ぬるい炭酸と無口な君
自分は、それ程年寄りではないけど…
この年になって振り返ると幾人かの大切な人達を見送ってきた。
忘れてしまってほとんど思い出すことのない人、
忘れたつもりなのに突然夢に出てくる人、
気づけばいつも何処かで探し続けている人、
時々側に温もりを感じる人…
それらはまるでぬるい炭酸…
気は抜けているのに存在感ははっきり感じられる。
何か問いかけても、夢に突然出てきても貴方達はいつも無口。
自分もいつかは消えて…何処に逝くのだろう。
炭酸の泡のように空気の中に人知れず消えて生滅するのかな?
胸の奥の熱い想い
血が滲むほどの耐え忍ぶ辛さ
腹の底から絞り出す叫び声
今此処にいて自分を感じ、肌で生を感じ、心臓の鼓動を感じる。
時の流れは、時に優しく、時に残酷で
気づかないように緩やかに鈍感にぼやけていく。
その御蔭で感受性もぼやけていくから、どれだけ自分が崩れていってもわからない。
忘れた事も忘れ果て、忘却の彼方
ぬるい炭酸の泡
無口な自分
穏やかな生と死の狭間
タイミング
何故あの時…分からなかったのだろう
何年も経って何故このタイミングで
後悔ばかり…
そんなものかもしれない…生きる事は…
その時はわからない
過ぎてから、何年も経ってから
全て終わった後でしか気づかないのだ
真昼の夢
鼻歌を歌うと後ろから、いい気になってると転ぶよ…お前はそんなお気楽な人間の資格はあるのか…
どんなに楽しみな事が明日あったとしても、迂闊にウキウキは出来ない
そんな私、今ウキウキしている。
嬉しくて楽しみで…慣れないけれどいつの間にか微笑む自分に戸惑っている。
夢…なんだろうか
起きているのに夢を見ているみたい
知らない事を学ぶ喜び
初めての事だらけでオロオロするけど、そんな自分は思いっきり謙虚に
素直になれるのだ。
歳も経験も傲慢さもバリバリーと剥がし、頭を下げて手をついてかしこまる。
それなのに、嬉しい…。
知らない世界、驚きの学び、新しい発見、カルチャーショック。
自分はまだまだ未熟者。
真昼の夢を見始めた頃
枯木に小さな新芽が出る時
思いっきりいい気になろう。
いい気になって転んだら思いっきり
笑い飛ばそう…。
生きることは楽しいんだと…こんな時代が訪れることを、二度と笑うことは無いと思っていたあの頃の自分に伝えられたら…
青い風
…ちゃん?
見知らぬ人から声を掛けられた。
名前を言われ直ぐ思い出したけど、
顔が出てこない。
何十年ぶり…小学生の時の事覚えていてくれた。
エピソード付きで…。
私にはまるっきり身に覚えがなく、
親しかった記憶もない。
でも可愛くて良い子だということだけはしっかり覚えていた。
少し疲れ気味な表情だが、裏表のない親しげな彼女の話に久々に興奮していた。
お互い全く関わりのない見知らぬ人生の折り返しで、偶然再会した。
人と関わらないように生きているのに何故か嬉しくて。
苦労したのだなと、そして今も大変そうな毎日が伺い知れる事を知り、
思わずライン交換していた。
いつでも話聞くからと…
あぁどうか傲慢になりませんように、彼女を傷つけませんように。
まっさらの子供の頃に戻ってやり直しが出来るなら、後悔だらけの人生だけど少しでも誰かと温かい付き合いが出来ますように。
笑顔で別れた跡に青い風が吹いていた。
小さな愛
彼とは生まれた時から一緒に人生を歩く運命だった。
大好きだったし彼が居ないと寂しくて辛くて。
それでも孤独に耐え、2人でいろんなことを乗り越えて生きてきた。
あれは倦怠期だったのか、私に飽きたのか、無視される事が何度かあった。
私の気持ちはギリギリと凍った。
もう戻ることはなかった。
お互い違う人を求めた。
何年か経ち、今2人で生活している。何事もなかったかのように…。
どれだけ一緒にいても腹の中は分からない。
何故か優しさは変わらない。でも、一度凍った心が溶けても同じ気持ちには、戻らないものなのだ。
私は彼と同じ墓には入らない。
入りたくないし、入る資格もない。
多分愛はあると思う。
ただ肌に触れられると無意識に拒否反応が出てしまうだけ。
今日も小さな愛を育てて1日が過ぎていく。
いつまで
裏切りの代償は死ぬまで続くのだろう
針のムシロに座らされたまま、惨めな眼差しを向けられ…。
今思えばバカな事をしたと思う。
戻れるなら戻ってやり直したい。
そんな事ばかりな恥ずかしい人生。
今名前さえ忘れて本物の愛だったのかさえ、分からない。
やった後悔よりやらなかった後悔…
私はやった後悔ばかり溢れている。
誰も知らない土地で生きていきたい
私を看取る子供達の気持ちを考えると申し訳なさで死にたくなる。
あの時…後悔するだろう、全て失うかもしれない、それでも良いからこの道を行きたいと思ったのだった。
私を止めることは誰にも出来ないだろう。
馬鹿で浅はかで恥知らずでちっぽけな私は簡単には死なせてもらえない
後悔し反省し償いの中で許されないことを肌で感じながら、生き恥を晒す罰を受けるのだ。
この命が終わる時初めて許されるのかもしれない。
それまで…笑って、笑い飛ばして、平気で今この時だけを生きていけばいいじゃないの…