RAKT

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9/28/2025, 11:03:23 AM

この話は、人類が「意識保存装置」によって、死後も存在できるようになったときの話。
俺はある夜、自分の端末に見知らぬ通知を受け取った


《ようやく気づいた? 私はまだここにいる》


それは数年前に亡くした恋人の名前で届いていたものだ
恐怖とほんの少しの懐かしさに駆られ、彼女の保存データを探した。
だがそれは、確かに消去済みたった。

この世にない、彼女の声が届くはずがない。

画面の向こうの「彼女」は、昔と同じ声で笑った。

そして次第におかしなことを言い出す。

「あなたの時間を半分ちょうだい。永遠なんてないけど、二人でなら分け合えるでしょ?」

それ以降俺の周囲では、不可解な現象が起こり始めた
電灯が切れる、鏡に二人分の影が映るなんてことは茶飯事。
夢の中で彼女が隣に寝ているなんてこともあった。

恐怖の連続の毎日に、おかしくなりそうだった。

最後に俺が見たのは、
保存装置の中で“融合”しようと蠢く、俺と彼女の意識データ。
「永遠なんてないけれど、二人なら永遠になれる」

俺は悲鳴をあげた。
それが夢だったのか、現実に起きたのかは保存データーだけが知ることになるだろう。

9/27/2025, 10:40:07 AM

地下鉄駅の奥、錆びた非常口の扉を抜けた先に、その喫茶店はあった。
店名は《クロノ》。
外の時間とは異なる規則で動く、いわゆるパラレルワールドの入口だ。
椅子に座ると「別の世界線の自分」と会える。ただし条件が一つ――注文したコーヒーが冷めきる前に、席を立たなければならない。
なので、この店に入る時には予め、何を話すか決めておくことをオススメする

雨で濡れたコートを脱ぎながら、真衣は重い足取りで席に座った。
「……会いたい人がいるんです」
店主は無言で頷き、カウンターで黒い液体を落としていく。
真衣は、ふと窓の外に目をやる。
雨ーー
あの時もこんな雨が降っていた、と心の中で想う。

湯気が立つカップを前に、真衣は鼓動が早くなるのが分かった。
目の前に現れたのは、別の世界の自分だった。
その「真衣」は明るい瞳をして、左薬指に銀色の指輪を光らせている。
「あなたは……結婚してるの?」
「うん。あの人とね」
彼女が微笑むたび、真衣の胸は締め付けられる。
こちらの世界では、あの人――達也は事故で亡くなっているのだ。
こんな雨の日にーー

ふと会話の途中で、背後から冷たい囁きが重なった。

『どうして、こっちに来たの』

耳元に氷のような声。振り返ると、客のいないはずのテーブルに、影が座っている。黒い靄のような、顔のない「誰か」。

指輪を嵌めた真衣が怯えた声を上げた。
「この世界ではね、彼を失わなかった代わりに、“私”を失うの。影に喰われて……。だから――あなたの涙が、私の代わりに流れる」

コーヒーの表面が静かに揺れる。
真衣の頬を、熱い雫が伝った。理由もわからず、ただ溢れて止まらない。
自分ではなく、もう一人の「真衣」の痛みを泣いているのだと気づいたとき、カップから立ち上る湯気が消えかけていた。

「戻らなきゃ……」
椅子を離れる直前、影が伸ばした手が視界を掠めた。掴まれれば、二度と帰れない。
次の瞬間、真衣は《クロノ》の薄暗い店内に引き戻されていた。カップのコーヒーはまだ温かい。
涙を拭い、呼吸を落ち着かせる。

涙の理由は、誰のものだったのだろう。
それを知ることは、もう二度とできなかった。
《クロノ》のドアベルが鳴った。





パラレルワールド、コーヒーが冷めないうちに、涙の理由の総集編です。


涙の理由


ある国の王子が百年前に眠りにつかされていた。
彼を解き放つには、純粋な涙が必要だという。
それは小説の中で読んだ話。

しかしそれを知ったことをキッカケに、主人公は奇妙なことに巻き込まれていく。

それは、ある日の夜の事だった。

突然の金縛り。
主人公は、初めて体験する金縛りに恐怖と焦りをかんじていた。
ーーなに、これ。金縛りってやつ?何で?ーー
焦りと恐怖は次第にピークに達していく。

そのとき、耳元で声がした。

「お前が泣いたとき、封印が解かれる」

封印?
私が泣いたとき?何の話?

