足り過ぎた贅肉

Open App

いつ見ても美しい。初めてみてからもう数十年たっただろうか?自分の祖父の代からあるものだ。
ドワーフ達が拵えたガラスの棺、その中で眠る姫。
時間を遮断するドワーフの業により、棺が開かない限り中のものはその姿を永遠に変えずそこに在り続ける。
もしも開いてしまったら、その止まった時間を補う為に中のものは一気に変化し老化・風化する。
この美しさを外に出す事は出来ない。触る事も叶わない。

棺をそっと撫でる。少しでも近くに寄りたい。
顔を棺に近付ける。少しでも近くで見たい。

棺に付いた汚れを見つけ、これでは台無しだと急いで袖を使って拭き取る。
ピシッ………
小さな音がした。
棺にヒビが入っている。まずい。

ヒビはそこから一気に拡がり棺が割れていく。
ガラスの欠片が落ち棺が開いた事を知らしめる。
寝ている姫の時間が一気に進む。
止める間も無く白骨化していく。
変わっていく。変わらないはずのものが変わってしまう。
どうしようもなくその場に立ちすくむ事しかもう出来ない。
(変わらないものはない)

白雪姫のオマージュ、物語ダーク化により目覚めることなく物語が終わる。

12/26/2024, 12:15:45 PM