好きな本は?
Aくん。魔術なんか書かれた本。
あー、たしかに。オタクっぽい。
Bちゃん。なんか、数学?の本。
頭いいのかな?あとで教えてもらおう。
Cちゃん。お菓子レシピの本。
Cちゃんって、料理できたの?
Dくん。生物の本。
詳しいなら、あとでそこら辺のハチュウルイを食べてもらおう。
私は本に生きている。
誰にも借りられないような、それはもう古い古い。
そこのヒロイン。借りてくれた人はイヤイヤみたい。
きょうは誰が私を見てくれるんだろう
私を好きになってくれる?
晴れてるのか、曇っているのかもわからない。
知らなくてもいい。
あしたはきっともう見れないのだろうから。
グラデーションのかかった空みたいに君は
あいまいで、
たまに不機嫌で、
それでも面白くて、
そして好きだった。大好きだった。
なにを言っても「ああ、うん、」
ってあいまいだった頃から覚悟はしていたかもしれない。
でもいざなるとツンとするものだ。
バイトしている花屋の向かいにあじさいが咲く季節になった。
店長がこの店にも入れてくれたらいいのに。
きょうの客は結婚記念日で、ときてちょっと、かなりチクリとした。
私の彼はいなくなった。
誕生日にあじさいをよく送ってきた。
あじさいは、浮気なんて意味もあるものだからすこし嫌だった。
言葉どおり彼はきれいに女をつくっていた。
ショックだったけど話せばわかると思って酒を用意して待ったっけ。
彼はきれいに酔って、話せる空気じゃなくなって、水を買ってやった。
ついでに洗剤とかも買い足しておいたっけ。
そっからは酔って知らないけど。
その晩、雨で湿った地面で彼は死んだ。
だから彼の親に赤いあじさいを届けた。
死因はなんだっけ。あ、なんかよくわからないの飲んだっけ。
もう1年。
私はあれからすこしあじさいが好きになった。
「時間ですよ」
はい、としぶしぶカバンを背負う。
私は朝友達と学校にいったことない。
過度な心配性が私を冷たい車に押しこむ。
毎日車とか、病弱や金持ちキャラのようでウザったらしい。
ちょっと、かなり嫌だ。
冬でも肺が凍るほどにかけられた冷房の風が、なんだかツンとする。
その日は違った。
朝早く家を飛び出す。
ああどうしよう。怒られるかな。逃げちゃった。怒られるかな。
すこし足がふわふわする。
さすがに早すぎた。
一人かと時計を見て息をつく。すこし歩いただけなのに、息が切れる。肩が上がる。
その時、キッと自転車の音がした。
振り返ると、ちょうど陽がのぼる。
朝日の温もりを肌で感じながら、泣きそうになった。
「やっと好きになれたよ、ママ」
彼がいない世界に価値はない。
そう思ってしまうほど、狂おしいほどに愛おしいほどに、
愛していた。幼稚園からずっとずっといっしょで、女子ともめ事があったときから
私は彼に依存した。
その彼が、
「死にたい。」
そう言った。
なんで相談してくれなかったの。
なに?誰が悪いの?
色々言いたいことはあった。
でもまず、
「いっしょに死んであげる。」
彼の気持ちの尊重がだいじなんだって。
なんかのサイトに書いてあったの。
嫌だ。彼に先になんて行かせない。
私のあとなんてもいや。
私の世界が終わるとき、君といっしょ以外に考えられない。
私の手で殺す以外、彼の死因がわからない。
呼吸が弱くなるところも、苦しそうな顔も、だんだん弱くなる心音も感じながら
ぜんぶぜんぶ見ていたい。そして、そんなところも愛してる。
すばらしいハッピーエンドだと思わない?