足り過ぎた贅肉

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オレンジ色の丸い果実を毎日の様に目の前に置かれる。
置いた人はいつもの様に手を合わせ数秒、何かを唱え、それが終わると隣の奴に同じ様に同じくオレンジ色の丸い果実を置き手を合わす。
並んだ奴全員に同じ様にし終えると帰っていく。
雨でも雪でも猛暑でも台風でも欠かされない。
1番向こうに並んだ1番小さい奴が「このみかんっていう果実、一度でいいから食べてみたいなぁ」と呟いている。置かれたオレンジ色の果実はその後、カラスか猿に持っていかれるから実際には並んだ全員が食べた事は無いのだ。

そしてある雪の吹雪いている朝、いつもの様にみかんを置いて手を合わせて行った後、みかんはすぐに雪に埋もれ、流石に雪を掘ってまでみかんを取るカラスも猿も居らず、周りには誰も居ない今しかない時がやってきた。
各自みかんを掘り出して、齧り付いてみる。
皮には苦味があり、中から酸味の強い果汁が溢れ、強い香りと共に甘味が広がっていく。
「美味い美味い」ともれなく全員完食し、また定位置に並ぶ。

その日の夜、いつもオレンジ色の丸い果実を供えに来る者の家にまた沢山のお礼の品を届けに行こうと話が決まり、お供えをしだすきっかけとなった笠を被り、1番小さい奴は手ぬぐいを被り直し、7人の地蔵達はエンヤコラエンヤコラとお礼の品を用意するのでした。
(みかん)

笠地蔵のオマージュ、笠を被せたお礼の品のお礼に毎日お供えに来るようになったっていうお話。

12/29/2024, 1:34:34 PM