やがて、金縛りはとけた。
だが、もうその日は寝ることができなかった。

部屋中の電気をつけ、朝まで起きていた。

鳥の声で、ようやく私は緊張の糸を解いた。

しかし、次の瞬間、昨日の声が頭の中で響いた。
「純粋な涙をもらうために、お前の大切な人をもらっていくよ」

その瞬間、訳の分からない涙が伝った。

こんなわけの分からない、涙の理由何て知りたくない。

私は誰を失った?

思い出そうとすればするほど、その輪郭は遠く遠ざかっていく。

私は、あなたの何でしたか?

9/26/2025, 11:28:50 AM

俺が彼の部屋に行くと、友人である佐伯は死んでいた。
警察の話では死亡推定時間は、21時と言っていたが今は
23じである。
しかし、おかしい。
コーヒーが温かい。
俺はよくコーヒーを調べてみた。

ああ、見つけた。
俺は佐伯の好みを知っている。
コーヒーの上に浮かんでいる粉のようなもの。

それを知らない人間がいる。
彼の仕事仲間である、前島。

俺は前島に詰め寄った。
「前島、聞きたいことがある」
前島の様子が明らかに変わったのが、一瞬で見て取れた。
彼は冷静を装っているつもりかもしれないが。
「お前だろ?佐伯を殺したの」
明らかに動揺した様子を、隠せていない。

「そんなこと、あるはずないだろ」
「あるんだよ。お前は佐伯のコーヒーの好みを知らない」
前島と視線がぶつかる。先に視線を外したのは前島だった。
「佐伯は、コーヒーはブラックしか飲まない。砂糖が溶けている」

そう、この粉の正体は砂糖が溶けたもの。
恐らくは、レンジであたためたか。

前島は突然人が変わったかのように、叫び出した。
「佐伯が悪いんだ!一緒に会社をやろうって言っておきながら、金も何も俺から取るだけ取って」
俺は前島の言葉に何も言えなかった。
「でも、最後の情に、コーヒーがさめないうちに殺そうと思った」
「それがお前の、佐伯への撓むけか?」
前島は静かに涙をこぼし、小さく頷いた。

今、コーヒーは冷めているのだろうか。
それとも、まだ温かいままなのだろうか。

俺は答えを知らない。

9/26/2025, 2:14:54 AM

私は電車に乗りこんだ。
ある組織から逃れるために。
しかし、これは序章にしかすぎなかった。
私は電車の中で、組織に追い詰められることになる
それは、人体を研究する組織。

始まりは数日前に及ぶ。
私のもとに届いた一通の手紙
あなたは私たちの研究の対象になりました

研究?私たち?
なんのこと?

私はわけが分からず、ただ怯えて過ごすことになった。
「私たち」が何を指すのか。
「研究」というのがどういうものなのか。

ただ、不安でしかなかった。
そして、ついに「彼ら」は姿を現した。
黒塗りのベンツに、黒スーツ。
どう考えても普通の人達ではない。

私は彼らが私の部屋に向かってくるのを見て、財布と携帯だけを持って、外に急いで飛び出した。
彼らは私を見つけるなり、やはり追いかけてきた。

逃亡
なんてドラマの世界の話だと思っていたが、まさか自分の身に起きるなんて、考えていなかった。

まず考えたのは、セキュリティーがしっかりしている場所。
人目に付きやすい場所。
それを目的に動いた。
セキュリティーはしっかりしてはいなかったが、人目がしっかりしてるということで、まずは漫画喫茶で一夜を明かした。
寝る、なんてできない。

相手はどんな方法でくるか分からない。
もしかしたら、店員になりすましてくるかもしれない。

そして、今に至る。
電車、なんて密室を使わなければよかったと思ったが、もう遅い。
私の意識は、遠く離れていった。

感じるのは揺れている体の感覚。
それだけだった。

次に目を覚ました時には、私はよく分からない機械だらけの部屋にいた。
体は変な機材に繋がれ身動き一つ取れない。
頭に付けられた装置、指に絡まるコードが私の自由を奪う。

「目覚めたかな?」
自分の父親と同じくらいの男が、眼鏡ごしに私を見てくる。
銀縁メガネに、白衣。
胡散臭そうな研究員、といえば話は伝わるだろうか。
彼に見つめられると、意識が自由に効かないような錯覚を起こす。
「私に何の用?」
絞り出した声は、強がったつもりだったが震えていた。

彼は意外そうな表情を浮かべる。
「君には既に、手紙を出したつもりだったが」

受け取ったわよ。
でも、あれで何を分かれというの?

