世界の終わりに君と 6/8 (土).
テレビの速報で突然流れた言葉、「地球滅亡」。
明日なにするかと、みんなバタバタバタとする。
鶏がコケコケ鳴くようで、世界がどうもうるさかったんだ。
特にしたい事もないけど、最期の瞬間くらい、君と…
そう思い、彼の家へ足を運んだ。
「どうしたの」
『ちょっと話したくて』
「そっか」
別に付き合ってないけど、最期の瞬間くらい好きな人と
いたいのは全女子の性だろう。
他愛のない話を5分くらいしただろうか。
滅亡まであと10分。
…最期を共にしたいと、
伝えようとした時だった。
『あの、…最期の瞬間、一緒にいn』
「…そろそろ地球滅亡だから彼女のとこ行くわ、じゃあね、また来世な…」
そう言い残し、彼はそそくさと目の前から
いなくなってしまった。
…ああ、そうか。
失恋、独り、絶望…
それらが混ざった感情は、縮んだ風船のようにくたっとした。
『最期の最期で1人ぼっちか、ははははは』
自分でも泣いてるのか怒ってるのか笑ってるのか分からなかった。
ただ、彼の存在を消したくて残したくて、
苦しむ心が破裂すると同時に、世界が滅亡する瞬間を
待つしかなかった。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
最悪 6/6 (木).
「もう頑張ったよね。」
私は十分に頑張ったはずだ。人間関係も勉学も、家庭環境も自分自身にも部活にも。
一つ一つ向き合って、頑張った。…ただ、結果が出なかっただけ。
十分、十分がんばった。もう無理しなくていい。
そろそろ、空に昇っていい頃だ。
私はそう自分自身に言い訳して、冷たくて塩臭い、そして
どこまで寛くて青い海に足を入れた。
…寒い。
奥深く、喉元に差し掛かるまで海に入っていった。
悲しげに、チラチラと光る月を横目に潜る。
…あつい。きもちわるい。くるしい。
海底から、月を見ようと目を開けようとしたが怖くてやめた。
私の意識は、顔を深く入れた所で途切れた。
.。o○ ○o。.𓆞 𓆜𓆛
次に意識が繫がったのは、数時間後のことだった。
医者が安堵したように、申し訳無さそうにこちらを見る。
どうでもいい話をした。くだらない話。
ここはどこですか?ここはびょういんです。
なぜわたしはびょういんに?あなたがおぼれていたからです。
だれがみつけてくれたんですか?そこのおにいさんです。
あなたをたすけるためにむちゃして、…ごりんじゅうしました。
この会話を、脳で何度も繰り返す。受け入れたくない。
ふと、隣を見ると、見知った、優しい顔のあの子がいた。
息をしなかった。眠っていて、ただ、つめたかった。
髪が、塩水で濡れていた。
『最悪』
そんな言葉をぼそっとこぼして、
この世界から逃げるように目を閉じた。
.。o○.。o○.。o○.。o○○o。..。o○
あとがき
今回は、「奇麗な鬱」をテーマに書きました。
どろどろとした鬱も好きですが、キラキラしてるのに、中身は痛々しくって、
後悔の詰まった鬱も私好みです。海も作品中に出てきたので、文中で.。o○←も
使ってみました。溺れるシーンを再現したつもりです。
ヒエログリフも使いました。やはり切なげな作品にはヒエログリフが映える。
奇麗な鬱も、たまには良いですね。それではまた。
最近季節の変わり目ですので、風邪にはお気をつけて下さい。
.。o○.。o○.。o○.。o○ 𓆡 𓆜𓆝
誰にも言えない秘密 6/6 (木).
