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誰にも言えない秘密 6/6 (木).

友達のシャーペンを壊してしまった。…壊してしまった、というよりも、
壊した、の方が正しいだろうか。そう、意図的に壊したんだ。

放課後、誰もいない教室で。無防備に机で眠っているかのように
置かれているシャーペンを、握って、落として、引っ張って、叩いて、投げた。
何度もしている内に、みしっ、と音を立てて壊れた。
そのシャーペンを見て、ああ、やってしまった。という言葉が脳に詰め込まれ、
身体中を「後悔」が捩った。
 
私はそのシャーペンを、友達の机に入れ、ひそかに教室から立ち去った。

次の日の事、教室にやって来た友達は、そのシャーペンを見て、
不思議がり、怖がり、悲しがり、怒っていた。

「な、なんで…なにこれ、誰がこんな…」

と慌てる彼女の隣に行き、私は「やさしいともだち」の仮面を
顔にこびりつけて話しかける。

『大丈夫?酷い…誰がこんな事…!みんな来て、△△ちゃんのシャーペンがね…』

といい女の子ぶってみたりしちゃって。我ながらいい演技だ。
するとカースト上位の女の子が寄ってきて、
えぇーっ、ひどい!なにこれ〜!だとか、男子でしょ!誰がやったの!?だとか。
勝手に話合って共通の敵を作る。

そうそう、これこれ。こういう展開を期待してたんだよね。
こういう、1人の絶望を餌に周りが寄ってきて、善人ぶってるやつらを
眺めてるの。本当に気持ちがいい。
…何より、一番気持ちがいいのは。

━━━━━━━

放課後、彼女と帰る時。

『シャーペンのこと、気にしないでいいからね?
何かあったら頼って。絶対助けるから。』

「…うんっ、ありがとう…」

そう!これ!!あ、やばいこれゾクゾクキちゃうかも。
この、彼女の疑うような、でも信じてくれているような、怯えているような。
そんな瞳でこちらを見てくる。私を、見てくれる。

あぁ、好きだ。
今度は何を壊そう。筆箱?それともキーホルダー?それともそれとも…?

ーーー
△△視点

気づいてない訳無いのにな。

私は知っている。私の友達が、放課後こっそり私の私物を壊しているのを。
次の日に、必ず誰よりも最初に寄ってくることも。
こんな展開はこれで67回目。もう呆れたけれど。

私といる時、どんな理由があれど、私を恍惚の表情で見つめてくる、
あの瞬間。気づいてない訳ないでしょ、あなたが私のこと好きってことくらい。
歪んだ愛しか渡してくれないことも。

大丈夫、私は貴方のヒミツ、言いふらしたりしないから。
だから貴方も、私が貴方を好きって事も秘密にしてね。
 「誰にも言えない秘密」。私はちゃんとわかってるよ。

ーーー END

あとがき

初めて長めの話を書いて見ました。やはり書くのは楽しいですね。
今回のテーマとして、「誰にも言えない秘密」と同時に、
「お互いの歪み」をテーマにしていました。

人って、あまりの純粋さに触れたら、歪むものだと思っています。

主人公ちゃんは、△△ちゃんの、
「怯えたような瞳」「疑うような、信じてくれているような瞳」
と表していますが、△△ちゃんは、
「恍惚の表情」、「歪んだ愛」と表しています。

お互いがお互いをなんだかんだ好きなのは確かなのですが、
主人公ちゃんは自分を信じてくれる、馬鹿みたいに純粋な△△ちゃんが好きで、
△△ちゃんはそんな嘘の自分(純粋)に酔いしれてる、馬鹿みたいな主人公ちゃん
が好きで……

お互いの気持ち悪い歪みを、少しでも好きになってくれたらと思います。
長文読んでくれてありがとう!



6/6/2024, 9:54:01 AM