宵風に吹かれたい

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7/11/2025, 4:44:35 AM

学年1位のお前と学年2位の俺の逃避行。

「せっかくだし冒険しようぜ!」

少年のように無邪気な笑顔でお前は言った。俺が見たことないような顔だった。もしかしたら今までは「学年1位の優等生」というレッテルの手前、見せたくても見せられない部分だったのかもしれない。
でも、俺はお前のそんなとこを見れてるんだよな。なんだか優越感に浸れた。
そうだな、お前とならどこまでも行けるよ。

そこから俺たちはどこまでいったかな。
手を繋いで、走って、止まって、笑い合って、人目のない場所を歩いていたかな。そんな時お前が言った。

「お前はさ、男と恋愛っていう冒険はどうかな。」

不安そうな顔に胸が高鳴る感覚を覚えた。
そうか、俺の優越感は「好きな人を自分だけのものにできた」から来るものだったのか。
それを知ってしまえばお前の誘いに乗るしかない。
勿論だ。と

これからは
   学年1位のお前と学年2位の俺の
           落ちこぼれ恋愛冒険物語だ。

7/9/2025, 10:31:27 AM

「あの1番明るい星がおおいぬ座!オリオン座の左下ね!シリウスって言うんだよ!」

夜空の下を歩いていた少女が言った。
それに続けて、「卒業をしたら違う高校だから届けたい想いはあの星に」そう提案をした。
少女の友達はLINEの方がいいじゃん、と言う。
すると少女は頬を膨らませて怒った。

「ロマンチックなのが良いんじゃん!」

1番明るい星に2人だけの想いを届ける。そういうのが少女の憧れらしい。少女の友達は彼氏とやれ。なんて思ったが、恋人のいない少女は無理矢理小指をつなぎ合わせ約束をした。

あの頃の約束をふと思い出した少女達は星に想いをはせる。
届け……と少し離れた場所で2人笑いながら。

7/9/2025, 7:20:17 AM

いまだにあの日の事を夢に見るんだ。
仲間の期待、不安、信頼を背負った、あの一球を打ちきれなかった、壁が立ち塞がる頂上の景色を。
点は25対26。あの一球を打ちきれなければ春高にはいけない。
そんな状況の中でエースの俺に託された3本目の球。
俺はあの時、最低な事を考えたんだ。頼む、俺にあげないでくれ。なんて、エースなのに情けない。ミスをするのが怖かった。もし皆んなを春高に連れて行けなくなったら、そう考えると助走が遅れた。足がすくんだ。ジャンプできなかった。腕を振りきれなかった。
おかげでブロックに捕まった。綺麗なドシャットだったなぁ。敵の歓声、仲間の嗚咽。歓喜と絶望の入り混じったあの景色。
全部全部、鮮明に覚えている。
後悔してももう遅い。一瞬でも躊躇ってしまった時点で俺の負けなんだ。
トスが悪かったと謝るセッター、カバーにいけなかったと悔やむレシーバー、俺がトスを呼んでいればと溢すアタッカー。
違う、俺が悪いんだ。エースなら決めるべき場面だったはずなのに。

そんなあの日の景色が毎晩夢に出てくる。あぁ、今日も決められずに終わった。俺はあの日を幾度も繰り返す。

今日も、あの日の景色を変える事に囚われながら。

7/7/2025, 12:19:19 PM

今日は七夕。だから短冊に願い事を書いている。
これは夏に入ってからずっと悩んでいる事だ。コレは母さんにも言ったんだ。でも、母さんに言ってもどうにかなる事じゃなかった。
だから俺は藁にも縋る思いでショッピングモールの笹に短冊をくくりつけて、手を合わせる。こんな事意味ないと分かりながら。
一説によると七夕の願い事は織姫様が叶えるらしい。お願いします、織姫様。どうか、どうか、俺の願い事を聞いてください。
これからは夜更かしも、塾をサボる事もしませんから。
10分程その場に居ただろうか。流石に周りから変な目で見られるのでその場から足早に退散した。

家に帰ってきてからも、俺は天の川を見ながら手を合わせる。
そして恐る恐る母さんに聞く。

「今日の夜ご飯何?」

母さんはにっこり微笑んだ。ほっとしたのも束の間。

「豚とキュウリの炒めものよ。」

食卓に並んでいくキュウリ達を見ながら絶望する。
あぁ、織姫様。貴方はなんて残酷なんだ。俺はあんなに願ったのに。

     "もうキュウリは食べたくない"
                   ってさ。

7/7/2025, 9:08:58 AM

俺が幼い頃、地元の近くの神社で一目惚れをした。
その事を爺ちゃんに言ったら、

「そりゃあ神様じゃろぉ、お前は厄介な恋をしたなぁ。」

と言われた。確かに言われてみれば人間ではない。
袴を纏い、頭からは狐の様な耳を生やした少女。
爺ちゃんが言うにはあそこの神社には狐の神が祀られているらしい。
昔、人間は狐を怖がり、害のあるものとしていた。
だから災いが起きる前にあの神社に祀って、お供物をしていたんだとか。
爺ちゃんは俺の恋を空恋だと言った。人間に閉じ込められた神と、人間の俺では恋は実らないと。
それでもあの神が頭から離れなかった。それは40になった今でも同じだ。
あの神を忘れる為に彼女も作った。でも結局は彼女を好きになりきれず別れて、40になっても独身 子なしだ。
なあ、神様、一回だけ俺の告白聞いてほしい。それで断られたら諦めるから。

「好きだよ、狐の神様。」

ポツリと呟く。

「ワシもじゃ。」

天から降ってきた声に目を見開いた後、俯いて笑った。
どうやら、俺の空恋は終わりそうにない。

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