昔、親に怒られて嫌な気分になった時は、親が居ない自分だけの楽しい世界(理想郷)を一人で想像していた
ただ、全部自分が想像する理想世界と言うのも、結果が分かってつまらなくなってきて、結局現実と向き合う。なんて事を何度か繰り返していた。そうしている内に少しずつ思い始めた
何もかも上手く行く世の中は楽しく無い。逆に、全て上手く行かない事しか無い世の中も楽しく無い。上手く行く事も行かない事も全て平等にあって、それが分からないから楽しいんだと
そう思う様になってからは嫌な事から逃げず、向かい合う様になった
理想郷 作:笛闘紳士(てきとうしんし)
小学校の卒業式の1週間前だっただろうか?その日、クラス皆んなでタイムカプセルを校庭にあるバスケットゴールの下に埋め、成人式の後に掘り返しにくる事になった
それから時が経って、俺は小学校時代のクラスメイト達と成人式で再会を果たした。中には家の事情で引っ越してタイムカプセルを掘り返しに来る事が出来ないクラスメイトや、仕事や学業で成人式や掘り返しに参加出来ないクラスメイトもいた。けれど、同じクラスだった生徒の半数はタイムカプセルを掘り返しに集まった
それから集まった皆んなでタイムカプセルを掘り返す作業を開始した。
(どれだけ地中深くに埋めたのだ?)と、過去の自分に尋ねたくなる程掘った時だった
ようやくタイムカプセルを包んだ袋が出て来た。その深さに俺は、小学生だった時の底なしとも思える体力に驚愕した。恥ずかしい話、一緒に掘ったクラスメイトも全員息が上がっていた
タイムカプセルを包んだ袋が見えてからは掘り起こすまでそれほど時間は掛からなかった
いよいよタイムカプセルを開ける時。俺はドキドキしていた。他のクラスメイトも同じ気持ちだったと思う。そして、タイムカプセルの蓋が開かれた
俺は何を埋めたか覚えていなかった。けれど、俺の名前が書かれた袋から出て来たのは、小学校の修学旅行で買った金色の剣のキーホルダー・6年生の時に亡くなったコーギー犬(タタミ)と一緒に家族でお花見に行った時の写真・首輪・リードの4つだった。それを見て懐かしく思った。そして、タイムカプセルの一番下には過去から未来の自分への手紙が束ねられて入っていた
それから皆んなで校舎に入り、当時座っていた席にそれぞれ座って過去の自分からの手紙を順番に発表した。その最中、目の前にあった6年生の机を見て小さく感じた
過去の俺からの手紙の内容について簡単にまとめると
・ペットロスは無くなりましたか?
・彼女は出来ましたか?
・○○ちゃん(当時好きだった子)と結婚出来ましたか?
・夢は叶いましたか?
・剣入れるの恥ずかしくなるからやめとけって言われてましたが、今その剣を見て恥ずかしいですか?
