Episode.31 不条理
不条理とは| 検索
不条理とは、事柄の筋道が立たないこと。
道理、条理から外れていること。
「あーん?なんだっけこれ、どういうことだ?」
読んでいた小説に出てきた「不条理」がよく分からず調べたものの、さらに訳が分からなくなってしまった。
そうだ、こういう時はマブの織斗に聞こう。
"なー、世界は不条理で溢れているってとこの不条理って
なに?"
"バカに分かりやすく教えるなら、2+2=7になること"
"バカじゃねーし、分かりやすいありがとう"
返信はすぐに来たがとても腹が立つ。
でも分かりやすい、つまりは成り立たないってことか。
「じゃあここは、世界は成り立たないことで溢れてい
る…ってことか?」
たしかにそうなのかもしれない。
最近じゃ議員が脱税したってニュース見たし、これこそ「不条理」なんだろう。
議員だって、議員である前に一人の人間で、さらには国民なんだ。
日本にいるのに、なんで法律で定められている義務を果たさないのか。
国民に対して、日本に踏み入った人に対しての法律なのに、議員は脱税してもいいだなんてわけがない。
…なんて、俺が言えたことじゃないか。
そんな簡単な事じゃないのだろうか…。
世の中の条理・不条理なんて考えていたら、息をするのが苦しくなる。
ならば隠すのだ。
条理・不条理なんてお金で、言葉や技術でいくらでも隠せる。
世の中バレなきゃなんでもいいんだよな、そうだよ。
「はー…織斗ん家いこ」
Episode.30 泣かないよ
「もううちら卒業かあ、あたし泣いちゃうかも…」
卒業式の朝、登校中に隣に並ぶ女の子が呟いた。
彼女は小学校からの幼馴染で、私の親友。
「ねえ更紗、私、今日は何があっても泣かないよ」
「芭李の薄情ぅ……じゃあそれ絶対の約束ね!」
私は卒業式が待ち遠しかった。
私は昔から学校が嫌いだ。
理由は単純、本当に必要なことなんて学ばせてくれないくせに、社会人になるために無駄なことを学べと言われるのが嫌だった。
数学の方程式だって、別に使うとは思わない。
でもそれを解けるような思考判断を育てるためだということは、ずっと前から分かっている。
だから、嫌々でも生きるために我慢していた。
でもたまに、息をすることが、生きていることが辛くて醜いと感じることがある。
___キーンコーンカーンコーン。
「えーみんな、卒業おめでとう。
これから卒業式が始まります、移動前に身だしなみは
しっかり整えておくように。
緊張したり、途中で泣いても大丈夫。
でも顔を上げて、最後まで堂々と歩きなさい。」
そこからの記憶は曖昧だ。
卒業への喜びと、これから先の人生への不安、そしてこの場にいることへの緊張で頭が働かない。
「卒業証書授与」
その言葉が耳に刺さり、私の意識はスっと戻された。
前列に並ぶクラスメイトが次々と受け取っていく。
次、その次、またその次が私の番。
大丈夫、落ち着いて、自信持って___。
「っう、ふ……うぅう…芭李、はな…りぃ」
卒業式が終わり玄関を潜り抜けた直後、更紗が泣きながら抱きついてきた。
「更紗……また会えるんだから、そんなに泣かないで」
「あ、会えない!会えないよ!だって今日、さいごなん
だもん…たぶん」
その言葉に引っかかる。
会えない?そんな訳が無い。
連絡先も持っているし、家も歩いてすぐ近くにある。
「芭李、ぎゅーして、だいすき」
「…はい、私もだいすきだよ。
仲良くしてくれてありがとう」
その後、みんなで記念写真を撮って解散した。
私は更紗を誘ったが、今日はママとパパと帰るって決めてたの!と断られてしまった。
全く、最後だと言っていた割にはあっさりしている。
だがその時覚えた違和感に、間違いは無かった。
本当に最後で、断られた。
「もしもし、……ええ、芭李の母です。
…………え、嘘、…?
…っちょっと芭李!さっき更紗ちゃんが…!」
「…え?」
更紗は、卒業式の夜に死んだ。
原因は持病の手術によるものだった。
医療ミスではなく、もともと成功確率が10%だと言われるほどの手術だったという。
あれから1週間後、更紗の母が私に伝えてくれたこと。
「更紗はね、周りには目立たないだけで症状が進んでい
く持病があったの。
芭李ちゃんには心配かけたくないから!って聞かなく
て…それで卒業式の日、手術も内緒にしていたの。
…手術の前、芭李ちゃん宛てに書いた手紙を預けられ
て、もし私が死んじゃったら渡してねって…これ。」
意味がわからない、なんで隠した?