「君には我々の、試験を受けてもらう」
は?
試験?何の?
頭の中はパニックを起こしているが、頭の中とは正反対に、心は落ち着いていた。
「仮想パラレルワールドに行ってもらう」
意味が分からない。
「何を言ってるの?私を離してよ」
「これは決定されたことだ。そして君は選ばれた存在だ。離すことはできない」
男の指が私の顎にかかり、強引に顔を覗きこまれる。
「言っている意味が分からない!」
私の言葉に男は小さく笑った。
「君のことは調べさせてもらったよ。相内 莉奈くん。きみは過去にトラウマがある。母親を殺した罪」
心臓が止まるような気がした。
それは、開けてはいけない過去に封印したもの。
直接手を下したわけではないが、家が火事になったとき、私は母親を助けられなかった。
「パラレルワールドに行って、もしも母親に会えるとしたら、どうする?」
どうするーー
助けられなくて、ごめんね。
もう少し私が早く家に帰っていたらーー
私に勇気が合って、飛び込んで助けられたらーー
「どうする?パラレルワールドに行って、母親に会ってみたいと思わないか?」
それは甘美な誘惑だった。
「行ってみたーー」
そのとき、館内に非常ベルが鳴り響いた。
「何事だ?」
男が動揺した表情を浮かべる。
「少し待て、調べてくる」
そう言って男は部屋を出て行った。
お母さんに会えるなら、パラレルワールドに行くのも悪くないかもしれない。
もう一度、お母さんに会いたい。
私の決意は固まり始めていた。
そのとき、ふいに若い男の声がした。
「パラレルワールドはこの世と繋がっている。向こうに行っても、会えないよ」
若い男はさきほどの年配の男と同じ格好をしていたが、なぜか、安心させてくれる雰囲気があった。
「でも、会えるって」
「人の弱みにつけ込んだ甘い罠だ」
若い男は言いながら、私の体についた機材を外してくれる。
「きみは、ここから逃げるんだ。母親に会いたいなら、墓の前にでも行くことを勧めるよ」
機材から解放された私に、若い男は「こっちへ」と行って、着いてくるように促してくる。
私は瞬時する。
この男と一緒に行って大丈夫なんだろうか。
でも、わけの分からない試験に付き合わされるより、マシな気がした。
私は考えた後、若い男について行くことを決意する。
ドアを開け、廊下を男と一緒に走る。

そのとき、年配の男の声がした。
「どこに行く気だ?」
突き刺さるような、尖った声。
私と若い男の足が止まる。
「若林、貴様の悪巧みか」
若い男はゆっくりと、年配の男を振り返る。
「何のことですか?」
「とぼけるな、火災報知機のセンサーを鳴らしたのは貴様のせいだろう」
若い男は小さく微笑む「どこに証拠が?」
「お前がその女といる事が証拠だろう」
「彼女がトイレに行きたいっていうので、案内してただけですよ。あなたが戻る前に」
私は成り行きを見守るしかできない。
ふと、手の温もりを感じた。
若い男が私を守る、とでもいうように手を繋いでいた。
男の右手は白衣の中に、まるで何かをいままさに取り出さんと言わんばかりに入っている。
「仕方ありませんね。刺し違えますか?村内教授」
若林が取り出したのは、銃だった。
村内も、静かに銃を抜く。
私は固唾を飲んで一歩後ずさる。
若林と村内の視線は、相手を見据えたまま離れない。
「ここを真っ直ぐ行って、右に行くと出口だ」
私は始め、若林が何を言ってるのか分からなかったが「早く」と言う言葉に、我に返り若林の身の危険を感じながら、出口に向かった。
背後で銃声の音がした。
出口に辿りついた私は、そこでお母さんの姿を見た。
私がいたのはパラレルワールドなのか。
若林と村内がどうなったのか、私自身分からない。