と言う様な内容の手紙だった。
それに対して俺は他のクラスメイトの過去からの手紙を聞きながら、心の中で過去の自分からの手紙の質問全てに回答した
・悲しみは無くなった
・出来てない
・してない
・まだわからない
・入れた事が恥ずかしい
そう思っている間に俺が発表する順番がやってきた。ただ恥ずかしかった俺は当時好きだった○○ちゃんと結婚出来ましたか?の文面については飛ばした。そして全ての発表が終わって帰る前、参加したクラスメイト全員の携帯で1枚ずつ集合写真を撮った。その時撮った写真を俺は携帯の待ち受けにしている
(待ち受け画面変更のやり方を忘れて変更出来ていないだけ)
懐かしく思うこと 作:笛闘紳士(てきとうしんし)
【気まぐれ一言】
最近は仕事が忙しく、投稿時間が22時過ぎになる事も多いです。俺が帰ったら子供達は夢の中 なんて事も😓
自分の人生を一つの物語として考えた時、結婚は未婚の自分の人生とは大きく分岐する、もう一つの物語だと思う
そして俺は今、結婚をした物語に居る。
もう一つの物語 作:笛闘紳士(てきとうしんし)
[まゆ 私の人生No.❓]
私が幼稚園から帰ってくると、ママは料理を中断し、携帯でパパと話していた。電話が終わるとママは私に言った
「おかえり。そうだ、まゆ」
「何?」
「今日はパパが仕事から早く帰って来て、良い所に連れて行ってくれるみたい。それで、ついでに外へ食べに行く事になったから着替えてパパ待ってよっか」
「良い所って?」
「行ってからのお楽しみ」
そう言ったママの表情は、とてもワクワクしているみたいだった
服を着替えた私は幼稚園での疲れが出たのか、リビングのソファに座って録画していたアニメを見ながら何度か寝落ちしそうになっていた。録画していたアニメを丁度見終えた頃、パパが帰ってきて家族3人で、車で1時間程の場所にある街へと向かって、その街のファミレスで夕食を食べた
夕食を終えると外はすっかり暗くなっていた。店を出るとパパが、私が 暗がりの中で 迷子にならない様にと、私をおんぶして歩いた。それから少ししてパパが足を止め、私達に言った
「いよいよだぞ」
次の瞬間、さっきまで暗がりだった景色が一変し、街の至る所が綺麗にライトアップされた
そう、パパがママと私を連れて来た良い所は街を使ったイルミネーションだった。その光景に私は思わず声を漏らした
「綺麗」
想像よりも、それは綺麗な光景だった。パパの背中から初めて見るイルミネーショはまるで、夢の中に居るかの様だった。そんな綺麗な光景を眺めていた私だったけれど、程よい満腹感と、幼稚園での疲れと、おんぶ中に感じる心地よい振動によって、イルミネーションを見ている途中で私の意識は途切れ、パパの背中の上で深い眠りについていた
それから私が目を覚ました時は既に深夜で、私はパジャマを着て布団で寝ていた。その状況に私は最初、夢と思っていた。だけど朝になってママが、昨日のイルミネーションの写真を見せてくれた。そこにはパパにおんぶされて気持ち良さそうに眠る自分の姿があった。
「もう一回見に行きたい。最後までイルミネーション見たい」
「それじゃあ、土曜日にまた3人で行こ」
「約束」
私はママと指切りをして幼稚園に行った。そして土曜日の夜、再びイルミネーションを見に行った。
それがきっかけで私はイルミネーションが大好きになった。
※この物語はフィクションです
暗がりの中で 作:笛闘紳士(てきとうしんし)
[まゆ 私の人生No.❓]
休日のある日、私は真琴と一緒に、テレビで紹介された近所のベーカリーへ、昼食のパンを買いに行った
「近所の店がテレビで有名人に紹介されるなんてビックリだよね!」
「私もビックリした。あそこにベーカリーが有るのは知ってたけど、行ってみた事は無いから楽しみ。まゆはそこのベーカリー行った事あるの?」
「私も初めて。でも、テレビでも有名人からの評価も高かったし、どれを買ってもハズレは無いと思う。それよりも心配なのは、テレビで紹介されての行列」
「それは仕方ないよ」
真琴は苦笑いをしながら返した
そんな話をしながら店の前に到着した私達は、その光景に安堵した。心配していた行列はそれほど無く、私達の前には10人が開店前から並んでいた。だけどその光景は数分で最後尾が見えなくなる程になっていた。そんな後ろを見て私達は驚いた
「真琴。早く来て良かったね」
「近所だからって油断しなくて良かった」
そしていよいよオープンの時。店の中に入ると焼きたてのパンの美味しそうな香りが漂ってきた。パンはどれも美味しそうだった。私達は早速、トングとトレーを持つとパンを取ってゆく
。昼食のパンを買い終えたら会計を済ませて店を出た
「早く私のアパートで食べよ」
「うん」
買い物を済ませて真琴と一緒にアパートに帰った時、時刻は丁度12時になった。いよいよ楽しみな昼食の時間
私はベーカリーで買った紅茶パンを一口齧った。その瞬間、紅茶の香りが鼻を突き抜けた
※この物語はフィクションです
紅茶の香り 作:笛闘紳士(てきとうしんし)