友達のシャーペンを壊してしまった。…壊してしまった、というよりも、
壊した、の方が正しいだろうか。そう、意図的に壊したんだ。
放課後、誰もいない教室で。無防備に机で眠っているかのように
置かれているシャーペンを、握って、落として、引っ張って、叩いて、投げた。
何度もしている内に、みしっ、と音を立てて壊れた。
そのシャーペンを見て、ああ、やってしまった。という言葉が脳に詰め込まれ、
身体中を「後悔」が捩った。
私はそのシャーペンを、友達の机に入れ、ひそかに教室から立ち去った。
次の日の事、教室にやって来た友達は、そのシャーペンを見て、
不思議がり、怖がり、悲しがり、怒っていた。
「な、なんで…なにこれ、誰がこんな…」
と慌てる彼女の隣に行き、私は「やさしいともだち」の仮面を
顔にこびりつけて話しかける。
『大丈夫?酷い…誰がこんな事…!みんな来て、△△ちゃんのシャーペンがね…』
といい女の子ぶってみたりしちゃって。我ながらいい演技だ。
するとカースト上位の女の子が寄ってきて、
えぇーっ、ひどい!なにこれ〜!だとか、男子でしょ!誰がやったの!?だとか。
勝手に話合って共通の敵を作る。
そうそう、これこれ。こういう展開を期待してたんだよね。
こういう、1人の絶望を餌に周りが寄ってきて、善人ぶってるやつらを
眺めてるの。本当に気持ちがいい。
…何より、一番気持ちがいいのは。
━━━━━━━
放課後、彼女と帰る時。
『シャーペンのこと、気にしないでいいからね?
何かあったら頼って。絶対助けるから。』
「…うんっ、ありがとう…」
そう!これ!!あ、やばいこれゾクゾクキちゃうかも。
この、彼女の疑うような、でも信じてくれているような、怯えているような。
そんな瞳でこちらを見てくる。私を、見てくれる。
あぁ、好きだ。
今度は何を壊そう。筆箱?それともキーホルダー?それともそれとも…?
ーーー
△△視点
気づいてない訳無いのにな。
私は知っている。私の友達が、放課後こっそり私の私物を壊しているのを。
次の日に、必ず誰よりも最初に寄ってくることも。
こんな展開はこれで67回目。もう呆れたけれど。
私といる時、どんな理由があれど、私を恍惚の表情で見つめてくる、
あの瞬間。気づいてない訳ないでしょ、あなたが私のこと好きってことくらい。
歪んだ愛しか渡してくれないことも。
大丈夫、私は貴方のヒミツ、言いふらしたりしないから。
だから貴方も、私が貴方を好きって事も秘密にしてね。
「誰にも言えない秘密」。私はちゃんとわかってるよ。
ーーー END
あとがき
初めて長めの話を書いて見ました。やはり書くのは楽しいですね。
今回のテーマとして、「誰にも言えない秘密」と同時に、
「お互いの歪み」をテーマにしていました。
人って、あまりの純粋さに触れたら、歪むものだと思っています。
主人公ちゃんは、△△ちゃんの、
「怯えたような瞳」「疑うような、信じてくれているような瞳」
と表していますが、△△ちゃんは、
「恍惚の表情」、「歪んだ愛」と表しています。
お互いがお互いをなんだかんだ好きなのは確かなのですが、
主人公ちゃんは自分を信じてくれる、馬鹿みたいに純粋な△△ちゃんが好きで、
△△ちゃんはそんな嘘の自分(純粋)に酔いしれてる、馬鹿みたいな主人公ちゃん
が好きで……
お互いの気持ち悪い歪みを、少しでも好きになってくれたらと思います。
長文読んでくれてありがとう!
真夜中 5/17 (金)
眠れない。
新しい環境のストレスなのか、はたまたもう限界だったのか。
最近リストカットをし始めた。遺書を書こうとも考えた。
ストレスなのかコーヒーを飲んだせいか。
眠れない。眠れない。眠れない。眠れない。
下に降りてテレビを見る事にした。
親や兄弟が寝ている時に一人夜中に下に行く背徳感。
なかなかこれはやめられるものではない。
テレビを眺めながらホットミルクを飲む。
ああ、なんだ。寝れるじゃないか。
そう思い、上に戻れば目が冴える。
こんな夜をいつも繰り返す。
愛を叫ぶ。 5/11 (土).
あなたが屋上へ向かう姿を見た時から。
とてつもなく嫌な予感がしていた。全身を纏う悪寒。
あなたに後ろから着いていく。
屋上にあなたが着いた所で、あなたは靴を脱ぎ、フェンスに座った。
予感は的中。
あなたが 何に絶望していて 何が辛くて 何が怖いのか。
私は全然知らなかった。けど……
知っていてほしいことがある。
「私は!!!あなたが!!!大好き!!!!!!」
大声で愛を叫ぶ。
するとあなたは振り向いて、大粒の涙を流しながら
にこり、と笑い返した。