同情されるのが怖かったの?私が心配しすぎてみんなのように接してくれないとでも思っていたの?
迷惑かけてきたのに、かけたのに、変えられないことはかけちゃいけないと思ったの?
___こんなの、なにも習ってない。
入り乱れる感情で湧き上がってくる手の震えを抑えながら、渡された手紙を開封する。
思ってもいない、知りもしないことが、書かれていた。
"芭李へ
突然ごめんなさい。きっと心優しい芭李はあたしのこと
心配してると思う。ほんとにごめんなさい。
わたしは、みんなにずっと隠してきた持病の手術を受け
ます。成功確率は10%にも満たないらしいけど、あたし
まだ芭李と出掛けたいし、夏祭りの約束もしたから絶対
生きたい!って思った。だから受けることにした!
正直怖いし、死ぬ確率の方が高いのは分かってる。
でも手術しなかったら確実に1ヶ月以内に死んじゃうん
だって、ひどいよね!
だから私、確率が低くても生き延びられるよう頑張りま
す。でも、これが手に渡ってるならあたしは負けた。
どうせだから本音を書いておきます。
あたし、芭李に恋愛感情抱いてたんだ、知ってた?
自分では上手く隠してたつもりなんだよね、あたしって
結構女優派でしょ?(バレてたらどうしよう…)
でも持病とこの感情で、今までの関係崩れるの怖かった
し、崩れるくらいなら今の方が幸せだから隠してまし
た。自分勝手でごめんね。
ほんとは浴衣着て夏祭り行きたかった。海も、ハロウィ
ーンイベントも、イルミネーションも全部行きたかっ
た。でも全部出来なくなっちゃった。
ずっと自分勝手でごめんなさい。
大好きです。
追記!今日の絶対の約束、ちゃんと守ること!
またね芭李"
「……ごめんなさい、ごめん……っぐ、ぅ…まもれなくて、ご……め、なさぃ……」
絶対嘘に決まってる。
更紗、私も大好きだったんだよ。
最後の約束、守れなくてごめんね。
Episode.29 怖がり
こんばんは、お久しぶりです。
今日は久々に言葉を綴るので、僕のお話をしようと思います。
みなさんは「怖がり」だと言わた事はあるでしょうか。
よく耳にするよう言い換えれば「ビビり」ですね。
僕は実際、何度か言われたことがあります。
自分でも「怖がり」だと、「ビビり」だと昔から毎日思います。
例えば今日、出かけている時に事故に遭ってしまったらどうしようか。
災害が起きて、二度と今までのように過ごせなくなってしまったらどうしようか。
大切な人が居なくなってしまったら、自分から離れてしまったら、傷つけてしまったらどうしようか。
今後どの職業に就き、誰と関係を結び、どんな道を進む人生にしたらよいのか。
毎日毎日、不安や恐怖、そして期待に襲われています。
そんな恐怖に襲われている間の僕は、誰が見ても「怖がり」「ビビり」なんだと思います。
でも今日、久々にここに言葉を綴ろうとした今、なんだか分かった気がします。
確かに「怖がり」で「ビビり」なんだと思います。
でもそれは、自分が後悔のないよう生きたくて、少しでも華やかで眩しい人生を歩みたいからこそなんです。
だからこそ沢山考えて、その考えに怯えて、どうしようもなくて。
恐怖に襲われている間は盲目なんです。
目の前の恐怖しか見えていなくて、誰にも分かって貰えなくて、分かって貰えるのが怖くて堪らないんです。
それに怯えず、自分のありのままを伝え、受け止め、共に歩める人なんてまず居ないんです。
居ないけれど、誰かにとっての一部になりたいと思う人は傍に寄り添うんです。
正直、こんなに綺麗事のようなことばかり綴る僕自身、今も恐怖に襲われかけています。
明日、目が覚めた時にはどんなことを考えているのだろうか。
変わらず自分を下げるような、自分よりも数字の評価が低い人を心で貶すような考え方であるのか。
そもそも明日は、まともに息が出来ているのだろうか。
遠い未来に限らず、1秒後、1日後、1年後。
近い未来ですら不安で堪りません。
でも「怖がり」で、 「ビビり」でいいじゃないですか。
僕は誰かに必要とされ、愛し合うことに執着しています。
でもそんな人なんて居ない、毎日そう思っています。
怖くて堪らない、でも死を選ぶことはできません。
正確には、死を選んだけれど上手くいかなかったんです、失敗してしまって今ここにいるんです。
