私は3人の子供をほぼワンオペで必死に生きていた。
私自身今で言うネグレクト状態で育ち、大人になり子供が嫌いだった。
何故か3人の親になり人並みな生活を目標に頑張っていた。
長男は頭が良く優しい子だった。
それなのに時に辛く当たる、怒鳴る、叩く、理不尽に投げ出す時もあった。
私自身苦しかった。未だにひきづり申し訳なさから長男とはお互い、不自然な感じがある。
長男はもう自分なりの心の折り合いをつけているようだ。
最近次男が自分の子供に手をあげているらしい。
本人の気持ち、葛藤、ストレス、悩み等どのように寄り添えばいいのかわからない。
とても優しい次男なのに…。
信じて、待とう。きっと乗り越えてくれる。
砂時計の音
出逢いは運命…
貴方とのシーンはシャッターを切るように切り取られそのまま私の心に積み重なっている。
始めから最後まで…
たぶん目と目が合ったあの瞬間から砂時計は動き出したことに、私達は気づきもしなかった。
いつか終わりが来ることは考えないようにしていたけれど…
どこかで感じていたのかもしれない。
砂が少なくなってから終わるまでは早く感じるもの。
限りある中で燃え尽きたから、後悔はない。
今はただ遠くで砂の音だけがサーサーと聞こえているだけ。
梨
あれはかなり昔の事
私が東京の端っこの二階のアパートに同棲していた頃の話
部屋にはなんにもなくって…少しずつ必要な物を揃えていたっけ
貧乏だったけど楽しかったと今は思える。
ある日田舎から段ボールが送られてきた。
少し甘い香り…
すぐに空けると洋梨がびっしり…
私の大好きな洋梨。
熟しているらしく芳醇な香り、所々茶色くなって柔くなっていた。
中からひとつ掴みそのまま大きな口でがぶり…
果汁が滴り落ちて、久しぶりの味は私を田舎の梨畑に瞬間移動してくれた。
何年帰ってないんだろ…
出てくる時、2度と戻らないつもりで東京に来たのだった。
結局、私には合わなかったようだ。
あれ程嫌いだった田舎に戻り根を張っている。
子供達に梨を剥いて食べさせてあげよう。
私の母のように…。
静寂の中心で
秋の夜、中秋の満月が雲に隠れてこちらをうかがっている。
星は見えない
時々秋の虫が鳴いている。
遠くでバイクが走り行く音が響き消えていく。
空気はしんと冷えて日中の暑さが嘘のよう。
深呼吸してみたが何かが胸に詰まっているようだ。
頭の方から雑音が聞こえる。
耳の奥か…
そうか、血潮の流れの音なのか…
ざーざーしゅーしゅー、…、…、
ざーざー
時々途切れて無音になる。
この静寂の中心で鼓動が止まる。
そして又動き出す。
体とは裏腹にざわつきが止まない心よ
何かが不安で怖くてざわつくのだ。
秋の訪れ
すぅ~っと大きく息を吸う。
ひんやりと少し煙い秋の香り。
懐かしい…
いつの時代だろうか?
土の道、トタンの壁、着物の擦れる感じ…
又ある時は、赤茶色のレンガの通り道、駅だろうか?外国のような気もする。
懐かしく思うのは自分の中の誰か…
前世の自分だろうか?
何をしていたんだろう?
誰とどう生きて、どう死んだのか?
その時も秋の香りに立ち止まり、きっと空を見上げたはず。
秋の訪れは自分の中の見知らぬ誰かを連れてくる。