RAKT

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俺が彼の部屋に行くと、友人である佐伯は死んでいた。
警察の話では死亡推定時間は、21時と言っていたが今は
23じである。
しかし、おかしい。
コーヒーが温かい。
俺はよくコーヒーを調べてみた。

ああ、見つけた。
俺は佐伯の好みを知っている。
コーヒーの上に浮かんでいる粉のようなもの。

それを知らない人間がいる。
彼の仕事仲間である、前島。

俺は前島に詰め寄った。
「前島、聞きたいことがある」
前島の様子が明らかに変わったのが、一瞬で見て取れた。
彼は冷静を装っているつもりかもしれないが。
「お前だろ?佐伯を殺したの」
明らかに動揺した様子を、隠せていない。

「そんなこと、あるはずないだろ」
「あるんだよ。お前は佐伯のコーヒーの好みを知らない」
前島と視線がぶつかる。先に視線を外したのは前島だった。
「佐伯は、コーヒーはブラックしか飲まない。砂糖が溶けている」

そう、この粉の正体は砂糖が溶けたもの。
恐らくは、レンジであたためたか。

前島は突然人が変わったかのように、叫び出した。
「佐伯が悪いんだ!一緒に会社をやろうって言っておきながら、金も何も俺から取るだけ取って」
俺は前島の言葉に何も言えなかった。
「でも、最後の情に、コーヒーがさめないうちに殺そうと思った」
「それがお前の、佐伯への撓むけか?」
前島は静かに涙をこぼし、小さく頷いた。

今、コーヒーは冷めているのだろうか。
それとも、まだ温かいままなのだろうか。

俺は答えを知らない。

9/26/2025, 11:28:50 AM