失敗してからはこう思います。
僕が探し求める人が居なくても、そんなの分からない。
それに、与えられた時間はきっと長いはず。
ならば自分を必要とし、愛してくれる人がいるのか探せばいいじゃないか。
「怖がり」とは、わずかなことにもこわがること。
また、そのような人。
辞書を引けばこんな言葉が綴られています。
しかし僕はまた別の意味があると思います。
みなさんの人生に後悔が残らぬように。
長く眩しい、爽快な朝。
短く煌めく、儚い夕方。
長く静寂な、孤独な夜。
いつものように目覚め、また眠る時。
みなさんの人生に幸多からんことを。
「怖がり」とは、わずかなことにもこわがること。
また、そのような人。
そして、強く繊細な意志を持つ者のこと。
Episode.28 君からのLINE
いくら待っても既読がつかない。
あの日から、もう2年が経とうとしている。
2年前の7月14日午前9時過ぎ、君は突然自ら命を絶った。
毎日起きたらおはよう、その日の事や遊びの予定を話して、寝る前にはおやすみ。
そんな当たり前なことを繰り返していた。
それが当たり前だと思っていた。
君が遺したLINE。
僕はその日、早く家を出たため丁度見れなかった。
君が命を絶った日、家に帰ってからLINEに気が付いた。
" ○○くんへ
今日もおはようって言えて嬉しいです。
そんな中僕は今日、自分で命を絶とうと思います。
理由は単純で疲れたから、耐えられなくなったから。
あのね、僕、お父さんに×××されてたの。
言ったら気持ち悪いだろうし、お父さんに殺されるかも
しれなくて、それが怖くてずっと言えなかった。
ごめんね、 ○○くんはきっとそんなことないって、大丈
夫だって信じてたけどやっぱり怖かった。
もし、僕が死んだ時警察の人に何か言われても、このこ
とは2人だけの秘密にして欲しいんだ。
○○くんと話せなくなるのは辛いけど、でも、お父さん
や他の酷いことから逃げるにはこれしか無かったんだ。
○○くんはずっと幸せでいてね。
○○くんが助けて欲しい時は助けてって、僕に助けてって
言ってね。
辛くて話聞いて欲しい時でも、危ない目に遭いそうな時
でも、いつでも絶対助けるよ。
よーし言いたいこと全部言えた気がする!
○○くん、今日まで僕と仲良くしてくれてありがとう。
今日はおやすみ言えなくてごめんね。
○○くん大好きだよ、またね "
その後、僕の家に警察官の人達が事情聴取をしに来た。
「あなたにとって、今は辛いと思いますが…もし何か知
っていることがあったら教えてくれませんか?」
「…ごめんなさい、2人だけの秘密にして欲しいんだっ
て、そう約束してしまったので…言えません…」
「……そうか、分かりました。
もし話せることがあればいつでも教えてください。」
あれから2年後の7月14日午前9時過ぎ、僕はなんとなくLINEを開いた。
まだ君のことが忘れられない、完璧に受け入れられても立ち直れてもいない。
でもあと日のように全部諦めることはやめた。
君が助けてくれるから、君は僕を最後まで信頼してくれたから。
きっと大丈夫。
僕には君が見えなくなってしまったけど、傍にいてくれているような安心感がある。
もう2度と、既読もつかない相手にLINEをした。
" おはよう、今日は休みだからカフェでまったりするよ。
もし時間があったら、君も一緒がいいな。"
一瞬苦しくなった胸は、すぐに安心へと変わった。
今日は久しぶりに、2人で出かけられるのだと分かった。
Episode.27 命が燃え尽きるまで
命が燃え尽きるまで、全力で生きよう。
そう思った5分後、突然死することだってある。
いつ尽きるか分からない、生と死は隣り合わせなのだ。
ただ私は、私は今の辛い人生のまま終わりたくない。
辛いことがあれば、楽しいこともあるとみんな言う。
そんなわけない、そう思っていた時もあった。
でもそんな考え方はもうやめた。
分からないなら分からないなりに考え、努力する。
正直諦めたかったが死ぬ勇気すらなかった。
それならその勇気が湧くまででもいいから。
そんな事考えなくなってもいいから。
どうせ死ねないのだから、信じてみることにした。
その楽しみが、私が生きているうちに起こるのか。
今日は何となく早起きして、散歩をすることにした。