気がついたらそこは真っ暗な空間だった。その空間は温い水で満たされていて、そこでたまに泳ぎながら、長い月日を過ごしていた。その中で、体には紐の様な物が繋がっていた
けれど、長い月日を過ごしている間に少しずつ、真っ暗な空間が狭くなってきた。その中で過ごしている間に気がついた事もあった。どうやらその真っ暗な空間は無限に広がってはいない様で、途中で手や足を伸ばしても、何やら柔らかい壁の様な物に押し返される。それから、たまに水が少し温かくなる感じがある事があった
そんなある日の事…強い力で体が下に押し出される感覚がした。そんな中、一筋の光が見えた。
こうして、母の体内から新しい命が誕生した
※この物語はフィクションです
一筋の光 作:笛闘紳士(てきとうしんし)
パチンコで負けたのだろうか?出てきたおじさんからは哀愁が漂っていた。可哀想過ぎて俺は目を逸らした
※この物語はフィクションです
哀愁を漂う 作:笛闘紳士(てきとうしんし)
まだ鏡が何か理解していなかった無知で幼い俺は、鏡の中の自分と必死でジャンケンをし、ずっとあいこが続く事に癇癪を起こして泣いていた。その様子をお婆ちゃんが写真に撮ってアルバムに残していた。そのアルバムが出てきたのは、亡くなったお婆ちゃんの遺品を整理していた時だった。
今思えば恥ずかしい話である。決着なんてつく筈がないw
鏡の中の自分 作:笛闘紳士(てきとうしんし)
[まゆ 私の人生No.❓]
子供達を近所の図書館で行われる、本の読み聞かせ会に連れてきた。初めての図書館に子供達はワクワクしていた
読み聞かせ会場に入ると私は、子供達が読み聞かせ会中にウロウロしない様、子供達を腿(もも)の上に座らせ、両腕で子供達のお腹を優しく抱き締めて子供達と絵本の読み聞かせを楽しんだ。読み聞かせが終わったら子供達は他の子達と一緒に、元気に拍手を送った。それがキッカケで子供達は本の面白さを知り、その帰り道、子供達から本を買ってとキラキラした眼差しで頼まれ、私は子供達が欲しい本を1冊ずつと、読み聞かせ会で読まれた絵本3冊の、計5冊買ってあげた
ヒーローが好きな息子には、テレビでやっている変身ヒーローについて書いてある本を買ってあげ、動物が好きな娘には動物図鑑を買ってあげた
その日の夜
子供達とお風呂に入ってパジャマに着替えた布団の中で、子供達に絵本読んでとお願いされ、早速私は買ってきた絵本の中から適当に1冊の絵本を取り出すと、横になりながら絵本をゆっくり優しい声で読み始め、それを子供達は目を閉じて嬉しそうに聞き始めた。けれど、子供達が眠りにつく前に、毎日の疲れからだろうか?子供達に絵本を読み聞かせていた私の方が先に、眠気に勝てず眠ってしまった
私が目を覚ましたのは午前3時半頃だった。横を見ると夫と私が寝ている布団の間で、子供達が凄い寝相で寝ていた。
※この物語はフィクションです
眠りにつく前に 作:笛闘紳士(てきとうしんし)
【気まぐれ一言】
今回の話は主人公のまゆ が結婚して、双子の兄妹が産まれてからの話になります。今後は子供達視点の話も入れる予定です。
[まゆ 私の人生No.❓]
6歳を少し過ぎた私は、最近、自分に起こっている変化を不安に感じている。下の前歯が動く様になってきた
今までは何も感じ無かったけれど、その事をハッキリ自覚してからは、歯が動く度に不安になって、ご飯を食べるスピードも今までよりゆっくりになった。そんな私の小さな変化をママとは見逃さなかった。
「まゆ?最近ゆっくり食べているけど、食欲ないの?」
ママは少し心配そうな声で私に聞いてきた
「下の前歯…動くの」
それを聞いたママは安心した表情をすると和かに笑って言った
「もうそんな時期か。まゆ。今度歯医者さん行こっか」
「嫌だ。ごめんなさい」
ママが私に 歯医者行こっか と言うのは、私が何かママを困らせたり嫌な事をした時だった。口の中に色々な機械を入れてくる歯医者が怖い私にとって、その言葉は絶望的な言葉だった
実際にもっと小さい頃、お菓子売り場で駄々を捏ねた帰りに歯医者に連れて行かれた事があった。それからも私が何か、ママにとって嫌な事や悪い事をやってしまう度に 歯医者行こっか と言ってきた
久しぶりに言われたその言葉に、歯医者で怖い思いをした状況を鮮明に思い出した私は、怖くなって泣いてしまった
(また機械を沢山、口に入れられる)
そんな私の頭をママは、優しく撫でて言った
「怒ったりしてないから。今、まゆが動いているって言った歯は、乳歯って言って、赤ちゃんの歯。無くなっちゃう歯なの。だけどまゆには、永久歯って言う新しい歯が生えてくるの。赤ちゃんの歯は無くなっても大丈夫だから、歯医者さんの先生に動いている赤ちゃんの歯、見せに行こ?」
「永久歯が無くなったら?」
「もう、永遠に 生えてこない。まゆが大人になっても、そこだけ歯が無い。お爺ちゃんみたいになっちゃう。だから、永久歯が生えてきたら、永久歯が無くならない様に、定期的に歯医者さんに行こ?」
「うん」
それから数日後、私はママと一緒に歯医者に行って生え代変わりの診断をしてもらって、歯医者さんから乳歯ケースを貰った。歯医者に行った翌日、動いていた私の歯が抜けた。その抜けた乳歯を私は、ママとパパに見守られながら乳歯ケースに刺した。記念すべき1本目の乳歯である。
※この物語はフィクションです
永遠に 作:笛闘紳士(てきとうしんし)