足り過ぎた贅肉

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12/29/2024, 1:34:34 PM

オレンジ色の丸い果実を毎日の様に目の前に置かれる。
置いた人はいつもの様に手を合わせ数秒、何かを唱え、それが終わると隣の奴に同じ様に同じくオレンジ色の丸い果実を置き手を合わす。
並んだ奴全員に同じ様にし終えると帰っていく。
雨でも雪でも猛暑でも台風でも欠かされない。
1番向こうに並んだ1番小さい奴が「このみかんっていう果実、一度でいいから食べてみたいなぁ」と呟いている。置かれたオレンジ色の果実はその後、カラスか猿に持っていかれるから実際には並んだ全員が食べた事は無いのだ。

そしてある雪の吹雪いている朝、いつもの様にみかんを置いて手を合わせて行った後、みかんはすぐに雪に埋もれ、流石に雪を掘ってまでみかんを取るカラスも猿も居らず、周りには誰も居ない今しかない時がやってきた。
各自みかんを掘り出して、齧り付いてみる。
皮には苦味があり、中から酸味の強い果汁が溢れ、強い香りと共に甘味が広がっていく。
「美味い美味い」ともれなく全員完食し、また定位置に並ぶ。

その日の夜、いつもオレンジ色の丸い果実を供えに来る者の家にまた沢山のお礼の品を届けに行こうと話が決まり、お供えをしだすきっかけとなった笠を被り、1番小さい奴は手ぬぐいを被り直し、7人の地蔵達はエンヤコラエンヤコラとお礼の品を用意するのでした。
(みかん)

笠地蔵のオマージュ、笠を被せたお礼の品のお礼に毎日お供えに来るようになったっていうお話。

12/28/2024, 12:13:28 PM

冬に休みは無い。
冬の間中、気温計と気圧計を見ながら地上の降雪量を調整する。
少しでも気を抜くと、豪雪の地域の中に雪が降らない謎の地域が出来てしまったり、赤道直下の雪とは関係ない地域に雪が降ってしまう事が起きてしまう。
自分が任されている期間中は寝る事も許されず、ご飯さえゆっくりと食べる事は出来ない。
休みが欲しい。

モニターの今日の降雪予定地に順調に雪が降っている事を確認しながら、明日の降雪予定に合わせて微調整を繰り返す。
明日の降雪予定地域には有名なアトラクション施設が含まれている。地上では冬休みに突入した人々が冬のイルミネーション等を見にアトラクション施設へ出かける予定を立てているだろうか。残念だが、降雪予定を変更する事は出来ない。自分のクビが飛んでしまう。
自分の冬休みは無いが、冬が終われば休み放題なのだ。
その休みの計画を練る余裕は今は無い。
また集中して降雪モニターと操作スイッチとにらめっこを再開する。
(冬休み)

冬神様のお仕事(現代風)、休みに入った日に雪が降り出し予定が狂った人も多いはず。

12/27/2024, 12:20:43 PM

寒い外は雪が降っていていつでも雪遊びし放題だ。
タンスを開けて手ぶくろと耳あてとニット帽とマフラーを出す。暖かいジャケットはクローゼットに吊るさがっていたはずだ。
お腹の辺りにカイロを貼り付け、ふんわりセーターを着て先程取り出した物を巻き付け被りはめていく。

足首までしっかり防寒できる靴を履き外に飛び出す。
しっかりとした雪の感触を楽しみながら公園を目指し滑らないようにゆっくり歩いて行く。
公園の方からは賑やかな声がこちらまで聞こえてきている。
大勢遊んでいるのだろう。

公園に着いたらお友達がもう雪合戦を始めていた。
大きな声で挨拶しながら自分も雪合戦に参加する。
敵も味方もないバトルロワイヤル形式の雪合戦だ。近くからも遠くからも雪玉が襲ってくる。
こちらも近くの友達遠くの友達問わず投げ返す。

時間も忘れ、寒さも忘れ、疲れも忘れてたっぷり遊び、腹減りだけは忘れず帰ろうとなった時に手の冷たさが一気に襲ってきた。
手ぶくろがいつの間にか無くなっている。雪玉を作る時に外れたのか、雪玉と一緒に投げてしまったのか、見渡してもそれらしき物は見当たらない。
ポケットに手を突っ込み、カイロの熱で温める。
家に帰ったらお金貰って手ぶくろを買いに行こう。
(手ぶくろ)

手ぶくろを買いにのオマージュ、手ぶくろを買いに行く理由。

12/26/2024, 12:15:45 PM

いつ見ても美しい。初めてみてからもう数十年たっただろうか?自分の祖父の代からあるものだ。
ドワーフ達が拵えたガラスの棺、その中で眠る姫。
時間を遮断するドワーフの業により、棺が開かない限り中のものはその姿を永遠に変えずそこに在り続ける。
もしも開いてしまったら、その止まった時間を補う為に中のものは一気に変化し老化・風化する。
この美しさを外に出す事は出来ない。触る事も叶わない。

棺をそっと撫でる。少しでも近くに寄りたい。
顔を棺に近付ける。少しでも近くで見たい。

棺に付いた汚れを見つけ、これでは台無しだと急いで袖を使って拭き取る。
ピシッ………
小さな音がした。
棺にヒビが入っている。まずい。

ヒビはそこから一気に拡がり棺が割れていく。
ガラスの欠片が落ち棺が開いた事を知らしめる。
寝ている姫の時間が一気に進む。
止める間も無く白骨化していく。
変わっていく。変わらないはずのものが変わってしまう。
どうしようもなくその場に立ちすくむ事しかもう出来ない。
(変わらないものはない)

白雪姫のオマージュ、物語ダーク化により目覚めることなく物語が終わる。

12/25/2024, 12:48:08 PM

今日はもう仕事も終えて仲間たちの集まる酒場に向かった。
駐車場には見慣れた仲間たちが大勢たむろしている。
全員もれなく疲れ切った表情でタバコを吸ったり喋ったりしている。
駐車場に停めて安全を確認してその輪に入る。
自分も懐からタバコを取り出し火をつける。

ちょうど吸い終える頃に最後の一人が駐車場に入ってきた。
揃って酒場に入る。今日は貸切だ。飲み放題だ。
タバコだけは外に出て吸わないといけないが。

赤い服に髭面でちょっと太った面々は好きな酒を頼み、ローストチキンにかぶりつき、どんなプレゼントを届けたかを報告し合い、年に一度の大仕事を称え合う。
駐車場に繋がれたトナカイ達にも豪華なご飯が振る舞われ、次のクリスマスまでの休暇の初日を過ごす。
(クリスマスの過ごし方)

サンタクロース達の仕事納めの様子。お酒飲んだ後のソリの運転はお控えください。

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