでいた。
「お前さ、授業態度満点じゃん。なんでこの点数なの」
目の前の男は遅刻欠席なく居眠りもしてる様子もなかった。都度ノートもとっており、怠い空気感の時には授業進行の妨げにならない程度の茶々を入れ場を和ませ。勝手に成績優秀者だと思っていただけに、広げられたテスト用紙が衝撃でならない。
「ねー。俺もそう思う。ミステリーだよね」
どこまでも軽い、お気楽なお花畑発言にこめかみを押さえる。さて、どうやってやる気を出させよう…。
空が泣く
失恋した。浮気されて捨てられた。
「泣いていいよ」
話を聞いてくれた友達に慰められ、奥歯を噛み締め、頭を降る。
「っ泣かないっ…。いいの、私が泣かなくても、ほら」
窓の外を指す。外では雨が降りだした。
「よく、空が泣いてくれるって言うでしょ。だからいいの、私は泣かない」
なんてヒロインぶってみた。雨足はどんどん強くなり、バケツをひっくり返したような土砂降りとなった。
「…号泣じゃん。そんなに好きだった?」
「いや、そんなでもなかったけど」
この空は私の代弁ではなかったようだ。