「今夜、私は月へ帰らなくてはなりません」
そう爺婆と、婚約した帝に告げました。
そして小さい巾着袋を取り出しました。
「これは不老不死の秘薬、月の民が服用している物で、酸素の無い月での生活に欠かせない物ですが、私が月へ帰った後も想って下さるのなら渡しましょう」
爺婆は、躊躇いましたが帝はその巾着を受け取ると懐にしまいました。
「この秘薬を飲みいずれあなたの元へ参りましょう」
あれから数千年、月のかぐや姫は帝はまだ来ないのかと、裏切られたのかと、引きこもっておりました。
地上の帝は、しっかり約束へ向け有人ロケット開発の真っ最中。あと何年掛かるか目処は立っておらず、それでもまだ見ぬ景色へ挑もうと必死でしたとさ。
(まだ見ぬ景色)
かぐや姫のオマージュ、帝ロケット開発失敗して爆破しても無傷で帰還する事で有名人になってます。
雀のお宿から帰ってきたお爺さんお婆さんはそれぞれに小さいつずらと大きなつずら抱えています。
お爺さんが小さいつずらを開けると金銀財宝が溢れ出し、数えてみると残りの人生暮らすには充分すぎる額になりました。
お婆さんが大きいつずらを開けると見たこともないような巨体に1つ目の怪物が出てきました。
物の怪ファン、サイクロプス推しのお婆さんは大興奮、ハグしてみたり腕にぶら下がってみたり怪物が引く程堪能していきます。
そうして興奮しすぎて失神したお婆さんが翌朝に目を覚ますと1枚の置き手紙
『推しなのは嬉しいですが、押しが怖いのでお宿に帰らさせて頂きます。ロプス』
お婆さんは、あの夢のつづきをぉぉぉと叫び、推しとの距離感を間違えた事を後悔するのでした。
(あの夢のつづきを)
舌切り雀のオマージュ、雀が物の怪の類とバレたお婆さん推し活し過ぎてお宿に逃げられてます。
温泉に浸かりながらァア゙〜と声を出す。湯に入るとどうしても言ってしまう。あたたかい嬉しい声だ。
横に入る人も、向こうの人も同じようにそれぞれに声を出している。
ココは秘境の秘湯なのだが、今日はやたらと混んでいるような気がする。
ただ、湯気が多く、誰か居るかは分かるが誰が居るのかまでは分からない。
肩を超えて口元まで湯に浸かりたまに揺れる湯面の波を感じつつしばらく目を閉じる。
何分かは数えてないが、そろそろのぼせそうだなと目を開けてお湯から出る。
近くの岩に座り火照った身体を冷ましながら聞こえてくる「あたたかいね」の声と色んな声をゆったりと聞く。
風がすっと吹いて湯気が晴れていく。
見えたのは、色んな物語の一行達。
男、女、動物、お地蔵様、鬼、蟹、異国の姫に王子様まで。
それぞれがそれぞれにあたたかいねと湯に浸かりただ湯を楽しんでいるのでした。
それも一瞬、また湯気に覆われる秘境の秘湯はしばらくあたたかい声がしているのでした。
(あたたかいね)
色々物語混ぜて秘境の秘湯にまとめて入れて、ところでこの語り部は一体誰?
お爺さんはお婆さんを、お婆さんは犬を、犬は猫を、猫はネズミを連れてきて1つの目標に取り掛かります。うんとこしょどっこいしょと引っ張るそれは大きなカブです。
ですがどれだけ頑張っても抜ける気配すらありません。
以前はお婆さんと犬の間に娘が居たので何とか抜けた実績はありますが、娘が居ない今抜くことはできそうにありません。
疲れ果て、抜けないカブに寄りかかり休憩していると、畑の向こうから見慣れない大きな機械が入ってくるのが見えます。
何事だ何事だ!とびっくりするお爺さん達の前に機械に乗っているのは、なんと娘でした。
娘はその機械を操作しアームを延ばしワイヤーを降ろし、カブに玉掛けを行い、皆を安全位置まで下がらせ、大きなカブを引き抜きました。
クレーンで宙に浮いたカブはそのまま後続に続いて来ていたトレーラーに載せられて安全に固定されていきます。
娘は皆の前に降りてきて、「以前抜くのに苦労したカブを楽に抜きたいって重機免許取ってきたの。あの苦労は未来への鍵だったのね」と言い、「次のカブ抜きに行かなくちゃ」とまた機械に乗り込んで去って行きました。
残された皆は、しばらくその場でポカーンと立ちっぱなしでしたとさ。
(未来への鍵)
大きなカブのオマージュ、原作の挿絵から計算すると横方向に抜くには約5.4t、上方向に抜くには2.2tの力が必要らしい。(超真面目に研究された論文から引用)
クレーンなら上方向で楽に抜けるね。
流れ星1つ…2つ…
深夜の山で空を見上げながら流れ星を数える。
案外標高が高いのか流れ星が近くに見える。
周りの光も一切ないので流れ星を見逃すことなく数えていく。
そういえば流れ星って星のかけらが燃えて光ってるんだよねって思い出す。
いつの間にか流れ星の数えた数は100を超えた。
流石に飽きてきたのと挟まれた脚が痛いので、人間に変身して罠を解除する。
足の怪我を確認して鶴の姿に戻り、罠に捕まらないように飛び立った。
もうすぐ夜が明けそうだ。
(星のかけら)
鶴の恩返しのオマージュ、自分で罠外しちゃったバージョン