俺が幼い頃、地元の近くの神社で一目惚れをした。
その事を爺ちゃんに言ったら、
「そりゃあ神様じゃろぉ、お前は厄介な恋をしたなぁ。」
と言われた。確かに言われてみれば人間ではない。
袴を纏い、頭からは狐の様な耳を生やした少女。
爺ちゃんが言うにはあそこの神社には狐の神が祀られているらしい。
昔、人間は狐を怖がり、害のあるものとしていた。
だから災いが起きる前にあの神社に祀って、お供物をしていたんだとか。
爺ちゃんは俺の恋を空恋だと言った。人間に閉じ込められた神と、人間の俺では恋は実らないと。
それでもあの神が頭から離れなかった。それは40になった今でも同じだ。
あの神を忘れる為に彼女も作った。でも結局は彼女を好きになりきれず別れて、40になっても独身 子なしだ。
なあ、神様、一回だけ俺の告白聞いてほしい。それで断られたら諦めるから。
「好きだよ、狐の神様。」
ポツリと呟く。
「ワシもじゃ。」
天から降ってきた声に目を見開いた後、俯いて笑った。
どうやら、俺の空恋は終わりそうにない。
7/7/2025, 9:08:58 AM