風邪をひきこんで高熱でうなされた。
夜、天へ登っていく感覚があった。
ふと、見下ろすと、君が部屋でぼんやりテレビを見ていた。
その時感じた言い表せない気持ちを自覚した途端、上へ登っていく感覚が終わり、気づいたら朝目が覚めて、涙が頬に流れていた。
君の弱さや脆さに直面して、私が受け止めきれないこともあったね。この現実は誘惑や甘い罪がたくさんあってとても苦しいね。
この世の中はきっと天国なんかじゃない、ゆるやかな地獄に近いのかもしれない。
でもね、ふいにみせる君の、無邪気に笑う顔はとても素敵だから。
それをいつまでも、いつまでも見たいと思うから。
きっと明日も、君と生きていく。
ー天国じゃなくてもー
呼ぶ声が彼方から聞こえる
深い深い彼方から聞こえる
お前はどうしたいか
どう生きたいか
この世界を終えるまで
名前を何度も何度も呼ばれ
必死で掴んだ手は
柔らかくて 静かだった
その手のひらのぬくもりとともに
問われる声から、逃げない
ー声が、聞こえる
夜が明けたら
君の心に伝う雫もきっと飲み干せるから
夜が明けたら
私の心に巣食う恐ろしい獣も
きっと静かになるから
夜が明けるまで ひっそりと息を潜めると
満月がゆらゆら揺れながら輝きを放ち
2人の間にこぼれていった
もし空架ける天の川に願うのなら
明けない夜も眩しすぎる朝も
寄り添う傘ふたつであることを
ー夜が明けたらー
君の生まれた日が
私の心のカレンダーに
赤丸で書き加えられたあの瞬間
モノクロだった私のカレンダーが
彩り鮮やかになっていったよ
2人で初めてデートした日、手料理を作った日、
心のカレンダーに、ポップでカラフルな
ラインマーカーで縁取っていく
哀しい日もあるね。2人で肩を寄せ合って
涙を堪えた日もあるね
涙色のマーカーで昨日を縁取ったら、
明日へ向けて一休み
けたけたと笑う日も涙の日も、どんな日も
心のカレンダーは続くよ
寄り添いながら続くよ
カレンダーの最後の頁には
思いっきりでかでかと
ピンクのラインマーカーで
「ありがとう」
ー心のカレンダーー
暗い暗い螺旋階段を歩いていた
喪失感を抱きながら
薄汚れた私は1人歩く
どこまでも歩く
喪われた夢、記憶….
永遠に取り戻せることはない
目的もなく彷徨い歩いていた時
壁に一つの花が咲いているのを見つけた
恐る恐る懐中電灯で
照らしてみると
鱗粉が光に反射して
眩しく瞬いた
いつの間にか溢れでる涙は
いつまでも続き
手のひらにあたたかく落ちた
「綺麗だね」
ふと振り返ると
いつの間にか君が 君たちが
そばに立っていた
1人で彷徨っていたつもりが
同じ世界に
誰かの息吹があったのか
そう気づくと
手元に持つ懐中電灯の光が
虹色に輝きだし
螺旋階段の通路を
笑い出しそうなくらい
優しく照らし未来へ射した
『喪失感、その向こうへ』