笛闘紳士(てきとうしんし)

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      [まゆ 私の人生No.❓]

私が幼稚園から帰ってくると、ママは料理を中断し、携帯でパパと話していた。電話が終わるとママは私に言った

「おかえり。そうだ、まゆ」

「何?」

「今日はパパが仕事から早く帰って来て、良い所に連れて行ってくれるみたい。それで、ついでに外へ食べに行く事になったから着替えてパパ待ってよっか」

「良い所って?」

「行ってからのお楽しみ」
そう言ったママの表情は、とてもワクワクしているみたいだった


服を着替えた私は幼稚園での疲れが出たのか、リビングのソファに座って録画していたアニメを見ながら何度か寝落ちしそうになっていた。録画していたアニメを丁度見終えた頃、パパが帰ってきて家族3人で、車で1時間程の場所にある街へと向かって、その街のファミレスで夕食を食べた


夕食を終えると外はすっかり暗くなっていた。店を出るとパパが、私が 暗がりの中で 迷子にならない様にと、私をおんぶして歩いた。それから少ししてパパが足を止め、私達に言った

「いよいよだぞ」

次の瞬間、さっきまで暗がりだった景色が一変し、街の至る所が綺麗にライトアップされた

そう、パパがママと私を連れて来た良い所は街を使ったイルミネーションだった。その光景に私は思わず声を漏らした

「綺麗」

想像よりも、それは綺麗な光景だった。パパの背中から初めて見るイルミネーショはまるで、夢の中に居るかの様だった。そんな綺麗な光景を眺めていた私だったけれど、程よい満腹感と、幼稚園での疲れと、おんぶ中に感じる心地よい振動によって、イルミネーションを見ている途中で私の意識は途切れ、パパの背中の上で深い眠りについていた

それから私が目を覚ました時は既に深夜で、私はパジャマを着て布団で寝ていた。その状況に私は最初、夢と思っていた。だけど朝になってママが、昨日のイルミネーションの写真を見せてくれた。そこにはパパにおんぶされて気持ち良さそうに眠る自分の姿があった。

「もう一回見に行きたい。最後までイルミネーション見たい」

「それじゃあ、土曜日にまた3人で行こ」

「約束」

私はママと指切りをして幼稚園に行った。そして土曜日の夜、再びイルミネーションを見に行った。

それがきっかけで私はイルミネーションが大好きになった。

※この物語はフィクションです

暗がりの中で 作:笛闘紳士(てきとうしんし)

10/28/2024, 4:08:41 PM