宵風に吹かれたい

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12/4/2025, 8:07:28 AM

朝早く起きてリビングに向かう時、後ろからトトトトという足音が聞こえる。
トイレも台所もリビングも、どこに行ってもその足音が付きまとう。

本人はバレてないつもりだろうか?それともバレても問題ないのだろうか?
どっちにしろ可愛すぎる。
野生で生きてこなかったウチの猫。足音を無くすなんて知らないんだろうなぁ。

肉球と床の触れる音が愛おしい。

ベットから私がいなくなって寒くなると、こうして後をついてくる。

冬限定の足音は、きっと私だけのもの。

12/2/2025, 9:19:20 AM

冷たい。寒い。
冬の夜のベランダでそんなことを考える。
部屋の中には母親と知らない男がいて、肉と肉がぶつかる音と、男女の甘い声が聞こえてくる。

いつもなら母親が男を連れてくる時はちゃんと出掛けていたのに。おかげで狭いベランダに締め出された。防寒具なんてない。
肉のついていない体と、ペラペラなシャツではこの夜を乗り越えられるわけがない。

目を開ければ星空が広がっている。綺麗だなんて今の自分には思えなくて、冷たい風と星の眩しさが嫌になる。
僕はただ1人孤独に朝を待つ。
きっと、世界は寒くて凍えてる僕よりも、この輝く星空に注目するから。

11/29/2025, 10:45:55 AM

世界から音が消えたら、どんなに生きやすいだろう。
罵詈雑言も、耳障りな笑い声も、全て消えてしまったら、この世界はどれほどキレイになるんだろう。

だから鼓膜を突いた。鈍い痛みの後に生ぬるい液体が耳を伝っていくのが分かる。
途端に世界から音が消えた。
街に出ても何も聞こえない。ただ、ネオンの光が僕の目を刺激するだけ。

怒鳴っているであろう男も、獲物を狩る目をした女も、うるさいはずの弾き語りギターも、全ての音がない。なんて心地いいんだろう。

失った?違う、手放したんだ。
うざったい響きを、僕のこの手で。

11/29/2025, 5:38:27 AM

朝、目を覚まして窓の外を眺める。
霧が深くて遠くまでは見えないけど、子供達の楽しそうな声が聞こえる。
パリパリ、キャッキャッ、ザクザク。
霜が降ったんだなぁ。霜の降った葉や土を踏んで遊んでる光景が目に浮かぶ。

私も、外へ出たいな。
薬の作用で髪は抜け落ち、手足は痺れ、吐き気なんて毎日で。毎朝痛みで目を覚ましては絶望感に打ちのめされる。

あぁ、私も、あの地へ足を下ろしてみたい。
霜枯れしたように動かない体を憎む。

憎んだところで、霜は溶けない事を知りながら。

11/24/2025, 8:00:24 AM

今日は塾。明日はピアノ。明後日はバイト。
そうやって手放してきた時間が、私のためじゃない事くらい知っている。
母親の第二の人生のコマでしかない。
友達からの誘いも断って、全ての時間を将来に投資する。

後ろから聞こえる楽しそうな笑い声、グラウンドから聞こえる沢山の黄色い声援、体育館から聞こえるシューズが床を擦る音。青い春を見ないフリする。
いつの間にか耳に入るのは自分の孤独な足音だけ。

私が手放した時間には、いったいどれほどの青い春があっただろうか。
私の人生は母親の人生。失敗した母親のための人生。
母親のために手放した時間に、私はいない。

全ては母親のため、私は従順なコマとなる。

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