神様の屋敷に今年の干支の巳が訪ねて来ました。
「神様、新年明けましておめでとうございます。今年は私が干支を受け持ちます。」
「おお、巳や、お前さんは細長いがしなやかな柔軟性を持っておるでな、滑らかな年になるように努めておくれ。」
神様は巳にそう言いました。
巳はその言葉を丁寧に丁寧に書き留めて、深々と頭を下げて答えます。
「然と、然と承りました」
新たな年は無事にここに始まりました。
(新年)
今年も相変わらず、昔話童話のオマージュをメインに書いていきます。よろしくお願いいたします。
干支の龍を初めとし、多種多様な物語の登場モノ達が一同に集まりお酒を酌み交わす。
忘年会には遅すぎるが今年最後の日だ。今日しかない。
朝から集まってはいたが、流石にこの時間になってくると散り散りに帰り出す。年の瀬を自分の物語で過ごす為だ。
最後には干支の龍だけが残る。
干支の龍は、大きな大きな声で「良いお年を」と鳴きながら残りの時間を見つつ次へ干支を渡す為に場に向かう。
(良いお年を)
書き手の皆様、読み手の皆様、良いお年をお迎え下さい。
龍はその長い体を上に伸ばし、自分が通ってきた道を振り返る。
兎から引き継いだ干支の巡りを次の巳に受け渡す為に1年ずっと飛び続けて来た道は驚く程に曲がりくねり、上に行ったり下に行ったりしている。
大きく歪んだ道が何ヶ所かあるのは、世の中の事柄が反映されているからだ。振り回されるように駆け抜けた道だが、振り回されても途切れる事無く道は続く。
もう少しで巳が待つ道に辿り着く。
余力など残さず走り抜ける。
どうか、色々あったが良い1年だったと皆に言ってもらえるように。
(1年を振り返る)
干支のお話のオマージュ、兎から龍、龍から巳へと移り変わりますが、作者的には満足に足りる1年だったと思います。
オレンジ色の丸い果実を毎日の様に目の前に置かれる。
置いた人はいつもの様に手を合わせ数秒、何かを唱え、それが終わると隣の奴に同じ様に同じくオレンジ色の丸い果実を置き手を合わす。
並んだ奴全員に同じ様にし終えると帰っていく。
雨でも雪でも猛暑でも台風でも欠かされない。
1番向こうに並んだ1番小さい奴が「このみかんっていう果実、一度でいいから食べてみたいなぁ」と呟いている。置かれたオレンジ色の果実はその後、カラスか猿に持っていかれるから実際には並んだ全員が食べた事は無いのだ。
そしてある雪の吹雪いている朝、いつもの様にみかんを置いて手を合わせて行った後、みかんはすぐに雪に埋もれ、流石に雪を掘ってまでみかんを取るカラスも猿も居らず、周りには誰も居ない今しかない時がやってきた。
各自みかんを掘り出して、齧り付いてみる。
皮には苦味があり、中から酸味の強い果汁が溢れ、強い香りと共に甘味が広がっていく。
「美味い美味い」ともれなく全員完食し、また定位置に並ぶ。
その日の夜、いつもオレンジ色の丸い果実を供えに来る者の家にまた沢山のお礼の品を届けに行こうと話が決まり、お供えをしだすきっかけとなった笠を被り、1番小さい奴は手ぬぐいを被り直し、7人の地蔵達はエンヤコラエンヤコラとお礼の品を用意するのでした。
(みかん)
笠地蔵のオマージュ、笠を被せたお礼の品のお礼に毎日お供えに来るようになったっていうお話。
冬に休みは無い。
冬の間中、気温計と気圧計を見ながら地上の降雪量を調整する。
少しでも気を抜くと、豪雪の地域の中に雪が降らない謎の地域が出来てしまったり、赤道直下の雪とは関係ない地域に雪が降ってしまう事が起きてしまう。
自分が任されている期間中は寝る事も許されず、ご飯さえゆっくりと食べる事は出来ない。
休みが欲しい。
モニターの今日の降雪予定地に順調に雪が降っている事を確認しながら、明日の降雪予定に合わせて微調整を繰り返す。
明日の降雪予定地域には有名なアトラクション施設が含まれている。地上では冬休みに突入した人々が冬のイルミネーション等を見にアトラクション施設へ出かける予定を立てているだろうか。残念だが、降雪予定を変更する事は出来ない。自分のクビが飛んでしまう。
自分の冬休みは無いが、冬が終われば休み放題なのだ。
その休みの計画を練る余裕は今は無い。
また集中して降雪モニターと操作スイッチとにらめっこを再開する。
(冬休み)
冬神様のお仕事(現代風)、休みに入った日に雪が降り出し予定が狂った人も多いはず。